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12:買い物

 この世界のエリクサーは、薬術師では作れないと言われていた。

 入手方法はダンジョンにある宝箱からのみと言われていて、市場に出回ることはほとんどない。見たことがないという人の方が、多いだろう。


「……間違いなく、この薬草を材料にしたからだな」


 できあがったエリクサーを見て、俺は息を呑む。

 この薬草があればエリクサーが作れる……なんて情報が漏れてしまったら、きっと大変なことになるだろう。


 ばれないようにしないとな……そう思いつつも、魔王城の裏庭に訪ねて来るような人もいないしばれはしないだろう。


「あ、でも……」


 作ったものすべてがエリクサーになってしまうと、俺が薬術師として生計を立てるのが難しくなってしまうような……。


『コーキ、どうかしたの?』

「あ、いや。結構すごいポーションができたからさ。これも薬草のおかげだろ?」

『そうなの? ならよかった』


 俺の言葉を聞いて、薬草が嬉しそうに笑った……ような声。


「でもまだ、初心者薬術師だからな」


 知らないことがたくさんある。


「まだポーションを作るくらいしかできないから」

『ふぅん……』


 おいおいは、薬草栽培をして品種改良もしれみたい。なんて、大それたことを思う。薬草が協力してくれれば、植物の知識も増えそう出し問題はないだろう。たぶん。

 魔王もいなくなったし、今はのんびりとした生活を満喫したい。


 でも、そのためには――。


「食料を買って拠点を豪華にしないと駄目だな」

『あ、その寝床?』

「そう。もっと快適にしたいんだよ」


 スローライフ生活は好きだけど、不便が好きなわけではない。

 薬草を一人? にしてしまうのは申し訳ないけど、今日は街へ買い物に行きたい。そう告げると、快諾してくれる。


『いいよ、私はここで日光浴してるから。ゴブリンも、その建物の中にいるんでしょ?』

「ああ。掃除とかをしてるっぽいけど……大丈夫かな」


 おそらく崩れそうという以外に危険はないけれど、ゴブリンにとったら想い出の場所かもしれない。魔王とゴブリンがどういった関係だったかは知らないけれど、おそらく王とその配下だろう。

 後追い自殺……なんて恐ろしいことを考えてなければいいんだけど。


 とりあえず、俺は街へ行こう。

 薬術関係の材料などがあれば購入して、作業場の快適化をしなければ。あと、ポーション瓶も既存のものじゃなくて、俺専用のデザインがあるといいな……。

 でも、中身が初心者ポーションだと格好がつかないからそれはもう少し先かな。


「んじゃま、ちょっと行ってくる」

『うん、いってらっしゃい~!』

「《転移》」


 俺は一回転移をしたところで、まてよと動きを止める。

 さすがに、俺が抜け出したことが王城にばれているはずだ。なのに、のこのこ同じ街に行くのはよくないだろう。冒険者ギルドと、最悪……薬術師ギルドに手回しがいっている可能性もある。

 まぁ、職業が薬術師の時点で俺はどうでもいいけれど。


「一応、違う街にしておくか」


 転移の回数を増やせばいいだけなので、特に負担はない。

 三回転移をして、俺は違う街へと飛んだ。




 ◇ ◇ ◇



「買う物は……生活用品と家具だな」


 にぎやかな大通りを歩きながら、どんな店があるか辺りを見回す。


 カーペット類、机、椅子、ベッド、ソファ、タンス、バス用品。

 そう考えると、結構ほしいものがたくさんあるな。

 アイテムボックスがあるので、持ち帰ることは問題ない。空間拡張がされている鞄も売っているので、ベッドを収納して持ち帰るのも問題はないだろう。買いすぎなければ。


 一番近くにあった家具屋に入って、まず重要なベッドを見ることにした。

 さすがに、拠点が決まって以降の寝袋は嫌だ。

 ちなみに、ゴブリンは寝袋を使わず床に寝ていた。おそらく、寝るときに何か使うという習慣がなかったんだろうな……。


「いらっしゃい~」

「ども。ええと、ベッドがほしいんですけど」

「奥にあるよ」


 店主の言葉を聞いて、奥へ行くと数台ベッドが並んでいた。

 テント生活だから、そんなに大きいのはいらないな。ゴブリンは子供用で十分だし。


「んじゃ、この二つください」

「まいど」


 さくっと決めて、料金を払ってベッドをアイテムボックスへ入れる。


「なんだ、魔法の鞄持ちか。いいなぁ、容量もすごいでかいじゃないか! ベッドが二つ入るなんて」


 高かっただろうと、店主が羨ましそうに俺を見る。


「でも、もう何も入らないくらいパンパンですよ」

「それもそうか」


 ギリギリ入ってよかったなと言って、店主がサービスだと言ってまくらの値引きをしてくれた。


 その後は、入用なものと、部屋を増やすためにテントをもう一組購入した。

 本当は家でも作れたらいいんだけど、さすがにそれは難しい。いつかきっと……とは思うけれど、時期尚早だろう。


 魔王城の裏庭に作って……っていうの自体が難しいからな。

 どこかに腕のいい、口の堅い職人がいたら頼んでみたいなと思いながら拠点――家へと帰った。

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