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5:平和な拠点をゲットしよう

「あ、やべぇ寝てた……」


 ポーションの熱を冷ましている間に寝てしまったようで、すっかり窓の外が暗くなっていた。深夜になっているらしいからもう一度寝たいけれど……変に目が冴えてしまっている。


 うーん、どうしようか。

 って、そうだ、ポーションを確認しないと!


 さすがにもう冷めているだろうと、瓶に入ったポーションに触れる。熱はもうなく、回復剤として使うのに問題はなさそうだ。

 鑑定スキルがあるから、出来上がったポーションの状態は確認できるだろう。


「ん……?」


 《初心者の手作りポーション》

 ・ほとんどの体力を回復することができる


「あれ? これ普通にすごいやつじゃね?」


 店で売っているポーションは、鑑定してもこんな結果ではなかったはずだ。

 前に買って持っていたポーションは、たしか……。

 《ポーション》

 ・体力がそこそこ回復する

 だったはずだ。俺の記憶が確かなら。


「まだ薬術師に転職したばっかりだから、そんなすごいやつは作れないはずだけど……? あれか、薬術師だから、薬術師補正でも着いたのかな?」


 それなら、薬術師に転職して大正解だ。

 思ってたよりも自分に才能があるんじゃないかと思いながら、そういえばとスキルの欄を確認する。もしかしてもしかするんじゃないかと思い――ビンゴ!


 伊波幸樹

 レベル:100

 職業:薬術師

 薬術スキル

 ・ポーション調合

 ・特殊調合

 ・交渉術


「よっし、薬術スキルゲット! ……って、交渉術?」


 まったく薬術師っぽくないスキルも増えていた。

 でも、薬術スキルの欄にあるな。できあがった回復薬を高値で売るための交渉とか、そんなものかな? とりあえず、今は売るよりもいろいろな調合をするのが先だ。


 特殊調合は、爆薬や調味料を作れるんだっけか。

 正直料理はそんなに得意じゃないけれど、肉に振りかけて焼くだけで美味しい調味料とかを作れたら最高じゃんなと思う。


「となると、調味料の材料になりそうなものも買っておいた方がいいな。んで、一番大事なのが……拠点か」


 今までは旅をしていたから宿が基本だったし、王城にいることも多かった。正直何不自由なく快適な生活ではあったけれど……これからは全部自分でなんとかしなければならない。


 それにほら、城だと服装をきちっとしないとメイドさんが睨んでくるから……ちょっと怖いんだよね。この世界の女性は、気の強い人が多くてちょっと接し辛かったりする。

 いや、別に俺がそういうことにヘタレだから……ってわけじゃないから。


「んで、そうだ拠点」


 まず、元勇者であることを考えると……大きな街だと俺の顔を知っている人が多そうだから却下。何かのはずみで会うこともあるだろうし。

 ならば逆に小さな村はどうか? ……なんというか、ご近所付き合いがあると嫌だな。タオルを持ってご挨拶に行っても、居留守とか使われたらへこむし。


「うーん……」


 とりあえず先に、拠点の条件を考えてみよう。

 薬術師だから、絶対に必要なのは作業部屋! 日々研究をし、そのまま疲れ果てて寝てもいいようにソファベッドがあるとなおよし。

 大きな瓶を買って薬草を入れておくと、雰囲気も出ていいかもしれない。


 雰囲気を考えるなら、森の中で薬草庭園を造りながら……っていうのも魅力的だ。

 ここならご近所付き合いも必要なさそうだし、何か入用なものがあるとき街へ行けばいい。幸い転移できるし、不便はない。


 あとは、えーっと、そんなもんか。

 作業部屋と、薬草園。

 この二つだけで楽しそうで困る。俺の薬術スキルが火を吹くぜ。


「よしよし、じゃあ拠点は森の浅い場所にするか。薬草は確か、魔力濃度の高いところほど希少なものが生えてるって聞いたことがあるから……」


 そうなると、人が住む街の近くにはないな……。


「ほかに魔力濃度が高い場所は、あとは……そうだ魔王城が一番すごかったな」


 人間の住む地域とは比べ物にならないほど、圧倒的な魔力濃度だった。

 とはいえ、その魔王は俺が倒してしまったので今はもういないけれど……。そしてふと、魔王城の周辺を思い返してみる。


 魔王城、ゲームで言えばラスボスだ。

 当然、出てくる雑魚敵だって最強レベルがそろっている場所――であるはずだ、本来なら。まあ、俺の主観ではあるけれど。

 なのに、俺が討伐した魔王が住む周辺の森は、正直言って雑魚の魔物ばかりだった。スライムとか、ウサッピとか、強くても上位種のゴブリンレベルだろうか。

 行ったときはあまりの雑魚さに、思わず驚いて声をあげてしまったほど。


「でも、そうだな……雑魚ばかりなら、討伐任務の冒険者も来ないし、ゆっくりできるかも……?」


 残念なことに家はないけれど、ないなら作ってしまえばいいじゃない!

 無人島で家を作って生活するテレビ番組があったんだから、俺だって家を作ってそこでスローライフを送れるはずだ。


 そうと決まれば善は急げ!

 俺は宿を出発しようとして――真夜中であることを思い出した。

 こんな時間じゃ、お店が開いてないから何も買えない。さすがに、着の身着のまま行く……というわけにもいかないからね。

 スキルのアイテムボックスに勇者時代に集めたアイテムはたくさん入っているけど、あいにく生活用品類はほとんどない。薬術の材料もしかり。


「仕方ない、もっかい寝て……朝になったら買い物するか!」


 俺はベッドに横になり、結局昼過ぎまで寝てしまったのだった。

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