街だ!ギルドだ!喧嘩だ?
「やぁ、ミレーナ」
優太はにこやかな顔でミレーナに後ろから声をかけた。
「!?…なんだユータさんか…え!?ユータさん!?ルビードラゴンはどうしたんですか!?まだ10分も経ってないですよ!?」
「腹にパンチ入れてぶっ殺したけど?」
「はあああああああああ!?ドラゴンに腹パン!?しかもルビードラゴンにぃ!?」
「まぁいいじゃん、さっさと街に行こうよ」
優太は知識としては街の名前や距離などは知ってはいるがどのような地形なのかは分かっていない。
優太は知識だけじゃなく視覚情報も欲しかったなと後悔していた。
しかし後悔していてもしょうがないので行動しようと優太は思った。
「ミレーナ、手を出して?」
ミレーナは疑問に思いつつも言われたとおり優太に手を出した。
「これあげるね〜肌身離さず持っとくんだよ?」
優太はそう言いながらミレーナにブレスレットをつけた。
「えっと…こんな効果の高いブレスレット貰ってもいいんですか?」
優太があげたブレスレットは魔力の絶対量を底上げするという国宝級の代物だ。ちなみにミレーナは魔力値が上がるものだと勘違いしている。
「うん、いいよ〜、じゃあ転移するから手出しててね〜」
「転移…ですか…もう驚かないわ、じゃあ行きましょ。私もすることあるしね」
次の瞬間2人はその場から消えた。
街の近くに転移した優太はまず思ったことがでかい、だった。
国を覆う外壁からしてそうなのだが首を左右に動かしても端が見えないのだ。
「えっと…あそこが門だね。よし行こう」
ミレーナは頷き優太に素直について行った。
ここでミレーナの容姿を説明しておくと目は大きくばっちり二重、髪は暗めの赤、身長は160センチほど、胸はたわわに実った果実、女性の誰もが羨むようなスタイルである。
なぜミレーナの容姿を説明したかと言うとそれだけミレーナは一目を引く容姿をしているのだ、それこそ自国であればほとんどの人間が知っているほどだ。
「おっ!ミレーナ様おかえりなさいませ!」
「ええ、ただいまかえりました」
優太は疑問に思った、なぜミレーナは『様』をつけられるだろうかと。
(たしか『様』とつけられるのは主従関係にあるか奴隷か貴族以上の階級の人間だ、まず門番をやってる人間がミレーナと主従関係とは考えにくい、ましてや奴隷などあるわけない、なら最後の貴族以上の階級の人間か、ミレーナに聞いてみるか…)
「なぁ、ミレーナ、お前って貴族の人間なのか?それとも王族とかなのか?」
「よく分かったわね、そうよ、結構有名な貴族?」
「じゃあ本名はなんて言うんだ?ミレーナ・ソエルなんて名前じゃないんだろ?」
「まぁまぁ、そういうのは後でいいからさっさと中に入りましょう?」
たしかにそうだなと思い優太は頷き門の中に入って行った。
「ようこそ、ルーン王国へ!お嬢様がご迷惑をおかけしたみたいですね。どうぞこの国ではゆっくりしていってください」
国に入るなり女の人にそう言われた。
(推測だが念話かなにかで連絡したみたいだな)
念話には有効範囲があり優れた魔術師でも1キロが限界とされている。
「あら?意外と驚いてないのね?じゃあ屋敷に行きましょ?」
「いや、その前にギルドに行って登録を済ませたい」
なぜ優太がギルドに行って登録をしたがるのかはギルドカードが万能だからだ。
ギルドカードとは即ち、その人物の身分を証明するものだ、他にもお金をチャージしてそれで支払ったり入国する時などにもある程度のランクであれば簡単に入れたりと用途はさまざまである。
「じゃあ早速行きましょうか、ギルドの場所案内するわね」
優太達はギルドへと向かった。
優太達の前には中々立派な建物があった。
「ここがこの国で1番のギルドかな、名前は『ヴァルシュ』どう?ここにする?」
「ああ、ここでいい、いやここが良い気がする。勘なんだがな」
優太達はギルドの扉を開けて中に入った。
中は明るく全体的には木などで出来ていた。
「あの、ギルドカードの発注お願いします」
優太は近くの受け付けに行き綺麗な受け付け嬢に申し出た。
「はい、かしこまりました。ではこちらの水晶に魔力を込めてください」
受け付け嬢は優太の前に手のひら大の水晶を置いた。
「できればこのギルドで1番良いやつ持ってきてもらえませんか?こんなんじゃ割れてしまうんで」
受け付け嬢の眉が少し動いたがはい、わかりましたと言い後ろに下がった。1分程度待ったらかなり大きめの水晶を両手で抱えて持ってきた。
「これがこのギルドで1番の水晶です」
優太は受け付け嬢が持ってきた水晶に軽く魔力を込めた。
優太的には軽く込めたつもりだったのだが…
ぱりん、と音が鳴り真っ二つに水晶が割れたのだった。
周りにいたギルド員やギルド職員ですら驚き過ぎて声が出なかった。
(あっれええええええ??軽く魔力流したつもりだったのに!?なんで割れんの!?たぶん1万くらいしか流してないのに!?)
