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最終話後編、やっぱり僕は逃走者!!

今まで有難うございました!!現在1668HIT 続編は読者の感想等によって変わります!!





「…これが昔、無茶な誓いをしたバカな少年の話です」



我ながら本当に無茶な誓いだったと思う。


でもあれから僕は、あの男…四谷源蔵に四谷財閥の隠密として、様々なことを学び、大切なものを『守る力』を手に入れた。



でも二年前、僕はアヤさんを守り切れなかった。


アヤさんは事件からしばらくは、笑わなくなってしまった。




自分の無力さを感じた僕は『俺』と一緒に『守る力』を封印した。


だから、これは一度は諦めようとした誓い。


だけど、これは諦めきれなかった誓い。




「…サキ…かーくんのファースト…くやしい…」


アヤさんが、なんか場違いなコト言ってるみたいだけど、よく聞き取れない。


いったいどうしたんだ?




「…カケル!?」


いきなり名前を呼ばれ、その方を見ると、さっきまでベッドで寝てたサキが、上半身を起こしてこっちを見ていた。



「おぉ、起きたか……?」

サキの瞳にみるみる涙が溜まってく…

こ、これは! 2回中2回の確率でタックルのモーション!?



僕は一番近い出口…グラウンドに出られる窓に向かって走る。

校長よ…窓ガラスの一枚ぐらいは許してくれ。




…でも、このまま逃げるとサキは割れた窓にぶつかるかも…


…しょうがない。



僕は一か八か、サキを信じて振り返る。



「サキ! 止まれるなら止まッ……ブベッ!!」



願いもむなしく、僕はサキと一緒にガラスを割って、グラウンドに飛び出ることになった。


運良く、二人とも怪我せず着地できた。



…僕がサキを押し倒す形で…!?




「ス、スマン!! 今すぐ退く…って、サキさん? 手を放してくれないと退けない、ってか動けないんですけど…?」



僕は急いで立ち上がろうとするけど、サキの顔の横にある僕の右腕は白い手に掴まれて、僕の首には同じような腕が回されていた。



「…カケル、黙って私の話を聞きなさい」



本当に目の前にあるサキの顔は、涙を見せながらも、生徒会長としての顔よりも真剣だった。


その真剣さは、僕に小さく首を縦に振らせた。







「私は…あんたを認めない」


いきなり否定かよ



「今も昔も…変わったように見えても、結局はあんたはみんなから距離を置いて逃げてるだけよ」


…そうかもしれない



「さっき、あんたは私達を『守る』ために『楯』になったって言ってたわよね?」


さっきの話、聞いてたのか…



「…でもね、私は『楯』なんか無機質なものを追い掛けるなんてしない」


…僕を追いかけてんじゃんか



「私が追い掛けてるのは『伊達カケル』って、逃げ足だけが取り柄のチキン野郎よ!」


ずいぶんと言ってくれるな

…否定は出来ねぇけど



「でもね、そいつはやけに足が速くて…私じゃ追いつけないのよ」


……なに言ってんだ?



「だから…『楯』なんてふざけたこと言ってないで…こっちに来なさいょ…」


………



「…私達から…離れてる『楯』のあんたじゃ……私は…笑えない」


…笑ってくれよ



「…あんたが…傷ついて…るのに…私は…笑え…ないょ…」


…お願いだから



「だから…近くにいて……私の手が…あんたに…届くように…」




…黙ってられんねぇ


「そしたら、僕はお前達を傷つけるかもしれねぇだろ!!」


僕は、僕の力でみんなが傷つく…それが怖かった…



「…私はそんな…弱くないよ…? みんなも…簡単に…あんたの周りから…いなくなったりしない…よ?」


…でも本当は、僕が守り切れなかったら、みんなが周りからいなくなるんじゃないかって…それが怖かった


サキのやさしい言葉が、触れる手が、真っすぐな瞳が、その恐怖をすべて拭い去ってくれる気がした



…だけど

「…僕は誓ったんだ…命をかけて。それをそう簡単には曲げられない」

それは諦めても諦めきれない…それほど強く刻まれたもの…




…でも、今は亡き硬派な昔気質かたぎの父親が言っていた。


『誓いや目標などは、一人でも立てられるもの…』



「だったら…約束しよ…?」



『だが約束は違う。約束には相手がいて、その相手を信じなければいけない』



「…カケルは…これからも…私たちを守…って………けど…近くにいて……そしたら私…この手…放さない……から…」


サキの震える手の力が少し強くなり、その言葉の意志を強く感じさせる。



『だから、約束は大切なのだ。必ず守らなければならない』


『…たとえ相手が約束を破っても、お前ははその相手を一度信じたのだ』


『信じたのなら、お前は意地でもその約束を守り通しなさい』



硬派の父親らしい、子供には固すぎる言葉。

幼い頃の僕には、『約束は守る』としか理解出来なかった。


…でも、今なら分かる気がする。




この約束をしなければ、僕は『楯』のまま、ただ敵だけを見て歩いていけるだろう。


みんなの悲しむ顔から顔を背けることが出来る。


見ないこと…それで弱い僕はいろんなことに堪えられた。

いわば僕が『楯』になれる魔法。




けど、それは《オレ》が僕にかけた呪い。

自分自身が傷つかないよう、高くそびえ立つ城壁。


僕が、今立っている位置から逃げないようにするための鎖。




過去の《オレ》…


もう、呪縛を解いていいかな?


