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もう、誰も帰れない……美樹編  作者: カボチャの悠元
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美樹はメリーゴーランドが勝手に動き出したとたんに走り出そうとしたが、光紀がゆっくりとメリーゴーランドに近づいていく。

「光紀!何してるの、逃げるよ!絶対にあれもヤバいヤツだから!」

しかし光紀の耳に美樹の声が聞こえている様子がない。

むしろメリーゴーランド以外の物が見えていないようだった。

そして、必死に制止する美樹を払い除けた。

「光紀……」

光紀はブツブツと何かを呟いている。

「姉ちゃん、今行くから……」

光紀が近づく度にメリーゴーランドはスピードに強弱をつけ、まるでダンスでも踊っているように見える。

「光紀まで!すきに出来ると思うなァァァ!」

美樹は地面に転がる工事用の鉄パイプを2本握る、そしてメリーゴーランド目掛けて走り出した。

メリーゴーランドに辿り着いた美樹は両手にパイプを確り握るとメリーゴーランドの馬の頭を全力で叩いた。

その途端、メリーゴーランドの馬は激しく上下に動き出した。

「ギャアァァァァ!」

メリーゴーランドの馬の絶叫に美樹は驚きその場に尻餅をついた。

「いでぇぇぇぇ、いでぇぇぇぇ!」

そう言うと馬は美樹を睨み付ける。

そして美樹にひずめを振り上げる。

「悪い子には、お仕置きぃぃぃ」

美樹に蹄が襲い掛かろうとした瞬間、光紀が走り込んできた。

そして美樹の落とした鉄パイプ取ると馬の頬に叩きつけた。

「ヒギアァァァ」


「はぁはぁ、悪い、ありがとうな美樹」

そう言い光紀は正気に戻っていた。

しかし他の馬達が暴れだしていた。

「許さない……でも……ユルス……お前タチもう、カエレナイ……」

そう言い馬達が笑った。

「帰れないなら、暴れてお前達をぶち壊す迄だ!言っとくが俺は手加減なんか知らないからな!ウオォォォォ」

光紀は鉄パイプで次々に馬達の顔面を殴っていく。

余りに酷い光景に美樹は眼を手で隠していた。

そしてメリーゴーランドが完全に停止する。

メリーゴーランドの上に立っている馬は一匹もいなかった。

「はぁはぁ、ざまみろ」

光紀は馬を全て叩き潰した。

「おまえタチ……だれも……カエレナイ……カエレナイ……」

そう言い不気味な笑みを残し最後の馬も動かなくなった。


そんな時、美樹の携帯の着信音が鳴りメールが届いた。

そのメールを恐る恐る開くと見た事のない女が大地と映っている動画だった。

その動画にはドリームキャッスルに入っていく大地と女の姿が確りと映っていた。

美樹は涙を流した本当なら行きたい、でも怖くて仕方なかった。

今さっきまで大地の存在を忘れ自分が助かる事ばかりを考えてしまっていた。

動画の最後に大地の声が入っていた。

「来るな……美樹……お前は帰るんだ」


涙が溢れ出た。

悔しかった、情けなかった、弱かった。

助けたいのに足が動かない……

もう一度、来た道を引き返す事が美樹には出来なかった。


「行くぞ、美樹の兄ちゃんの場所分かたんだろ」

光紀は美樹の手をとり起き上がらせた。

そしてドリームキャッスルに向かう事を決めた。

光紀と美樹は案内板を見つけると今いる位置を確かめた。

ドリームキャッスルに向かうには観覧車のある道を抜けて行くのが今いる位置からだと、一番の最短ルートだった。


光紀に手を引かれ美樹は一歩一歩を踏み出していく。

不安で怖くて仕方なかった。

それでも光紀のお陰で前に進めたのだ。

そんな二人は停まっていた筈の観覧車が動いていることに気づいた。


「美樹!一気に抜けるぞ」

光紀はそう言うと観覧車の前を走り抜けようとした。

しかし観覧車のゴンドラの扉が開くと光紀は止まってしまった。

光紀の姉である、桜井 美雪がゴンドラの中にすわっていたのだ。


「ね、姉ちゃんーー!」

光紀の声に振り向いた美雪の頭部の半分はグチャグチャになってしまっていた。

光紀は目の前の光景に絶句した。

「光紀、すぐに走りなさい。彼女を守るのよ」

そう言うと美雪は微笑んだ。

すぐにゴンドラの扉が閉じた。

その僅かな時間で光紀の希望は絶望になった。

そして姉の言葉を聞き光紀は美樹の手をとり走り出した。

もし、走らなければ二人のうち、どちらかは観覧車の餌食になっていただろう。


光紀は走りながら泣いていた。

むしろ涙を隠すために止まらずに走り続けていたのかもしれない。

そして二人はドリームキャッスルに舞い戻ってきたのだ。


皮肉な話だった。

出口を目指した結果が工藤の死に繋がり、捜していた兄は外ではなく中にいるのだから。


二人は動画に映っている扉を見つけると扉を引っ張った。

鍵は掛かっておらず、簡単に扉は開いた。

光紀が先に入り安全を確認すると美樹を中に呼んだ。

美樹が中に入り扉から離れた瞬間、扉が勢いよく閉まったのだ。

慌てて光紀が扉を開けようと扉に手を触れた瞬間……光紀の両手にギロチンの刃が襲い掛かったのだ。


「ウワァァァァァァ!」

光紀の悲鳴がドリームキャッスルの中に響き渡る。

そして、光紀の両手首から先が床に無惨に転がり落ちたのだった。

終わりが近づいていくなかで真実も語らなければなりませんよね?


謎の女の正体とか……

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