表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進め!!鬼畜客船ガルーダ号  作者: 橘 正巳
14/30

第八話 疑惑と将軍(前編)

◇◇◇◇


 軍艦がガルーダ号に近寄って来る。

 

 全体的に平面で構成されているその軍艦は、デザインとしてはガルーダ号に似ていた。

 大きな艦橋ブリッジには、フェーズドアレイレーダーが備わっている。


 ちなみにこの軍艦、戦闘艦の割に、大砲を数門しか持っていない。

 これは何も、武装が貧弱だからではない。どちらかと言えば、高度なテクノロジーの証左である。

 コンピューターで管制される以上、大砲の絶対数は必要がない。

 撃てば必中なであるから、後は連射あるのみである。

 それに、主な武装がミサイルであれば、必然的に大砲も必要がない。


「この艦こそが、わが国が誇る唯一の発掘兵器なのだ」

「……イージス艦だね」


 ナギの自慢に、船長がボソリと言った。

 

 ナギご自慢の軍艦が、ガルーダ号に接舷した。


「では行こうか。カーリー、今から君が船長だからね」

「心得ております」


 船長がカーリーに念を押した。


 最初は意気揚々と、ナギを自ら迎えに来ようと申し出た将軍であった。

 しかし生憎と、ガルーダ号には目立った取っ掛かりがない。

 そういう訳で、ナギ率いる全員で軍艦へと移乗することとなった。

 ガルーダ号が桟橋代わりに、軍艦へ向けてタラップを伸ばした。

 

 船内にもう一度、ドンと軽い衝撃が走る。


「うわっ!」


 歩いていたナギが、バランスを崩した。それをカーリーが支える。


「あ、ありがとう」


 礼を言うナギであったが、その顔には緊張が見えた。


「どういたしまして」


 対して、答えるカーリーは余裕綽々である。


 ナギを先頭にして、三人が一列となって、軍艦へ乗り込んだ。

 儀仗兵が艦舷に整列し、三人を出迎えた。ちなみに、今の船長は水夫の装いである。

 三人がデッキに降り立つ。


「通してくれ」


 男の声がすると、儀仗兵が道を開けた。

 儀仗兵の間から出てきたのは、眼光が鋭い、痩せぎすの中年男である。

 中年男の制服には飾緒モールと勲章が、沢山つけられていた。


「おおっ! 殿下、よくぞご無事で!」


 中年男が跪いて、ナギの両手を取った。


「お、お出迎え感謝します」


 将軍を労うナギであったが、その顔は少し引き攣っている。

 さもありなん、将軍の顔は色と欲に塗れていた。


「ゴホン! ときに将軍閣下」


 ナギが咳払いをして、将軍の手を自然に払う。


「紹介します。彼らこそが、私の恩人です」


 控え目に佇んでいるカーリーと船長を、ナギが紹介した。


「お初にお目に罹ります、将軍閣下。私、客船ガルーダ号の船長を務めております。カーリーとお呼びくださいませ。この度は王女殿下にご乗船いただき、光栄の至りに存じます」


 カーリーが敬礼をしながら雄弁に語った。いつもの無愛想な態度は何処へやら、親しみやすそうな笑みすら浮かべていた。


 船長はと言えば、黙りこくったまま、カーリーに合わせて敬礼している。

 この時、ナギは船長の名前を聞き忘れたことを思い出していた。


「これはこれは」


 将軍が答礼する。


「先程の発言をお詫びします」

「気にしておりません」


 将軍が謝罪して、カーリーが答えた。


「そう言っていただければ助かります。ナギ殿下をお連れ頂き感謝します。早速ですで恐縮ですが――」

 将軍が続ける。


「何処のどなたかは詳しく存じませんが、殿下の恩人とあっては、無碍に扱う訳にはいきません。是非とも当艦にご逗留ください。ささ、こちらへどうぞ。皆の者、彼らをご案内しろ」


