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第05話 龍鱗鎧

 少し悩んだが俺は意を決して、さらにジャッキを締め付けワイヤーに力を加えると、徐々に大剣が抜け始めた。

 そして、なんとか大剣を抜くことができた。

 抜けた大剣を手にとって見る。

 大剣は人の背丈もある大きさで、鈍く光る銀色の刀身に炎を象ったかなり繊細な装飾がされた柄があり、柄の真ん中には赤い大きな宝石がはめ込まれている。

 ぱっと見、素人でも非常に高価なものであることは推測できる。

 ただ、大きさの割に軽く、両手でなんなく持てる。

 刀身を見ると、あちこち傷が入り部分的に刃こぼれしている。

 ドラゴンと対決したのだから仕方ないだろう。

 俺は大剣を両手に持って、剣先を上にむけて垂直にする。


「おおお、なんか強くなった感じがする」


 ドラゴンを死に至らしめた剣なのだから、相当の業物なのだろうと推測出来る。

 俺は調子に乗って剣を振り回していたら、うっかり手を滑らせて投げてしまった。

 剣は弧を描いて飛んでいき、岩にぶつかると思ったらなんの抵抗もなく、そのまま岩に柄まで突き刺さってしまった。


(まじか? まるでバターに突き刺したみたいだ)


 俺は剣を岩から抜こうとすると、今度はすんなり抜けた。

 そのまま、剣で岩を斬るとバターを切っているかのように綺麗に刃が通る。

 調子に乗って岩をスパスパ切る。

 しばらくして岩を斬ることにも飽きたが、ひとつ問題が発生した。

 よく考えたらこれだけ切れ味の良い剣をどうやって持ち運びすればいいのか?

 まじまじと刀身を眺めていると、急に宝石部分が光りはじめた。

 びっくりして剣を離そうとするが、今度は体が硬直してまったく動かない。

 次の瞬間どんどん力が抜けていく感じがする。

 まるで命を吸い取られているような感覚だ。

 ヤバイと思いつつも動けない。

 そうするうちに、今度は剣全体が光りはじめた。

 次の瞬間しゅるしゅるしゅるという奇怪な音と共に、剣の形状が変わっていく。


「・・・汝を新たなマスターと認証する・・・」


 そう誰かの声が聞こえたかと思うと、剣から強い光が発した瞬間、俺は完全に意識を失って倒れこんだ。

 気づいたら地面にうつ伏せになって倒れていた。

 腕時計を見ると1時間近くは眠っていた計算になる。

 目の前には、小さく貧弱な剣が青い鞘に入って地面に落ちていた。

 鞘から剣を抜くと、片刃の剣である。

 柄には赤い宝石があり、装飾は大剣によく似ている。

 ただ、傷や刃こぼれは全く無くなっていた。

 急な出来事で面食らったが、ドラゴンがいる世界なのだからこれもありだろうと1人納得した。

 俺は剣を手に持ち、小さな黒龍を親龍の亡骸から何とか引き剥がして、研究棟に戻った。



 俺は研究室に戻り、リュックから龍の鱗を取り出す。

 実験室にあった鉄ノコで、ガリガリ鱗を切り始める。

 5分程度作業した結果、龍の鱗は鉄ノコでは傷1つつけることは出来なかった。


(なんて硬いんだ!)


