第4話 人類の英知
「泥棒?」
「はい、私、泥棒を……」
桐生にシエルがちゃんとした事実を伝える。
俺の懸命な弁解もあり、誤解は解けたようだ。
補足しておこう。
「異世界とつながるドアは、好きな場所へ開けるんだよ。
銀行の大金庫の中とかでも自由自在だ、俺達は大怪盗になれるぜ」
「それはそれで問題だと思うけど……」
「と言っても、盗んだのはこっちで必要になる物だけだよ。
私欲は満たしてない」
「そっか」
桐生は笑顔になり、それ以上追求してこない。
「あれ? 今ので納得するのか?」
「まあ、あんたがこの世界の為に、なんかしてるのは分かってるよ。
頭良さそうだもんね」
「べ、別にこの世界とかどうでもいいし……。
暇なだけだ。ガバガバなゲームで不具合見つけて無双とかが好きなんだよ」
くそ、なんだろう、顔が赤くなるな。
「でもなんでシエルちゃんを連れて行くの?
ていうか、こっちの人間を連れていけるのね」
桐生が不思議そうな顔をする。
「魔法が使える。
俺達はこっちで覚えた魔法を向こうで使えないが、こっちの人間は普通に使えるんだ。
更に、向こうでなにをされても傷つかない」
シエルも魔法を習得していて、治療したり敵を眠らせたり空を飛ぶ事もできる。
「ああ、なるほど、やっぱ凄いねあんた」
そう言って笑った桐生はなんだか眩しくて、俺の顔は更に赤くなった。
◇
「おまえさぁ、サボるなら勇者を止めろよ、もうこの世界に来るんじゃねーよ」
またニキビが俺に絡みに来た。四日ぶりだ。
なんでこいつは、わざわざ突っかかりに来るんだ?
シエルは用事で席を外している。
俺達は中庭に二人きりで向かい合って立っていた。
遠くに、この世界の住人が見えはする。
「あの子がもったいないだろ? 手放せよ、どうせやってないんだろ?
要らないなら俺によこせよ、童貞のガキが」
ああそうか、こいつ、シエルが目当てなんだ。その身体が……。
腹の奥が熱くなるような感覚がする。
「なんとか言えよ」
無表情で黙っている俺の頬を、ニキビがいきなり叩いた。
俺は沈黙を保ち、反撃もしない。
「俺が可愛がってやるよ、シエルちゃん。
おい、なんとか言えよ! お前がサボってる間に俺は強くなったぞ」
そう言って今度は脛を蹴る。
俺は少しふらついた。
「なに黙ってるんだ? ビビってんのか? おい、勇者同士なら殺せるぜ?
なあ、もうここに来るな、引きこもりは大人しく部屋に引きこもれよ」
ニキビがまた俺の顔を数発、今度は拳で殴る。
鼻の奥から液体の流れる感触がした。
現地人が遠巻きに集まって来た。なにか叫んでいる。どうやら勇者を呼びに行ったようだ。
「俺に逆らうと殺しちゃうよ?」
ニキビが、俺の髪を掴んでそう言った。
俺の頬は青黒く腫れ、鼻から血が滴っている事だろう。
このくらい分かりやすくやられていれば大丈夫か?
更に数初殴られる間に、走ってくる勇者達が遠くに見えた。残り八人全員か、好都合だ。
「そろそろいいか」
俺はそうつぶやく。
「ああ? そうだよ、そろそろ止めだ。火の精霊よ……」
馬鹿め、呪文とか遅いんだよ。
俺は懐から盗品を取り出し、ニキビの太股に向けて放つ。
パンパンパンと、乾いた破裂音が三度響いた。
「うぎゃああああ」
ニキビの汚らしい悲鳴があがる。
俺達を止めようと接近していた、勇者達の足が止まっていた。
「痛ええよぉ、助けてくれえぇ」
ニキビが転げ回っているが、誰も気にしていない。
みんなの視線は、俺の手に握られた盗品に釘付けだ。
それは黒い拳銃だった。
「勇者全員に話がある、もっと近くに寄ってくれ」
そう叫んだ俺を警戒してか、恐る恐る近寄る勇者達。
いや、一人だけ笑顔だった。
笑顔の桐生は、俺と目が合うと親指を立ててきた。
おい、良い度胸だな。
「色々試した結果、剣技とか無駄だと判明した」
俺は近づいてきた勇者達に向けて話す。
「忠告してやる。俺達の世界から持ち込んだ武器を使え。
この世界の剣と同じ様に、持ち込んだ銃器も魔法で強化できる。
剣と現代銃器、どちらが強いかはよく分かったろ?」
俺は銃口でニキビを指す。
「ひっ、こいつがやったんだ、こいつ、酷い奴だぁ、逮捕しろ、警察だ、死刑にしろぉ」
「しかもこれは、たかが九ミリパラベラム弾だ。
アサルトライフル、重機関銃、対物ライフル、RPG、迫撃砲。
威力は拳銃の比じゃないぞ。
それに俺達は身体強化で、五十口径の重機関銃すら走りながら射撃できるんだ」
「だが、そんな物をどこから手に入れれば……」
勇者達のリーダー格大学生、江藤が戸惑いながらも発言する。
「もう数は十分に確保してある。追加調達も可能だ。
お前らが望むならやるよ。
ただ条件が一つある。
このニキビを、シエルと俺に二度と近づけるな」
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この作品は本日中に最後まで投稿する予定の短編です。
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長編連載も書いております、お読み頂けるととても嬉しいです。
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『悪の改造人間、異世界へ ~平和にのんびり暮らすつもりだったが、あまりに悲惨な世界だったので、もう一度世界征服へ挑む事にしました~』




