1話「私だけが、本当で」
「行ってらっしゃーい!気をつけるのよ!」
「はあい!いってきまぁす!」
今日も成功した。
普通の女子高生を演じるのに。
お母さん。
ごめんね。
毎日毎日、心の中で謝り続ける。
「嘘を吐いてごめん。」と。
あなたが、あなたたちが、幻であること。
あなたたちだけが、幻で。
私だけが、本当で。
***
「おはよう。」
「おはよう。」
いつもの通学路。
変わらない風景。
皆が長く見つめてきた形。
そして、私の目の前に居る少年。焔堂理炎。
彼は、私と契約を交わした。
誰一人として、同じにはなれない、たった一つの契約を。
―――――
目の前に転がる、2つの死体。
かつて、幼いながらも深く深く愛した、家族の抜けがら。
「よお。」
「だ、れ・・・?」
目の前に現れた、一人の少年。
周りは炎に包まれ、「ぱちぱち」と今まで見たことの無いくらい大きな火花を散らし、家々は赤い煙を上げ、まるで、全ての終わりを告げているようだった。
「悪いが、名前はないんだ。」
彼の瞳を、崩れ落ちる私は見つめ続けた。
「そう、なんだ・・・。」
「今、この状況の意味は解っていると思う。大火事で、周りの家々が全焼している。君は奇跡的に助かった。本当に良かった。」
「良くないよ!」
「・・・。」
「そうだね、ごめん。」
「お母さんも、お父さんも、死んじゃってさあ!大事な友達も、死んじゃったかもしれないんだよ!?」
「それに私だって死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「そんなことさせない!」
「!?」
抱きしめられた。
優しくて、暖かい体が、私を包んだ。
「俺が、」
「君を守ろう!」
「さあ俺の言うことを繰り返して!」
「え?」
「君はこれから、この大火事を起こした犯人を見つけ、倒すために、魔女になる。つまり敵討ちだ!」
「魔女・・・?」
「魔法を使える女の子のことだ。解るね?」
「うん。・・・」
「じゃあいくよ。」
「うん・・・!」