もう、恐がらなくていいかな?


もう、ここから逃げていいかな?




…みんなと一緒にいていいかな?



嘘が嫌いで、どんな人にも明るく接するヒカル


言動は怪しいけど、本当はかなり頼りになるレイ


綺麗でしっかり者だけど、時々暴走するアヤさん


マジ怖いけど、最初に手を差し伸べてくれたサキ



僕はみんなと一緒にいたい。


そして、みんなを守りたい。


もちろん、この命をかけて。




これは『誓い』じゃなくて《オレ》との『約束』。



僕は《オレ》が決めた通り、『命に代えても大切なもの(みんな)を守る』


だけど僕は、僕のままで…みんなの近くで守り続ける。


僕は…みんなといれば強くなれる気がするから。


ちょっと形は違うけど、《オレ》の誓い、ちゃんと果たすよ。













「勝手にしろ……っえ!?」


僕の口から、言う気の無い言葉が出てきた。

まるで、《オレ》が僕に答えてくれたように……



…でも、答えも時と場合を考えてくれ。


目の前のサキが、涙も止めて驚いた顔してるぞ!



「…約束…してくれるの…?」


「ん? あぁ、約束してやるからこれ以上泣くな」

サキは『勝手にしろ』をYESの意味と取ったらしい。


…そう答えるつもりだったので、手間が省けた。



「じゃあ、そろそろその手を放してくれな…んッ!?」




僕が願いを言い切る前に、首の後ろに回されてたサキの腕に引き寄せられ、僕とサキの距離が唇が触れることで0になった。



それがキスだと理解した時には、僕の体は硬直してしまった。



触れているのは一瞬かも、十秒かも、一分かもしれないサキの唇は、昔同様僕を黙らせるのには絶対的な威力を誇っていた。



その唇が離れた時に、サキの顔には涙を吹き飛ばす、女神ような笑顔があった。



「…指切りの…代わり……破ったら許さないわよ…」



少し赤くなったサキの笑み…


…この笑顔を消すようなこと、出来るわけねぇよ



「…かーくん」


「ん? …なんですかアヤッ…!?」

「!! ア、アヤ姉!?」


呼ばれた方を見た時には、いつのまにか横にいたアヤさんの唇に僕の唇が重なっていた。


さらに、アヤさんの舌が僕の口に侵入す…



「そうはさせない!!」

「…グビャ!?」


侵入する寸前、サキは僕の首に回された腕を自分に引き寄せ、重なった唇を引き剥がす。



「…ゲホッ…サキ、ある意味助かった…って、アヤさん! なにしようとしてんですか!?」



「私とも、約束ね」


サキに無理矢理離されたアヤさんは、そう言いながら僕の上に抱きついてきた。


てか、なんか上下の二人睨み合ってるんですけど…


「姉さんでも手加減しないわよ」

「…絶対、負けない」



…あぁ、なんでこうなる?

誰でもいいからこの姉妹を止めてくれ…







「だ、伊達か?」




おぉ、神はオレを見捨ててなかったか!!


僕は二人を止めてくれそうな声の主(救世主)の方を向く。




隆起する筋肉、オッサン臭い顔、白いタンクトップに、首に掛けられたホイッスル…


そのは体育教師、田崎。

そして別名…



「魔王!?」



ヒーロー(救世主)じゃなくてラスボス(魔王)が出てきた!?



だが、今は魔王でも、スラ〇ムでも、ピッ〇ロでも…誰でもいい!


「魔王…じゃなくて、先生!! 助けてください!」



「あぁ…」


魔王は笑顔で頷いた。

よかった…


って、魔王の笑顔なんて、怒ってる時と下ネタ言ってる時しか見たことねぇぞ。


それに、物凄い殺気が魔王の拳から、ヒシヒシと感じるんですけど…



「その代わり伊達…死んでくれないか?」



そのお願いは教師として、おかしいだろぉぉおおおお!?



