4、みんな…死なない
四話目にして、もうネタバレ必死の状態ッス!(汗 結果が分かってても、どうか結末まで読んでください!
カケルはどうやら、俺が購買に行っている間にサキの襲撃を受けたようだ。
「なぁレイ、あれで『緩和された』っ言えるんか?」
ヒカルが俺の前に来ながら質問をしてくる。
「なにがだ?」
「サキの攻撃がや」
ヒカルもサキの射撃を見たらしい。
普通はそう思うな、普通はな…
「あぁ、バズーカ砲や手榴弾、戦闘ヘリに戦車、ピーク時にはメガ粒子砲まであった」
だけど、あいつは普通じゃないんだよ。
「…冗談ッしょ?」
「無論、事実だ。中学の校舎が全壊した事もある。鉛玉はましな方だ」
「………」
その様子が想像出来たのだろう。
ヒカルの顔は青ざめていた。
俺もその場にいなければ、その地獄絵図への抗体がないだろう。
ヒカルはカケルのいない席を見て、動揺したようだ。
「…カケル生きてるんか?」
「大丈夫。たぶん、保健室に避難したのだろう」
あそこには四谷姉がいるはずだ。
サキは姉の近くで攻撃することはない。
「アヤさんのトコかぁ。…ホンマに大丈夫か?」
「…………たぶん」
たぶん銃でも向けられてるだろうが、死んではいないだろう。
「それよりも朝の『あれ』ってなんだったん」
ヒカルはそれ以上考えるのを諦めたようだ。
「そういえば、話すの忘れていたな」
「そうそう、聞く前に田口さんの『必殺・広辞苑の[大当たり]の次の項目は[大穴]チョップ!』を食らったからなぁ」
「…トリビア的な必殺技だな。…まあいい。その前に、お前は知ってるか? 二年前の『四谷財閥令嬢誘拐未遂事件』を…」
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「かーくん。あれから、だいじょうぶ?」
僕が十二杯目のコーヒーを飲み終えた時に、アヤさんは俯きながら聞いてきた。
「あれってなんのことです?」
なんのことを聞いてるか予想はついたけど、ハズレてたら嫌な空気になりそうだった。
「…ニ年前、私たち、つけた傷」
予想は的中してしまった。
「それはもう昔のことです。それに、傷は三人とも受けています」
「…でも、あれは…!」
僕はアヤさんの頭に、ポンッと手を乗せる。
同時にアヤさんの体が、ビクッと反応する。
「大丈夫。みんな生きてるから」
あのことになると、アヤさんは異常に暗くなる。
あのこととは、ニ年前にアヤさんとサキが誘拐されたことがあった。その時に巻き込まれた僕は犯人に怪我を負わされた。
たったそれだけのこと。
時計を見ると、もう帰りのホームルームも終わってる時間だ。
「まっ、下手すればサキに殺されますけどね」
そういって僕は保健室の出口に迎う。
「かーくん、死なない」
その声に振り返ると、さっきまで落ち込んでたアキさんは、いつもアキさんに戻っていた。
「そう言われると、今日も逃げ切れる気がします」
返事を笑顔で返した僕は戦場へと歩きだした。
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俺とヒカルは帰りのホームルームが終わって、帰路に着きながらまだ話を続けていた。
「……これが俺が知っているニ年前の出来事だ」
「……」
話を終えるとヒカルは珍しく暗い顔をしていた。
「……そんなことあったんかい…カケルはなんも言わんかった」
「あいつはあまり話したがらないからな。たとえ話しても『自分が巻き込まれて怪我をした』としか言わないだろう」
俺も事実を知ったのは、たまたま四谷姉が教えてくれたからだ。
「二人が誘拐されたんはニュースで見たけど、カケルが関わっとったとわな」
今更ながら、彼女達は日本政財界に名をはせる四谷財閥のお嬢様である。
それぐらいの金が無ければ戦車などを持っている訳がない。
実際、この戌神高校や戌神中学校、戌神小学校は四谷財閥の多大なる寄付によって成り立っている。そういうこともあり、二人が銃刀法違反に引っ掛からないのも…それ以上言う必要はないだろう。
なぜ俺がそんなことを知っているかだと?
…趣味だ。
蛇足だが、俺は作者の後付け設定に文句は言わない。
我が身を大切にしたいのは誰でも一緒だ。
「それ以来、サキの攻撃は緩和された。さらにカケルの一人称は『俺』から『僕』になった。」
「あっ! そう言われりゃ変わったな」
「気づいてなかったのか?」
「カケル、あんま変わってへんから。全然気づけへんかったわ」
「………」
俺は今と昔のカケルの姿を照らし合わせてみた。
中の上の顔に細い体。
ヘタレな性格ゆえ、呼び名は『伊達』『カケル』侮辱で『チキン』極少数『かーくん』
そして肩まである、しなやかなのにボサボサになっている黒髪。
…確かにあまり変わってない。変わったのは成長によって体格、あと『俺』の頃はその髪を縛ってたな…
「フッ…」
「レイ? どうしたん?」
「いやっ、なんでもない。それよりヒカル、カケルの中学時代のあだ名は分かるか?」
「ん、?鶏ちゃうん?」
…回りくどいのか、直球なのか分からない答えだ。
「確かに学校では『チキン』とか呼ばれていた」
学校ではずっと逃げていたからそう呼ばれた。
「しかし、一部では違う呼ばれ方をしていた」
そう、カケルの姿、行動から名付けられた呼び名。
思い出すだけで口角が上がってしまいそうになるその姿。
「……黒猫だ」
カケル「前回の後書きは酷い目にあった」
レイ「これに懲りたら口を謹むのだな」
カケル「それにしても、この作者伏線置きヘタだよねぇ」
レイ「…いいのかカケル? そんなこと言っていると…」
カケル「ン…マシンガン!?」 ズバババババババッ〜♪
レイ「…蜂の巣だな」