第104話:ある病室の風景4
お昼を食べた私達は幸せ気分でまこっちゃんの病室に戻ってきた。
残念ながらいくら交渉しても純は映像を消してくれなかったのが心残りだけど。
私達は軽く談笑をしながらまこっちゃんの居る病室に戻って来て普通に扉を開けた。
扉を開けた私は中を見て立ち止まった。
「あれっ?」
「巴ちゃん、どうしたの?まさか真が居ないとか言うんじゃないでしょうね。」
「はい…。まこっちゃんがいません…。」
「えっマジで?」
私は後ろから押されてフラフラと前にでる。…なんで?まこっちゃん…?
私はベッドまで歩いていって布団を触った。体温の温もりはあるわ。
「うおっ。ホントに居ねぇ!」
「取りあえず看護士さんを呼びましょう。」
八神会長が枕元のボタンを押した。
ボタンを押して看護士さんが来るまで私達は病室の中をキョロキョロと見ていた。
やがて一人の看護士さんが病室にやって来た。
「はい。いかがなさいました?」
「結婚して下さい。」
「えっ?」
私は嵐の足を思いっきり踏んだ。
「アウチッ!」
「あの…病院内で怪我人を作らないで下さい。」
「大丈夫です。これ位で怪我する様な事ないですから。」
足を抑えてピョンピョン跳ねてる嵐は放っておいて。
「まこっちゃん…ここに入院してた人居ないんですけど!」
私がそういうと看護士さんはベッドを見た。
「えっ!じゃあやっぱりさっき歩いてたのは桂木さんだったんですね。」
「見たなら止めて下さいよ。」
「いえ、なんか猫足のスリッパ履いてたから声かけにくくて。」
看護士さんは乾いた笑いを浮かべている。
猫足スリッパ?私はチラッと純を見た。純は『私が用意した。』って感じの笑顔を浮かべてる。
「で、何処に行きました?」
「多分中庭の方だと思います。」
「ありがとうございます。」
私はまだ跳ね回ってる嵐を掴んで病室を出た。
「待ってー。せめて名前と電話番号とスリーサイズを…。」
訂正。私は嵐の首根っこを掴んで引きずりながら中庭に向かった。
「だから病院で怪我人を作るのはやめて下さい。」
別に私は嵐を殴ったりしてないわよ。
優さんの右ストレートと純の広辞苑アタックと八神会長の左フックが嵐を捕らえただけだから。
私も止めなかったけど