「仕方ない…サキ、アヤさん…後ろに下がっててください」


僕は二人の束縛を解き、魔王の目の前に立つ。



「いい度胸だ、俺達の白衣の天使に触れた重罪。その身体で償って…」


ったく、魔王は噂に聞く『四谷保健医ファンクラブ』の会員らしいな。


でも、確か奥さんいたよなこいつ…


ま、まあ、自分達のアイドルが、僕みたいのに抱きついてたら殴りたくなるかもな。


でも…


「…イヤですよ♪」



僕は魔王が拳を上げる前に、回れ右をする。




「痛いのイヤですから。…それに、僕は今から重罪を重ねさせてもらいます」




そう言った後、僕はサキとアヤさんを両肩に担いで、魔王から逃げ出した。


魔王が『待てぇ!』と言ってたが、待てと言われてナントカカントカはいない。



「カケル!? なにすんのよ!」

「か、かーくん?」



両肩に乗ってる二人の反応は新鮮で面白い。

ったく、さっき自分達が言ったことを忘れたのか?






「…二人が原因で僕が逃げるんですから…約束通り、一緒にいて(逃げて)もらいますよ♪」




そう言った時の僕の顔は、今まで生きてきた中で、ダントツ一番の笑顔だっただろう。






…この後、グラウンドを二人のアイドルを担いで走っていた、男子生徒を見つけた親衛隊&ファンクラブが、その生徒を死に物狂いで追いかけたのは言うまでもない。







■■■■■■■■■■■■■■■







作者の計画性の無さで、回想がクソ長くなってスイマセン。


僕はその間に黒猫になって全力で学校を脱出してましたよ。


最後まで残った、田中&魔王の最凶コンビからも逃げ切ったよコンニャロー!!


…そんなこんなで僕等は今、人がほとんど来ない&ここらで一番星が綺麗に見える小高い丘に来て、三人並んで寝転がっていた。


僕が髪を縛った紐を解くと、体に痛みが走った。


「……アヤさん、後で治療お願いします」


「まかせて…私が手術するのは、かーくんのためだから」


さっきの痛みは走り回ったせいで、また傷口が開いたせいだ。

面倒な手術を、左にいるアヤさんは笑顔で答えてくれた。



やっぱり、アヤさんは頼りになるなぁ。




「カケルはアヤ姉ばっか頼るだから…」


右にいたサキがイジケだした。

てか、なんでサキがイジケるんだ?


「俺はサキも頼りにしてるぞ? 僕の心境を一番最初に気づいて、いい方向に導いてくれるのは、いつもサキだから」


「!? ななななに言ってんのよ!?」


サキが騒ぎだしたけど、少し笑顔になったから結果オーライ。



僕は視線を夜空に向け、淡く光る満月を見ていた。













あっ!


「そう言えば二人共、今四谷家ではスナイパーライフルと欧米文化が流行ってるの?」



僕はこの頃の疑問を二人にぶつけた。



「「…???」」



あれ? そうじゃなかったの?






「だって、二人ともドラグノフ持ってたし、約束にキスするなんて…なんか欧米っぽいじゃん?」













…カチッ




ん?

なんだ、この二人から聞こえた機械音…


まるで、巨大な地雷を二つ踏んだような…


「……殺気!?」


僕は素早く立ち上がり、瞬間的に二人から距離を置く。




そして、二人を見ると…




「カァ〜ケェ〜ルゥウウ〜?」



戦女神サキが持ってるのは…戦車の装甲さえ撃ち抜く威力を誇る、ブローニングM2重機関銃




「…………………」



紅血天使アヤさんの手には…有線光学照準誘導式対戦車ミサイルBGM−71、別名TOWトウの装填した歩兵用砲台




「オフタリサン? ナニ物騒ナモノヲ持ッテルンデスカ?」







「カケル♪ 一回逝ってその腐りきった頭を直してきな!!」


「後で、治して、あげるから…今は、我慢してね?」




う〜ん、二人とも殺る気満々♪


てか、治療されても死んでちゃ意味ないよね?


じゃあ、僕は潔く…



「死ねわけねぇぇぇええええええ!!」



僕は二人に背を向けて、我が命のために走りだした。




「「待てぇええ!!」」




目の前の地面が深くえぐれて、大木が何本も砕け散る。

傷口が痛む…でも、立ち止まれない。

一発でも食らったら三途の川の向こう側特急一直線のプラチナチケットを押しつけられる。


でも…




なんでこぉなるんだぁぁぁぁああああああああ!?







〔逃走者だから…これでタイトル通り♪〕




「このクソ作者ぁぁああああ!!!!」




僕は不理知な作者のシナリオに怒号しながら走り続ける。






僕はこれからも走り続ける。


体は逃げるために


心は離れてた距離を縮めるために


でも…




「この状況から助け…!!」


ドギャァァアアン!!!







暗闇を淡く照らす満月の下、少年の叫びは爆音にかき消された…









【■HE END】

(彼は終わり)













「…僕は終わってねぇ!! てか、『■』で文字を隠すなッ!!」




〔…チェッ〕




ケシケシ…




【THE END】

(これで終わり)




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