表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう、誰も帰れない……美樹編  作者: カボチャの悠元
4/6

4

何がなんだか分からないまま、出口を目指す三人は嫌な看板を眼にした。


【見世物小屋 不気味な遊園地の怪物達】


貼り出された紙には先程のゲームゾーンにいた化け物も描かれていた。

絵だけで説明などは無かったが他にも何枚も同様に紙に描かれていた化け物達は皆、今にも動き出しそうな程リアルに描かれていた。


実際に動く化け物を見たばかりの美樹達からすれば、それは恐怖でしかなかった。

「もしかして、他にもあんなのがいるの」

美樹は震えながらそう呟いた。

もしそうならば、描かれているアトラクション全てに化け物が要ることになるからだ。

「悪い冗談にしてはキツすぎるな」

工藤もひきつった顔でそう言うと溜め息を吐いた。


そんな中、見世物小屋の扉が急に開いた。

いきなりの事に“ビクッ"と体を震わせ恐る恐る開いた扉の方を向く美樹達の前にシルクハットを被ったお爺さんがたっていた。

暗闇の中にも関わらず確りとその姿は眼球に写し出されていた。

三人は息を飲んだ。


そして老人は軽く会釈をすると、薄気味悪い顔でニッコリと笑いかけてきた。

その蒼白い肌は美樹達に、老人がこの世の者では、ないと直ぐに気づかせるのに充分だった。


「今宵は……裏野ドリームランドにようこそ……御越しいただきました。心より歓迎致します……どうか、覚めない悪夢をお楽しみくださいませ」

そう言うと老人の顔から砂のように崩れていき、最後には塵とシルクハットのみがその場に残されていた。


「おかしいよ……なんなのよ!なんなのよぉぉぉぉ!」

余りの恐怖から美樹は大声をあげて座り込んでだ。

工藤と光紀に支えられ、立ち上がる美樹は今にも泣き出しそうな顔をしている。


工藤は次に向かう先のアトラクションの絵がないかを探しはじめた。

見つかったのは占いハウスの上に描かれる巨大な目玉だけであった。

まるで月を思わせる位置に描かれる目玉の絵は鬼の絵などと違い危機感を与えるような物ではなかった。


工藤は二人に休むように言うと一人で安全を確かめに走ったのだ。

今の美樹を連れて行くのは危険だと判断し工藤を占いハウス迄の道に問題がないかを調べにいったのだ。

幸い、占いハウス迄の一本道には何もいなかった。

工藤は戻ると急ぎ二人を誘導していく。

そして、占いハウスの前に差し掛かると老婆が座っているのが見えた。

工藤が調べた時にはいなかった筈だが、確かに老婆が地べたに座っていた。

「走るしかないな、占いハウスの前を抜けないと出口に続く道には出れない、覚悟をきめるか」

工藤がそう言うと美樹達は全力で走り出したのだ。

老婆はただ、目の前を走り抜ける美樹達に顔を向けていた。

その顔には両目がついていなかった。

小柄な老婆が何かを呟いていた。

「搭……ワイドの7……ソードの2……カップの9……」


それ以外聞き取れなかったが、間違いなくタロットカードだった。

美樹は気になり走りながら後ろを振り向いたが老婆の姿は既にそこには無かった。


美樹は『搭』の意味は知っていた。

此れから起こる災い、事故、不幸を暗示するカード。

そしてワイド、ソード、カップ、全てタロットで使われるモノであり。

美樹もその意味までは知らなかった。


美樹達は何事もなく走り抜ける事が出来たと一息ついたが、光紀がその先に戦隊ショー等を行うステージがあることに気づく。

そして電気など流れている筈のない裏野ドリームランドの特別ステージに灯りがついた。

何処からともなく、音楽が流れだしステージの裏から着ぐるみ達が次々に現れる。

「ヤバい!走るぞ」

工藤の掛け声で一斉に走り出した瞬間、着ぐるみ達も美樹達を追いかけて走り出した。

着ぐるみとは思えない凄まじいスピードで追ってくる着ぐるみ達の手には斧や熊手といった得物が握られていた。


必死に走る三人の前に中央に続く道が見えてくる。

肺が飛び出しそうになりながら三人は走り抜いた。

気づけば、後ろから追ってきて着ぐるみ達がいつの間にか消えていた。

何時から消えたのかは分からないが、三人も既に走るのは限界だった。

三人の今迄の人生でこれ程、必死に走った事など無かっただろう。


そして遠くに見える観覧車、その先にある道に目指している出口がある。

三人はやっとこの悪夢に終わりが見えてきたと安堵した。

しかし、いきなりスピーカーから薄気味の悪い声が聞こえてきた。

「……ザザッ……これより…… 御客様 参加の特別ステージを開始致します……皆様……お帰りにならないようにお願い致します……」

嫌な予感しかしなかった。

そして目の前にあるレストランの中に次々に着ぐるみが溢れていくのが見えたのだ。

「お前達は先に行け!」

工藤はそう言うと着ぐるみ達がレストランから出て来ないようにレストランの扉に置いてあった工事用のパイプを突っ込みと全身を使い押さえた。


「工藤さん!早くきてーー!」

美樹が叫んだ時レストランの扉のガラスが砕けた。

そして着ぐるみ達は押さえていた工藤をレストランの中に引きずり込んだのだ。


「ぐあぁぁぁぁ……」

工藤の叫び声が響きそれは直ぐに消えた。

美樹は直ぐに理解したそして泣き出した。

そんな美樹の手を引っ張り光紀はそのまま走った。


「……ザザッ……御客様 参加の特別ステージが、ただいま終了致しました……ザザッ……最後まで、裏野ドリームランドをお楽しみくださいませ……」


アナウンスが終わると、絶望と脱力感が全身に襲いかかってきた。


「光紀……私達も死んじゃうのかな……」

「大丈夫だよ、外に出たら直ぐに警察にいこう、それで全部話そう!」

「信じるわけないじゃん!警察にお化けに人が殺されましたって言うの?誰も信じないわよ……」


光紀は美樹の手を引っ張り立たせると再度出口を目指して歩き出した。

「俺は信じるし、バカにする奴がいたら俺がなんとか認めさせて見せるから、美樹は……心配するな、きっと工藤ならそう言うと思う」


そして二人はメリーゴーランドの前にたどり着いたのだった。


そして……メリーゴーランドはゆっくりと動き出し徐々にスピードをあげていく……まるで二人を誘うかのように鮮やかな光が闇を照らし出していくのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