優太はこの時流した魔力は1万などではなく10億ほどだった。
「……と、とりあえず魔力は計測不能で種族は人間でよろしいですね??」
「…あ、はい。お願いします」
受け付け嬢はその場からものすごい速さで駆け出した。
「なあ、ミレーナ?あの水晶ってどのくらいの魔力量を測れるものなんだっけ?」
「たしか1億までなら可能だったはず…よ」
奥からものすごい威厳の溢れる白いヒゲを生やした大柄な爺さんが現れた。
「お主、ワシの部屋まで来てくれんかの?」
優太は断る理由もないので黙って従った。
部屋につきソファーに座らされいろいろと質問された。
「早速じゃがお主の魔力量なんじゃが…なんなんじゃ、あの魔力量…あの水晶はワシが手を加えて5億程度なら耐えられる物にしておったのじゃぞ?」
優太は本当のことを話すか迷った、なのでいろいろと省いて説明した。
「話をまとめると、お主は生まれつきバカみたいな魔力を持っておったが辺境の地にいたから今まで誰にも話さなかった、ということでいいのかの」
「あぁ、そうだ。それでなんだがギルドカードは作ってくれるのか?」
爺さん…ギルドマスターは懐から銀色のプレートを出した。
「ほれ、お主のギルドカードはこれじゃ」
手渡されたギルドカードにはこう書かれていた。
名前 ユータ
職業 冒険者
魔力量 底無し
金 0
ギルドカードはなんとも分かりやすい表示だった。
「ありがとう、ギルドマスター、とりあえず用件はなんなんだ?ギルドカードだけじゃないんだろ?」
感心したかのようにギルドマスターもとい爺さんは微笑んだ。
「ほっほっほっ、頭がいいのじゃな。そうじゃワシがお主を呼んだのは他にも理由があるんじゃ、お主の魔力量を見込んで頼みがある。地の龍 ファフニールの討伐を頼みたいのじゃ」
「OK、任せろ、だが話が通じる相手だったら討伐せずに話し合いをするがそれでいいか?」
ギルドマスターは少し驚いた表情をしていたが真面目な顔に戻りわかったと言った。
「じゃあオレはこの国を少し見てくる、依頼は明日行くとする」
失礼すると言って優太は部屋を出た。
「恐ろしい少年ですね、マスターの覇気を受けてもなんともなさそうな顔していましたよ?」
「たしかに、だがこれからが楽しみな少年でもある」
そう言ってギルドマスターは笑った。
部屋を出た優太はミレーナに捕まった。
「ねぇねぇ!ギルドマスターとどんな会話してたの?」
「ん?依頼だよ依頼、ファフニールの討伐だとよ」
それを聞いていたもの達はギョッとした。
こんな少年じゃファフニールは絶対に倒せないと皆思った。
「とりあえず依頼は明日、それまでは街の散策と買い出しだな。あ、忘れてたけどドラゴン売らないとな、ミレーナたしかドラゴンはギルドで売れるんだよね?」
「え、ええ、そうよ」
優太はその言葉を聞いた瞬間に受け付けのとこに行きギルドの職員に換金しに行った。
ドラゴンの体は大き過ぎるのでアイテムボックス内で細かくして部位を出していった。
ギルド職員は驚いたがすぐさま清算した。
「全部で1億金です、本当に全部お売りになるんですか?」
はい、と優太が言い金を貰いミレーナのところへ戻りギルドを出ようと扉に手をかけたら柄の悪い男に肩を掴まれた。
「オイ!てめぇ!なにミレーナちゃんとイチャイチャしてんだ!ミンチにすっぞ!」
と優太は言われたので肩に置かれた手を握った、無意識の内に身体強化された優太の手はゴリラの握力をも遥かに凌駕していたので柄の悪い男は自分の手がミンチになった。
「ぎゃあああああああああ、俺の手があああああ、だ、だ、誰か治療魔法をかけてくれええ」
優太はめんどくさくなってきたので男を放置しギルドを出た。