表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進め!!鬼畜客船ガルーダ号  作者: 橘 正巳
23/30

第十二話 軍艦と巨船(後編)

◇◇◇◇


「武器管制は生きてるか?」


 将軍が聞く。


「は、はい。システムオールグリーン。全て使えます」


 士官が答えた。


「まずは煙幕スモークを焚け。それから……。よし、この距離だと使えるな。対艦ミサイル発射用意!」

「将軍!」


 ナギの存在を無視した命令に、士官が意見した。

 その場にいる全員が、固唾を飲んで成り行きを見守っている。


「聞こえんのか? まずは煙幕スモークだ」


 念を押すように、将軍が全員に向かって言った。


「……了解」


 少し渋った者もいたが、全員が将軍に従った。


 濛々(もうもう)とした煙が現れて、軍艦をきれいに覆い尽くした。

 ガルーダ号からは、最早その姿を拝むことは出来ない。


「くくく……。そちらの手の内は全てお見通しなのだよ」


 将軍がニヤリとほくそ笑む。


「海賊どもには感謝せねばなるまい」


 ナギの懸念した通り、将軍は海賊と通じていた。

 数少ないガルーダ号の攻撃手段は、全て筒抜けとなっている。


「何がレーザーだ。おまけに体当たりだと? ふん、馬鹿馬鹿しい。そんなチャチで黴の生えた戦法が、この艦に通用すると思うのか? 少しばかり頑丈だか何だか知らんが、この対艦ミサイルを受けては無事では済むまい」


 忌々しそうに、将軍が吐き捨てた。


 将軍が言うように、対艦ミサイルの威力というものは非常に大きい。

 例え装甲艦が相手でも、十分に勝算はある。

 そもそもの話、軍艦の装甲は、艦全体を覆っているわけではない。

 艦橋ブリッジを吹き飛ばされれば、それだけで戦闘不能になってしまう。

 ましてやガルーダ号は、自称とは言えども客船である。


「おい! 対艦ミサイルの準備は?」


 将軍が聞く。


「既にレーダーで捉えています」


 士官が答える。


「海の藻屑となるがいい! ミサイル撃て!」

「了解! ミサイル撃て!」


 将軍の命令を受け、士官が復唱した。


 士官が発射ボタンを押すと、前甲板にある蓋が開いた。

 果たして、中から飛び出したのは、対艦ミサイルである。

 ミサイルは音と光を伴って、垂直に昇って行った。


「はーはっは! 遺物はお前らの専売特許ではないのだ!」


 勝利を確信して、将軍が高らかに笑いを上げた。



◇◇◇◇


 少し時間を遡って、今度はガルーダ号である。


「敵も中々やりますね」


 自らを煙に包んだ軍艦を見て、カーリーが感心した。


「何のことだ?」


 ナギが聞く。


 例え煙幕スモークを使われていても、電波妨害はされていない。

 レーダーでは、軍艦の姿を十分に捉えられる。

 ハイテク機器が満載のガルーダ号に、それが出来ないとは思えない。


「攻撃を許すことになります。おそらくは、対艦ミサイルあたりを使ってくるでしょう」


 カーリーの推測である。


「……ああ、あの将軍ならやりかねないな。だが、それと煙幕スモークに何の関係があるのだ?」


 同意しつつも、ナギがもう一度聞いた。


「レーザーです」


 カーリーが端的に言った。


「いや、そなたさっきレーザーは使えないと――」

「それは、あくまで直接攻撃……失礼、直接照射した場合の話です。ミサイルを、発射間際に撃ち落とすくらいは出来ます」


 ナギが指摘しかけるも、カーリーが遮った。


「ですが、それも不可能になりました。煙幕スモークをあんなに焚かれては、エネルギーが減退してしまいます。それに……」


 カーリーが途中で言葉を区切る。


「それに?」


 ナギが追随するように聞く。


「それに、本船のレーダーとレーザー発振器の連携は、あまりよろしくありません。高速の物体を相手には対応出来ないのです。一度打ち上がって加速してしまえば、もうミサイルを撃ち落とすことは出来ません。おっと! 言ってる間に撃って来ましたね」


 カーリーが続けた。


「ど、どうするのだ?」


 予想外のピンチに、ナギがうろたえる。


「大丈夫です」


 カーリーが自身満々に胸を張る。


「奥の手があります。あ、始まりましたね」


 カーリーが言うと、ガルーダ号のブリッジにサイレンが響く。警告用の赤色灯が、明滅を繰り返す。


「そろそろ始まりますよ。ここからがガルーダ号の真骨頂ですよ」


 不安がるナギをカーリーが宥めた。

 その時である。

 船橋ブリッジがエレベーターのように下がって、船体に収納されていった。


「あれ?」


 カーリーの台詞に、ナギはガルーダ号の管制が、独立していることに気付くのであった。



◇◇◇◇


「こ、これは?」


 ナギが説明を求めた。


 今やガルーダ号の船橋ブリッジは、船内に埋まっている。

 その代わりに、沢山のモニターが天井から降りてきて、外の様子を映し出していた。


「これこそ、本船の攻撃形態……ではなく、防御形態です。最早ミサイルの一発や二発くらい、怖くありません」


 カーリーが自慢げに言った。


 確かに、ガルーダ号の装甲は折り紙つきの強度である。

 それはナギ自身も、海族との戦いで確認済みであった。

 唯一の弱点とも言うべき暴露部分である船橋ブリッジも、今となっては四方を完全に守られている。

 カーリーの言葉には、十分な信頼性があった。


「とは言っても、あの艦に搭載されているミサイルは、一発や二発ではないぞ。果たして、波状攻撃に耐えられるのか?」


 それでも、ナギは不安を隠しきれない。

 敵は生粋の軍艦であり、戦争時の生き残りでもある。

 海賊を相手取るのとは勝手が違う。


「ご心配無用です。奥の手があります」

「何だと? 〝奥の手〟とは、そなた今さっき言ったばかりではないか。この妙ちくりんな変形がそうではないのか?」


 カーリーの発言に、ナギが追及する。


「さあさあ、言っている間に飛んできましたよ」


 ナギを無視して、カーリーが警告した。


「くっ!」


 衝撃に備えようと、ナギがコンソールを両手で掴む。

 その時、ナギはコンソール上の存在に気が付いた。船長の読んでいた本の山である。


「何だこれは?」


 本の表題に、ナギが目を落とす。

 そのどれもが、哲学や倫理学、果ては医学や情報学などといった学術書である。

 どれもこれも、少年が読むには小難しくて相応しくない。


「来ます!」

「おっと!」


 カーリー警告に、ナギが我に返った。


「よーし、来い!」


 コンソールに抱きついて、ナギが踏ん張った。

 直後である。 

 大きな衝撃が、ガルーダ号を襲った――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196140973&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