第07話 出口発見
「よくやった!」
俺はパタパタ飛んでいたヴィゼルを手に乗せ褒めてやる。
ウィゼルはえっへん!
と言いたげな様子で、おすまし顔をしている。
頭を撫でてやると、気持ちよさそうにグルルルと喉を鳴らしていた。
その後、俺は放った矢を回収し、ゴブリンが持っていたナイフとショートソードと手斧も回収した。
金目の物や、使えそうなものはそれ以外何一つ持っていなかった。
(ちっ!きったねぇな)
そう思いながら、汚れでベトベトした武器を布で簡単に拭く。
あらかた作業が終わった後、次の通路を探すため壁沿いを歩き始めた。
後ろをヴィゼルがパタパタ飛んでついてくる。
壁沿いを歩いていると、壁面の一部にちょっと変わった色をしたところがあった。
よく見ると、そこだけ岩壁が脆く、色が異様に黒い。
その中から反射するものが見えた。
ちょっと気になってショートソードで軽くザクザク土を刺して見ると、ボロボロ土が落ちてきた。
その中から五百円玉サイズの3つの鉱物結晶の形をした黒い石が出てきた。
手にとって見ると、黒くツヤツヤしていて綺麗なので、取り敢えずリュックに入れる。
その後も、数回土壁を掘り返したが、石は出て来なかったので諦めて、壁沿いに出口になりそうな通路を探した。
結局、3本の通路を見つけた。
もちろんどの通路も先はわからないので、取り敢えず一番大きな道を選んで進むことにした。
そのまま進むと、2つに道が分岐し、適当に左を選択して更に奥に進むことにした。
その先で、大きめの空間に出た。
しかし、そこにはあたり一面に、巨大な白い蜘蛛の巣が張り巡らされている。
その蜘蛛の巣の一部をゴブリンから手に入れたショートソードでなぎ払って進もうと剣を振ると、蜘蛛の糸のものすごい粘着液でショートソードががんじがらめに捕らえられてしまった。
焦ってショートソードを引っ張ったりしていたところ、奇怪な音が天井から聞こえてくる。
キチキチキチキチ
俺は音の方を見上げると蜘蛛の糸をつたって、大型犬くらいの巨大蜘蛛が5匹近づいてくる。
もったいないと思いつつも、さすがいきなり5匹の巨大グモの相手をするのは無理なので、ショートソードは諦めて、また通路に戻ることにした。
巨大蜘蛛は通路まで追っては来なかった。
(さて、どうするか?)
俺は通路に座り込み、来た道を戻るか、それとも蜘蛛の巣を何とかするか考える。
ふと、腕を見ると蜘蛛の巣の一部が取り付いていた。
気持ち悪いので、反対の手で腕からはがす。
はがしている時に指先でグニグニ丸めると、白い毛玉の様な物が出来た。
それを見ていたところ、気になったことがあったのでポケットから100円ライターを取り出して、そのまま火をつけてみる。
そうすると、蜘蛛の糸はメラメラと一気に燃え上がった。
「ぴぃー」
いつの間にか、俺の肩の上に乗っていたヴィゼルが一声鳴き、俺達はお互い顔を見合わせると、ヴィゼルが前方に向かってボォッと小さく炎をはいた。
「燃やすか?」
「ぴぃ!」
俺の意図をすぐに察知して、がってん承知と言わんばかりに答える。
ウィゼルを肩にのせたまま再度蜘蛛の巣の部屋に戻る。
「よーし、やってやれ!」
「ぴぃーーー」
その合図とともに、ヴィゼルは口から3メートルの長さの火炎をはく。
俺はそれが一方向にならないように、体を180度グルッと回転させて、あたり一面に炎が広がるようにする。
あらかた蜘蛛の巣に火がついたところで、すぐに通路の引き返す。
ボト、ボト、ボト・・・・
ギチギチギチ・・・
部屋の中では蜘蛛の巣をつたって炎があっという間に広がって行く。
天井にいた蜘蛛達がどんどん落ちてきて、それと同時に肉の焼ける臭いが通路の方にまで充満してくる。
炎がどんどん強くなり、俺はちょっと危険を感じたので、2つに分岐した位置まで通路を戻る。
1時間くらいして、部屋に戻ると火は鎮火していた。
そして、部屋の中には真っ黒になった数十匹の蜘蛛の死骸が、仰向けになって動かなくなっていた。
(おーおー、こんがり焼けたなぁ)
俺はゴブリンから回収したナイフで巨大グモの丸焼きをつついてみるが、まったく動く気配はなかった。
ザクッとナイフを突き刺したところ、紫色の液体がジワッと出てきて嫌な臭いがした。
どうも食べれそうにはないし、回収できるものも無さそうなので、そのまま放置することにした。
その部屋をあらかた見て回って、次の通路を発見したのでそのまま進むことにした。
そのまま通路を進むと、やっと外の明かりらしきものが先に見えた。
俺は、うれしさのあまり、光のほうへ駆け出した。