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お久しぶりです。
1度作品が消えてしまい、御迷惑をお掛けしております。
また読んで頂ければ幸いです。
美樹達は暗闇の中を用意した懐中電灯を頼りに進んでいった。
遊園地の手すりの間間に度々配置されているマスコットの像が光に照らされて不気味な夜中の遊園地を更に薄気味悪くしていた。
そんな中、少しずつ像の顔が此方に角度を変えているように見えた、1つまた1つと、前を通る度に嫌な視線を美樹は感じていた。
美樹は恐怖心から来るものだと、自分に言い聞かせながら、像を見ないように少し下を向きながら歩いていく。
そんな時、工藤が立ち止まった。
「どうしたの?工藤さん」
美樹の問いに工藤がゲームコーナーを指差した。
其処には古びた扉に鎖が巻かれていた。
幸い鍵も錆び付いていて簡単に壊せそうだったが、流石の工藤も壊すことに抵抗があったようで引き返そうと言ってきたのだ。
「流石に壊したら犯罪だからな、反対側にいってみよう」
工藤がそう言って引き返そうとすると光紀が扉を思いっきり蹴り始めたのだ。
「おい!光紀君やめないか」
工藤がそう言った瞬間、扉に巻かれた鎖が音をたて地面に落ちたのだ。
余りにゆっくりと落ちる鎖に違和感を感じたが、そんなことを気にせず光紀は扉を開けたのだ。
「俺は…… 一人でも姉ちゃんを捜しにいく、姉ちゃん以外に泣き虫なんだよ……」
光紀はそう言うと扉の中に入っていった。
美樹と工藤も光紀に続き中に入っていく。
中には古いゲーム機や輪投げや射的に的当て等が並んでいた。
「随分古いな?買い手が見つから無かったんだな?」
工藤がそう言ったのはどれも10年以上前のモノばかりであり、的当て等もかなり使い込まれている様子だった。
「しかし、気味が悪いわね、早く抜けましょう」
美樹がそう言うと光紀が小さな声で謝ってきた。
「悪かったな、俺のせいで巻き込んじゃって……ごめん」
光紀は少し頭が冷えたのか申し訳なさそうにそう言ったてきたのだ。
「かまわないよ、多分ね、私も同じ事したと思うんだよね…… だって大切なお兄ちゃん私も見つけたいしさ」
そう美樹に言われ光紀は少しホッとした表情を浮かべていた。
しかし、そんな二人とは違い、工藤は目の前から少しずつ此方に近づいてきている様な小さな物音に気づいたのだ。
工藤は、まだ距離があることを思い直ぐにゲーム機の物影に美樹達と身を隠したのだ。
「おっさん、いきなりなんだよ!」
「しっ!静かに何か此方に向かって来てるようなんだ」
光紀を止める工藤の言葉に美樹は助けが来たのではないかと淡い期待をした。
しかし……そうでは無かったのだ。
ゲーム機の横を一匹のネズミが走りすぎていったのだ。
「なんだよ、ネズミかよ」
「まだだ、静かに」
光紀はそう言ったが工藤が光紀の口を手で押さえ、指を立てて黙るようにいった。
“ズズズズ……”っと何かが擦れるような音がゆっくりと近づいて来ているのが美樹にも聞こえた。
その音は更にゆっくりと此方に近づいて来ていた。
そしてゲーム機の前を過ぎようとするその横顔……
美樹は叫びそうになる自分の口を必死に押さえ、内側で震える自分の指を噛んでいた。
あれは……人じゃなかった。
まるで巨大な鬼の人形のように見えるそれはゆっくりと美樹達の隠れたゲーム機の横を通り過ぎると入り口の扉に向かい進んでいった。
「行ったか、何なんだあれは」
工藤はそう言うと回りを確認してから深呼吸をしていた。
流石の工藤も余りにイレギュラー過ぎる出来事に冷静さを保つのに精一杯に為っていたのだった。
「少し走るぞ、アイツが戻ってきたら、まずいからな、走れるか?」
工藤が美樹と光紀にそう聞くと二人は頷き工藤の合図でゲームコーナーの出口を目指し走り出した。
その時、美樹のスカートが何かに引っ掛かったのだ。
美樹が後ろを振り向くと其処には小さな子供が下を向きながらスカートの裾を掴んでいたのだ。
「いっ、ひぃやああァァァ!」
美樹は余りの恐怖に悲鳴をあげてしまったのだ。
それを聞いた、その小さな子供が大きく口を開けた、中から別の子供の顔が美樹を睨み付けるようにして悲鳴をあげたのだ。
「ヒヤァァァァァァ!」
その瞬間、美樹は尻餅をつきながら後退りをしていた。
直ぐに光紀と工藤が美樹を引っ張りたたせると、直ぐに三人は走り出した。
余りの恐怖に青ざめた顔をする美樹を何とか引っ張りながら走る。
そして後ろから、あの擦れるような音が凄い速さで近づいてきていたのだ。
工藤が後ろに回りを走りながら倒せる物を次々に倒していく。
そして出口の扉の上を飛び越えると工藤が美樹を担ぎ上げ扉の外に出した。
そして工藤も直ぐに扉を飛び越え様としたときだった。
工藤の足に無数の子供が掴みかかったのだ。
「遊ぼう、遊ぼう……まだ帰らない……」
工藤が必死に振りほどこうとするが、中々振りほどけないでいた。
光紀がその場にあった瓦礫を掴み全力で子供目掛け投げたのだ。
その1つが子供の頭に当たった瞬間、工藤の足を離し扉に掴みかかって来たのだ。
「痛い!痛い!痛い!」
扉を全力で揺らす子供達の上から工藤が何とか扉の外に出た時、あの音の主が凄まじい勢いで扉に突っ込んできたのだ。
扉と音の主に挟まれ、グチャグチャになった子供達は笑っていた。
「痛い、痛い、アハハ……楽しい……」
そして、音の主はゆっくりと扉から離れて行ったのだった。
“ズズズズ……”っと嫌な音が段々と離れていくのがわかるとやっとまともに息を吸うことが出来た。
どうやら扉からは出れないらしい、凄まじい勢いで突っ込まれたにも関わらず扉はそのままであり、子供達の残骸も扉から此方には飛んで来ていなかったのだ。
冷静になった瞬間、美樹と光紀は嘔吐した。
余りに現実離れし過ぎた光景と子供達がいきなりグチャグチャになる光景に頭が可笑しくなりそうだった……
しかし、これで終わりでは無かったのだ。