最終話中編2、過去のオレの誓い
最終話が四編構成なんて…てか、最終話といえるのか?.....後書きにこれからの私に影響することを発表しますんで、興味があれば見てくださいm(__)m
俺は放課後の教室から、グラウンドでおこっているカケルの逃走劇を見ていた。
「なぁ〜レイ」
「…なんだ?」
そして、隣には定番化したヒカルがいた。
「『月下の金鶏』って『新月の黒猫』みたいに、なにか意味あるん?」
「あぁ、それか」
その呼び名は今日、ヒカルがカケルに言っていたが、それは昨日俺が気分でつけた通常時のカケルの別名である。
「ある国では金の鳥は『太陽』を意味する。太陽と月が二つあると、周りも明るくなるだろ」
カケルは周囲の人を時に見守り、時に楽しませる。
実際、カケルの逃走劇を見て笑ってる生徒は多い。
「…本当はその鳥は『ヤタガラス』というものなのだが、カケルには鶏のほうが似合う。だから『月下の金鶏』」
少しぐらい皮肉を入れてた方が、カケルにはあうだろう。
「なるほどなぁ」
ヒカルも納得したように明るく笑っていた。
…あぁ、忘れていた。
前回中途半端に終わった、カケルの回想の続きを開始しよう。
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サキが泣きつき始めて約一時間、僕の脳内では〔煩悩VS理性〕の対戦カードが組まれていた。
まあ、〔激痛〕がその死闘に殴り込んで圧勝しましたけどね(涙
てか、そんなに力入れて抱き締めなくてもいいだろ。
「かーくん、終わったよ」
そう、今まで僕は保健室の椅子に座って、アヤさんの治療を受けてました。
前回、サキに掴まれたり突撃されたりされたせいで、やっぱり傷口が開いちゃったんですよ。
その治療の間、二年前、僕が深く関わっていたことを知らなかったはずのサキが、同じ時期に攻撃の手を緩めたのは、僕の動きが鈍くなったのを感じ、無意識に緩和してるみたい…ってことを教えてもらった。
確かに、昔はずっと後ろ髪を縛ってたから、危ない時に黒猫の能力を発動して回避してた。
けど、二年前に黒猫は『俺』と共に封印したから、自動的に身体能力も下がっていた。
でも、なぜ見抜けたんだろうと考えてたら
「サキは、かーくんのこと、よく見てるから」
と、アヤさんが俯きながら言っていた。
そりゃ、毎日のように狩ろうとしてる相手はよく見てるだろうからな。
それにしても…二話目にも思ったけどさ、緩和するならやめてほしいわ…
「色々ありがとうございました…じゃあ、僕は帰ります」
「えっ…サキは、どうするの?」
「いや、寝させといてください…昨日のことで、きっと疲れてるだろうから」
そう、僕の傷口が開いた原因を作ったサキは、子供のように泣きながら寝たため、保健室のベットに寝かしました。
サキを運ぶ時に、誰とも会わずにすんだのは運がよかった。
…親衛隊にでも知れたら、即極刑決定だろうからな。
治療中=上半身裸だった僕が、制服を着直して、立ち上がろうとした時、アヤさんに裾の端を掴まれた。
「ダメだよ。サキ、起きた時、かーくんいないと、泣き出して、私には、止められないよ」
……なぜ?
