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クリスマスローズ

作者: 堀木 環

今日ゎホワイトクリスマス。

ぁたしの彼氏ゎジムスナイパーみたぃな顔でチョーイケメン。

そんなぁたしは彼氏から「ぉ前はリックドムみたいで激マブ」

って言われる。

2人揃えば寒いクリスマスもホワイトベースだね♡


───年も押し迫った師走中頃、私は持ちうる全てを絞り尽くしてキラキラ小説を書いていた。

ペンネームはマキシマム★ザ☆すた丼。

10代女子という設定で携帯小説サイトへ日々投稿を繰り返しているが、実際はしがない40代の営業マンおじさんだ。


私は別にJKになりきりたい訳でも出会い厨という訳でも無い。

ただ普段の自分とはかけ離れた世界で別の自分を演じてみたくなった、最初のきっかけはそれだけだったのだ。


投稿小説サイトの今月のテーマは12月なのでクリスマス。

おもむろに手元のサイコロを振ると「4」が出た。

部屋の中を見渡し4文字のものを探す。

書棚の右上にソレはあった。

───『ガンダム』だ。


私はキラキラ小説を書く際に自分ルールに従って書くようにしている。

ひとつは投稿サイトのテーマに沿う事。

もうひとつはサイコロを振って出た数の文字数のものを室内から探し出し、それを小説の中にねじ込む事。

その自分ルールは厳しければ厳しい程に達成した時のカタルシスも大きい。

その日の私はよりにもよって「クリスマス」と「ガンダム」という厳しいノルマを自身に課してしまったのだ。


書き始めて数分も経たない内に激しく後悔した。

書ける訳がない。

クリスマスに充実した思い出等は無いし、ましてやガンダムに詳しい訳でもない。

書棚の上に積まれたガンダムローズにやり場のない怒りを抱きながらキーボードを叩く。


クリスマスゎ彼のぉぅちにぉ泊まりデート♡

ハイパーモードになった彼のシュバリエサーベルから、ぁたしのローゼスビットにぁたしのロ


───私はデリートキーを連打しながら首を横に振った。

自分に課したノルマを変えてしまうのは容易い。

だがそれは同時に自分に負けた事にもなる。

しかも今は12月。

今年最後の投稿小説になるかも知れない。

そんな大事な作品、手を抜く訳にもいかないだろう。


彼のデビルフィンガーがぁたしの肩ぉ抱ぃた。

服ぉ脱いだ彼の下半身のガンダムヘッドがぁたしの


───「クソが!書けない上に何故シモへと走ってしまうのだ!?

キラキラ小説にくだらないオヤジギャグ満載な下ネタなんぞ必要ないというのに!」


私は声を荒らげて叫んでいた。

ガンダムローズをデビルガンダムに変えた所で事態は一切変わっていない。

しかもわざわざWikipediaまで開いてこのザマだ。

モニタには髪を振り乱し虚ろな目をした40代のオッサンが写っている。

何をやっているんだ私は…

1人で勝手にノルマを決めて、1人で勝手に怒って、取り乱して。

仮にも大手企業の末端を担う営業マンだぞ。

たかだかこんなキラキラ小説なんぞで何をムキになっているのだ。


冷静さを取り戻すべく、書棚の上から埃を被ったガンダムローズの箱を引っ張り出した。

リサイクルショップで気紛れに買ったはいいが、組み立てていなかったのだ。

ランナーからパーツを切り離し、組み立てる。

パチンパチンとニッパーから奏でられる小気味よい音を聞いていると、先程までの興奮が嘘のように引いていった。

そして腕を組み立てようとしてふと気がつく。

ポリキャップ部分が箱の中のどこにも見当たらない。





「何がキラキラ小説だ何が本物川小説だケツ拭く紙にもなりゃしねえ!

何がクリスマスだクソが!!」

私はそう叫びながらガンダムローズを箱ごとゴミ箱へと叩きつけ、書棚の奥からぷっちょのケースを取り出した。


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