 加工することは早々諦めて、俺は机の引き出しから釣り糸を出してきて、鱗に無数に空いている小さな穴に釣り糸を通す。

 1枚2枚と鱗を横に糸をつなげて、鱗を円状につなげていく。

 同じようなものを20個作り、それを上下少しずらしてつなげていく。

 全部つなげると鱗が円筒状に連なった物ができ、鎧の胴体部分が完成した。

 いわゆるスケイルメイルという奴だ。

 自分のロッカーから使っていない革ベルトを2本持ってきて、そのうち1本を適当なサイズに切って、一番上の鱗部にベルトを取り付け肩掛けを作る。

 最後に胴回りを微妙に絞って調整し、肩の保護のために鱗を3枚3層重ねでつくり、肩当てとして胴に部分につなげた。

 結局まる一日かかって、何とか黒龍の鱗を使ったスケイルメイルが出来た。

 お魚さん的な鱗アーマーの完成だ。

 単に鱗を釣り糸でつなげただけのものだが、無理に引っ張らなければ用途的には問題ないだろう。

 難点は鱗同士がこすれてジャラジャラ音がするし、細い鋭い武器は鱗同士の間をすり抜けそうだ。

 まあ、音は後から鱗の裏にスポンジクッションを両面テープで貼れば解消出来るだろう。

 心配な細い鋭い武器に対しては、何か別のものを考える必要がありそうだ。

 昔ネットで見た、防刃Tシャツとかがあればありがたいが、そんなものココにある分けない。

 鱗同士をつなぐ釣り糸は弾力性もあり、そう簡単に切れる心配もない。

 一応1本2本切れても解けないように、あちこちの鱗に補助で繋げているので大丈夫だ。

 能書きはいいので、取り敢えず、着てみる。

 腰のあたりを、鎧の上からもう一本の革ベルトで締め付けて固定する。

 鎧にしたものを手で持ってみると結構重さを感じたが、着てみると意外に重くない。

 ラジオ体操をしてみるが、全然運動を阻害しない。

 拳で胸のあたりをゴンゴン叩いてみるが、まったく衝撃は伝わらず大丈夫そうだ。

 腰のベルトに、先ほど入手した剣を吊り下げて動いてみるが対して邪魔にならない。

 後は腕と足を守るものが必要だ。

 そこで、実験室で着る作業服と、実験で使うステンレスの細長い板を使うことにした。

 作業服は結構厚手で頑丈なので問題ないだろう。

 作業服の背中から長方形の形の布を切りとり、細長い板が入る様なポケットを複数作る。

 布の裏地にマジックテープを縫いつけた。

 同じ構造の物を腕、脛のサイズにあわせてちくちく手で縫って作る。

 そこに、ステンレス板をポケットに差し込んで腕と脛に巻いてマジックテープで止める。

 これで簡易の小手と脛当てが出来た。

 後は、足先に鉄板の入った安全靴と、黄色い簡易ヘルメットをかぶる。

 最後に、実験室の窓に取り付けてあった耐火用の緑色の厚手のカーテンを取り外してマントに加工する。

 見てくれは悪いが、無いよりマシな自作装備が完成した。

 結局何だかんたいって、自作装備の完成に3日もかかった。

 その間に食料と水はどんどん減っていく。

 流石に何とかしないといけなくなった。

 問題はこの洞窟からどのようにして出るかである。

 黒龍はどうやら天井の穴から出入りをしていたらしい。

 一応横穴が2箇所あることが分かっているが、その先には危険な気配がする。

 正直、龍が子供の龍を守れと言っている以上、何らかの敵がいるのは間違いないと思われる。

 まあ順当に考えれば洞窟には魔物がいると考えのが妥当だと思う。

 ただ、幸いここに来て4日経つが、この空間に魔物は出ていない。

 4日もいれば、場合によっては遭遇していてもおかしくないが、この空間に出ないという事は何らかの原因があるのだろう。

 単純に考えれば、死んでるといはいえ黒龍がいるから入れないと考えるのが自然だろう。

 つまり、ここに逃げ込めば襲われる可能性は低いと考えられる。

 しかし、このままここにいても食料も水もない。

 解決するにはどうしても外界に出る必要がある。

 結局、横穴を通って出口を探すのは一番合理的だと判断する。

 行動が決まれば、準備もしやすい。

 取り敢えず、数日分の食料と水をリュックに入れて、

 その他生活に必要そうなものを適当にチョイスする。

 あとなにか武器になりそうなものは無いか研究棟の各部屋を再度あちこち探して回る。

 隣の研究室で非常に良い物を見つけた。

 アーチェリーで使う洋弓と矢があった。

 そう言えば大学のサークルにアーチェリー同好会があった。

 多分その部員の私物だろう。

 俺は非常事態なので遠慮なく拝借することにした。

 一応外で試し打ちをしてみる。

 半日練習したところ、大きな的なら15メートルくらいの距離でも結構当たることがわかった。

 準備ができたので、小さな黒龍に状況を説明することにした。

 こいつにたいして力がないとしても、こいつが死ぬと俺も死ぬということなので、ある意味俺にとっては主である。

 とはいえ、理不尽な方法で強制されているので、主従関係は絶対に嫌だ。

 なので、対等な立場という事で話すことにする。


「ヴィゼル、そろそろ食料と水が無くなってきた。だからここから外に出ることにする。お前は出口を知っているか?」


 一応俺は小さな黒龍こと、ヴィゼルに聞いてみる。


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