俺は特撮映画によくある『目覚めた怪獣の怒りを静める少年』のようなスキルは身につけてないはずなんだけどな…
「…まあ、僕がいなきゃいけない理由はわかりませんが、アヤさんに迷惑はかけられません。だからと言って、今すぐ起こすのも可哀想だし、サキが自然に起きるまでは、ここにいさせてもらいます」
僕が椅子に座ると、アキさんが机の引き出しからお茶菓子を出して紅茶をいれてくれた。
…ダージリンの缶と一緒に『トリカブト』って書いてある缶が入ってたような気がしたけど…見なかったことにしよう…
「かーくん、今日みたいに、サキ泣かして…あの時は、私達の家に、連れてきてた」
そう、あの時は『あの男』にあることを言うためにも、アヤさん達の家(=四谷財閥の豪邸)に行った。
「そんなこともありましたねぇ……あの日がなければ今の僕はいませんね」
「……そんなに、特別なこと、あった?」
そうか、あのことはレイでも知らない…僕とサキしか知らないことだろうな。
「サキが起きるまでしばらく暇ですし、お茶でもしながら、僕の昔話をしましょう…」
僕は、アキさんからもらった紅茶を一口飲んでから、話し始めることにした。
…過去の『オレ』が立てた『誓い』と、そのきっかけとなった出来事を…
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人気のない小学校の屋上
空を染める、赤くかがやく夕日
オレは…夕日が沈んだら、不要なものを捨てようと思う
オレは、オレを拾った男に言われた。
『これから一週間以内に、命に代えても守りたい大切なものを見つけろ。さもなくば、お前をニューハーフにする!!』
…それがイヤだったオレは大切なものを探していた。
けど、見つかるわけなかった。
どんなものでも、いつかは消えてなくなる…まるで両親のように。
オレは……そんなのいらない。
なくなるんなら、最初から持たなきゃいい。
…こんな、黒い血が染みついた手に持てるものはないのかも。
いや、オレの命も…本当はいらないのかもしれない。
両親も、友達も…オレを必要としてくれる人はだれもいない。
だから、俺が死んでも悲しむ人はいない。
オレが死んで流されるの涙は、悲しみじゃなくて哀れみの涙。
…あの男は、オレに教えたかったのだろう。
『大切なものがない、必要とされないオレに生きる必要はない』ということを。
今、オレがいる学校の屋上は『立入禁止』ってなってるから、一部フェンスがコワれたままになってて、そこに歩いて行けばすぐに四階下のコンクリートの地面にまっしぐらだ。
そして『立入禁止』に入るのは、オレにとっては朝飯前…っても今は死ぬ前か。
そう、今日はその一週間の最後日。
オレはこの屋上で不要なもの…オレを捨てることにした。
「…あんた、なんでここにいるのよ」
その透き通った声に振り返ると、栗色のポニーテールの強気な顔をした女。
あの男の娘の一人…四谷サキがいた。
この女は、すべてを突き放したオレに、涙目でビンタを食らわせてから、いちいちオレに突っ掛かってくる。
「かみ型が似てる」と言って殴りかかってきたこともある。
「お前こそ、なんでいる?」
「あんたがここに来んのを見たからよ」
あぁ、ここに来た時感じたのは四谷だったか…
全然気にしなかったけど。
「お前には関係ない」
そう、オレがなにしようがオレ以外には関係ない。
「…自殺でもする気?」
女の感って鋭いもんだな。
そうでもなきゃ、今のオレは相当自殺したい人の顔になってるんだろうな。
「…だったら、どうする?」
「止めるわよ!!」
……こういうヤツはキラいだ。
真っすぐすぎるこいつの目は、同じ目をしてた過去のオレ自身の無力さを思い出させる。
「なんで? お前がオレを止める理由はあるのか? ないだろ? だれにも必要とされないコワれた人形が、捨てられるのを止める理由がよ!!」
「…………」
これが人としてまちがってても、だれもオレを止めないだろう。
…こわれたものは、だれも必要としないから。
「じゃあ、明日はオレのおかげで学校休めると思うよ」
…ちょうど、明日金曜日だから三連休になるな。
そんなことを考えてたら夕日が沈みはじめたので、オレはコワれたフェンスの方に歩きだす。
「……バカァァァアアアア!!」
あと数メートルぐらいのところで、後ろから近づいて来る声。
ただの体当たりに、オレは振り向かずに横によける。
「…ジャマすんな…って!!」
四谷が横を通りすぎた時、オレは気づいた。
このままだと…
四谷が落ちる。
「ッ…このクソォォォォオオオオオ!!!」
オレは全力で走り、四谷の前に回り込む。
止まらない四谷の体当たりをくらったオレは、彼女の代わりにコンクリートに叩きつけられることになった。
《屋上》のコンクリートに…
「…ガッ!!!」
小学生の女子の体当たりに、人をつきとばす力はなく、オレは屋上のゆかに押したおされた。
「ったく!! なんでオレのジャマする!? オレはだれにも必要とされない! なんの役にもたたない! だれも救えない! 俺が死んでもだれも悲し、まな……」
オレの中には、あふれるほど言葉はあるのに、これ以上なにも言えなくなった。
オレの口は、四谷のくちびるでふさがれてしまったから。
少しして、はなれた四谷の顔には、たしかに涙が流れていた。
「……バカ…必要だょ」
なにを言っている?
