第99話:ある非現実の風景
『目を………て。』
誰だ…?そんでもってなんだ?
『目を開けて。』
目を…?う〜ん…。あと五分。
『開けろって言ってんだよ!』
「開ける!開けるから強引に瞼を開けるな!」
目がシバシバする。目から水が出てきた。
『目が覚めた?』
「ス〜…ス〜…。」
『…覚めた…?』
覚めた!覚めたから手を離せ!頭蓋骨がミシミシいってるから!
…って、俺誰と話してんだ?
『俺だよ、俺?』
なんだ?そんなに俺に金を振り込ませたいのか?生憎だけど俺には孫もいなけりゃ子供もいないぞ。
『あのね…。』
なんかさっきから聞こえてくるのは幻聴か?頭殴られたしな…。
『傷えぐるよ?』
うっせ〜!姿見えない声は幻聴だ!
俺の視界に入ってるのは一面真っ白な世界だ。色もなく音もなく。ただ白いだけ。
これはあれか?あの世ってやつか?
『あの世の手前だよ。』
…誰だか知らないけどいい加減声だけってやめようぜ。
声に聞き覚えはあるけど誰だか判らん。
『しょうがないな…。』
その声が聞こえた瞬間俺の前に人影が立っていた。
「誰だ…?」
声を出した瞬間違和感を感じた。俺の声ってこんなだったか?
『アンタが最近聞いてた声はこの声。今、アンタが出した声は16年近く聞いてた声だろ。』
俺は目の前に立ってる人影を確認した。
長い金髪。俺と同じくらいの身長。見た覚えのある顔。
『俺が誰だか判ったみたいだな。』
「ああ。ってこれは夢なのか?」
『さぁ?現実ではないけど夢とも言い難いな。』
だよな…。夢は痛み感じないらしいからな。
「でも現実じゃあ俺とアンタが一緒にいるはずないからな。」
『だな。アンタ自分の体確認した?』
確認?変な事言うな。見なくても判るっての。
俺は体を触っていく。
襟に少しかかる位の髪だろ。贅肉少なめの体。…おや?
足元までフラットに見えるな…。
なんか似た体験したな。確か体育祭で…。って事は?
『判ったみたいだな。男の体だよ、アンタ。』
マジか?自分の胸を触る。無い!下は…ある!間違いないぞ!
でもな…
『嬉しくないのか?』
「嬉しいけど…現実じゃあないんだろ。」
そう。現実で戻れた訳じゃない。男になる夢なら何度も見た。またそれな訳だ。
『そっか。ちなみに俺の体は…。』
「言われなくも判ってる。『女』の俺なんだろ?」
『ああ。そうだ。』
だから現実じゃ無いって判るんだ。俺が二人になるはずがないからな。
「なぁ、ここって何処なんだ?」
『さぁ?俺達の意識の中なんじゃないか?』
意識の中か。だから二人いるのか。
『ちなみに俺達は今意識不明らしい。』
「はぁ?」
『頭に喰らったのがヤバかったらしい。』
「なんでそんな事知ってんだ?」
『ほら、それ。』
『女』の俺が指差した先には泉があった。泉には寝ている俺が映っていた。
そしてその横には…
「巴…。」
『かれこれ一週間は寝てる見たいだな。巴は面会時間開始からずっといる。』
「そっか…。」
俺は泉に映る光景ひただ見ていた。