 言うや否や、将軍が儀仗兵に指示をした。


「え? ちょっと!」

「ナギ殿下はこちらに。客人は部下が丁重にもてなします」


 ナギが抗議するも、将軍は聞く耳を持たない。


「それはそれは」


 カーリーも船長も、特に抵抗の意思を見せない。

「ご丁寧にどうも」

 カーリーが礼を言って、船長と一緒に儀仗兵に着いていく。

 ナギと船長一行は、こうして完全に分断されてしまった。 



第二節


 一方で、儀仗兵に連れられた船長たちである。


「まだですか?」

「もうすぐです」

「もう随分と歩きましたが?」

「申し訳ありません」

 カーリーが聞いて、儀仗兵が答えていく。

 船長はと言えば、だんまりを決め込んでいた。

 二人は案内されるまま、どんどんと階段を降りて行った。

 よもや客室などあるはずもない、船底へ向かっている。


「こちらです」


 言って、儀仗兵が立ち止まった。

 儀仗兵の指し示す場所には、扉が一つあった。


「お客人は、こちらでお待ち下さい」


 二人が儀仗兵に連れられたそこは、たしかに船室ではあった。

 ただし、客室と言うには余りにもお粗末だった。壁や床は塗装が禿げ、錆びた鉄の地肌がむき出しである。

 天井を通る配管からは水が漏れていて、湿度もやたらと高い。

 止めとばかりに、申し訳程度に置かれたベッドである。マットには黴がこれでもかというくらい生えたそれは、スプリングまでが飛びだしている。

 要するに、ここは独房であった。


「ささ、ご遠慮なく」

「はいはい」


 儀仗兵に勧められるまま、二人が不用心に室内へ足を踏み入れる。その途端、無情にも外から扉が閉められた。

 船長がドアノブに手をかける。しかし、ドアノブはピクリとも動かない。


「外からカギをかけられたようですね」


 カーリーが言った。


「カーリー」


 静まり返った室内で、船長が切り出した。


「果たして、これは一般的に、お客を迎える作法と言えるのかな?」

「いいえ、まさか」


 首を傾げる船長に、カーリーが断言した。


「少なくとも、我々を拘束する算段なのでしょう。ついでに言えば、ガルーダ号も一緒に」


 カーリーが続けた。


「ふむ……」


 顎に手をやって、船長が考え込む。


「ここで考えるべきなのは、ナギ王女の立場だろうね。我々だけで逃げるのは、いつでも出来ることだ。だがしかし、果たしてそれが、彼女のためになるのかどうか――」

「お考え中失礼しますが」


 ぶつぶつ言う船長を遮って、カーリーが口を挟む。


「何だい?」

「仮にも主筋の恩人と言える我々を、こうも無碍に扱う理由がどこにありましょう。ナギ殿下の仰られるように、あの将軍、何やら良からぬことを企んでいると見て、間違いないと思われます」


 カーリーの意見に、船長は「なるほど」と相槌を打った。


「そう言えば、ナギ殿下は将軍に不信感を持ってたね」


 ガルーダ号でのやり取りを回顧して、船長が言った。


「でもさ、あの将軍が裏切り者と断定するのは、少し早計じゃないかな? ひょっとしたら、我々だけ信用できないだけかもしれない。『身分の高い貴人に下賤の者が近づくな』って具合にさ。人間社会にはよくあるのだろう? そうだとすれば、いきなり暴れるのはどうだろうか……」

「……船長」


 グダグダと決断を渋っている船長をカーリーが遮った。


「身分とか立場を抜きにして、やって良いことと悪いことがあります。あの将軍は確かに、我々を客として扱うと言いました。信用できないのでしたら、最初から然るべき態度を採るべきです。そもそも、我々は彼らの臣民ではありません。約束を反故にされた時点で、礼を尽くす義理はこれっぽっちもありません。それにですね――」


 カーリーはそこで言葉を区切った。


「続けて」


 船長がカーリーを促す。


「商売は、舐められたら終わりです」

「そうか」


 断言するカーリーを見て、船長が納得する。


「よし分かった」


 船長が決意を固めた。


「カーリー、思いっきりやれ」

「お任せあれ!」


 船長の指示を受け、カーリーが右肩をグルグル回しながら、扉に近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196140973&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