「…さっきも、私を…助けてくれたじゃん」
オレは…なんでこいつのために動いた?
「私は…あんたが死んだら…悲しいょ…」
なんで、悲しむんだ?
「…オレは、コワれた人形…ッ!?」
オレがフリーズした頭で、必死に出した言葉は、オレの首に手を回して抱きついてきた四谷によってかき消された。
「…あんたは…人形なんかじゃない……あんたは……カケルは…私が…必要としてるょ……だからぁ……もう…いなくならないでょぉ…」
心がいたい。
ヤケドのようなヒリヒリしたいたみ。
それは、彼女の涙の熱が伝わって、心のおくに染み入るよう。
その熱がオレの心を満たした時、オレは分かった。
オレは…オレを必要としてくれる、こいつに泣いてほしくない。
「もう、泣くなって」
キズついてほしくない。
だから、こいつが落ちそうになったら、かってに足が動いた。
「もう、消えようなんてしないから」
「…ほん……と…?」
オレを抱きしめる力が、少し強くなる。
「あぁ、…見つかったからな」
……守りたい。
大切なものが、いつかなくなると分かってても…
「捨てる気だったこの命、その使い道を見つけたんだよ」
オレの命に代えても…オレは大切なものを守る。
「…って、こいつネてるし」
オレに抱きつきながらネてしまった四谷を、オレは四谷の家でもある、あの男の居場所におぶって運んだ。
その家に着いたとき、オレは男に四谷を渡しながら言った。
「オレの命に代えても守りたい、大切なものは…オレを必要としてくれる、オレの周りにいてくれる人全員だ」
「お前も知ってるだろう、大切なものを失うのは悲しい。…お前は、大切なものが消え去ることに耐えられるか? お前は多くを望むが、そのすべてを守れるか?」
男の言葉は、なにもまちがってない。
…でも、それがどうした?
「オレは、オレの周りにいてくれる人が、笑ってくれればそれでいい。そいつらを泣かせるヤツがいたら、オレは全力で立ち向かう」
まちがってても、かまわない
「いつ消えるとかは関係ない。オレは大切なものの笑顔を守りたいだけ…そのためなら、どんなことでもしてやる…」
でも、オレは守りたい
「だけど、今のオレじゃあ、一人の笑顔を守ることも、ムリかもしれない…」
この血に染まった手で、なにが出来るかなんて分からない
「……だから、オレ自身がオレの周りにいる人全員を守る『タテ』になる!!…それがオレの答え、変えたりはしない」
それでも、オレは立ち向かう
大切なものを守るため
…そう『誓った』から
オレの言葉を聞いた男は、これでもかとニヤけた。
「一番厳しく、一番傲慢な選択をしたな…60点、ギリギリ合格の答えだ」
そして、男はオレを指差す。
「お前の『朔望月相』の力を、お前の大切なものを守れる力に変える技術…今日から俺がそのすべてを叩き込んでやる。残り40点はそれから見つけろ」
「ハイ!」
オレはすぐに返事をした。
今日泣かせた彼女を、早く笑わせたい思いに、迷いなんて一つもないから…
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意外に読者数も伸びた《逃走者!!》。
ですが、評価で『展開が速すぎ』みたいなことを指摘されました。
……実際それが作者の悩みの種だったりします。
なので、読者の皆さんの意見を聴いて、展開ゆっくりな続編を書いてみたいなぁ〜なんて思ってます。
候補としてはバトル系、ハーレム系、短篇的コメディ系、などがあります。
もちろん、他のアイディアも、出た時点で最有力候補です
もし、『違う作品のほうがいい』と思う方は評価・感想のどこかに◆を入れてください。
読者様方の意見が私の小説を変えます。 正直、マジ必死です(涙