最終話前編、特別部隊と天使の悪戯
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皆様、こんにちは。
伊達 カケル、伊達 カケルでございます。
…って選挙前によく聞く挨拶は置いといて、昨日いろいろとあった僕は、早速生死の狭間に立たされていた。
時間帯は夕方の下校中。
現在地は学校のグラウンド。
周りにはガン〇ムもないし、不審者侵入してない。ここは地雷原でもないだろう。
…えっ、『なにが生死の狭間だ? 夢でも被害妄想してんじゃねぇよ』だって?
はっ、確かに妄想しすぎかもな。
むしろ夢なら、あとコンマ一秒以内に覚めてくれ。
けれど、それは後ろから着実に迫っていた…
『待てェェエエエエ!!』×不特定多数
そう、僕は追われてるんです。
だけど、僕は族にも機動隊にも北朝鮮工作員にも追われる筋合いはありません。
『殺スゥゥウウウウ!!』×多数
何人もの雄叫び。
そこから感じる殺意。
そして後ろから迫ってくる熱気…
これは、この学校の生徒と教師の特別混合部隊ですね。
…ったく、なぜ僕がこんな奴らに追われなきゃならないんだ?
まっ、弾丸が飛んでこないだけマシか…
なんせ、僕の右腕には…
「ほら! 早く逃げなさい! 生徒会長命令よ!」
天下無双、史上最年少生徒会長・四谷サキ。
そして、我が左腕には…
「…かーくん、がんばって」
赤髪の白衣天使・四谷アヤ。
この二人(狙撃手)を肩に抱えて、僕は走っているんです♪
人二人を抱えて走れる僕の脚力にはツッコミ厳禁!
だけど、二人を抱えてる分、いつもより速度が落ちてるため、混合部隊から逃げ切れずに、ただ今一周200メートルのトラック、九周目に突入しました。
後ろを向いてるんだから、混合部隊に威嚇射撃でもしてほしいが、頼んだら『一般人には撃たない』と声を合わせて言われた。
…じゃあ、いつも狙われてた僕は超人やサイ〇人の部類に思われてるのか?
いろいろ文句はあるけど、こんな状況で分かったことがある…
まず、アヤさんにファンクラブがあったこと(教師中心)。
たぶん、類い稀なる容姿と無口ゆえのミステリアスな雰囲気が人気の理由だろう。
あと、ここの生徒と教師は、興奮すると猪突猛進で周りが見えなくなるらしい。
さっきから、古典的な挟み撃ちもしないで、ただ集団で追っ掛けてきている。
そして、やっぱりアヤさんの方が腕に当たる感覚が大き…
「…ありがと、うれしい」
「アヤさん、人の心を読むのはやめましょう。プライベートの意味が無くなります。あと、サキは銃口を僕に向けるな」
まあ、身長が同じぐらいで、胸もちゃんとあるのにサキのほうが軽…
「うん…カケル、ほめてくれてありがとね」
「サキ、お前も読心すんな! てか、姉妹揃ってなんでそんなスキル持ってんの!? …あとアヤさん、僕に向けたナイフをしまってください」
『クッソ! 羨ましいぞ伊達!』×いっぱい
「凶器向けられてんのがそんなに羨ましいのか!? なら渡してやるよ!」
僕は走りながら腕を開いて、二人を放す…
「って、二人とも放してくれませんか?」
「イヤよ!」
「…ヤだ」
二人は僕の首にしがみついて、離れてくれない。
二人の力は絞まらない程度だけど、さっきより密着した体…ちょっと、この双璧×2はヤバい。
『…伊達ェェエエエ!! 許さぁぁああああん!!』×ごっそり
「イヤ! この二人は渡すから俺は助け…二人とも、絶対放さないから武器出すな」
首にぶら下がられてる状態だと走りにくいので、最初のように二人を両肩に抱えて、放さないように二人の腰の辺りをしっかり掴む。
………ポッ
「カケル、放したら絶対許さないんだから…」
「かーくん大胆…でも、うれしいよ」
「勘違いすんなぁ!! お前等離したら俺の命を手放すことになんだろが!!」
『伊達ェェエエエエ!!』×もっそり
…さて、なぜ僕がこんな目にあってるかというと、昨日の夜から今までの時間に原因がある。
回想VTR準備OK? …じゃあ、回想行ってみよッ!!
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「はぁ〜」
ため息をはく僕は、髪を縛った黒い紐をほどく。
…髪は縛れるぐらいに切ろ。
僕は疲れた体を引きずり、そんなことを考えながら、自分の家の前まで帰ってきた。
僕の家は、両親が残してくれた数少ないものの一つで、質素ながら機能的な庭付き一戸建の物件だ。
二階建の家は部屋も五、六部屋あるため、学生に部屋を貸して生活費を稼いでたりする。
去年まで大学生三人が住んでたけど、卒業して独り立ちしてった。
そのため、今は広い家に一人寂しく…
ニャァ〜
鳴き声を聞いて、見た足元には黒猫が座っていた。
いちよう言っとくけど、行く先でよく現れるこの黒猫はノラ猫だ。
僕はこいつを飼う気もないし、拒否するつもりもない。
…けど、こいつがいるから寂しくないかな。
僕は家の鍵を開け、黒猫と家に入って…
「かーくん、おかえり」
その声を聞いた時に、僕は急速に眠くなり、そのまま意識を手放した。
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目が覚めた僕は、いつも通りのベットの上で、見慣れた自室の天井と、見慣れた人を見ていた。
「…アヤさん、合鍵でもピッキングでも構いませんが、勝手に家に上がって、帰ってきた人を薬で眠らせるのはやめてください」
僕の寝てる脇には、無表情のアヤさんが座っていた。
「かーくん、そうでもしないと、けがの治療、させてくれない」
「えっ…治療?」
そういわれ、上半身を立たせて刺された自分の左腕を見ると、腕には白い包帯が巻かれていた。
「左腕、四針、二発。右肩、一発。右下腹部、一発。左太股、一発…全部縫って、弾も取った」
…確かに、傷を受けた所すべてを治療したみたいだ。
僕としては、勝手に治されたのは少し心外だった。
「…でも、アヤさん。普通、手術なんて出来な…ッ!?」
僕の質問の言葉は、アヤさんが抱きついてきて押し倒されたことで強制的に途切れた。
「アッ、アヤさん!? どうしたんです!?」
アヤさんの顔は、真横にあるから見えないけど、その体はひどく震えてた。
「…二年前、あの時から、勉強したの」
「えっ…」
顔を上げたアヤさんの頬には、一筋の涙が流れていた。
「かーくん、命懸けで、私達守って、けがする」
涙が溢れるその瞳は、強い意志が含まれていた。
「私、かーくんの、傷ついてる…姿、見たくない。だから…私、かーくんのけが、治す。…だから、保険医に…なって、勉強もした…んだよ」
…アヤさんは元々、凄腕の医師だった。
二年前、いきなり保険医になると聞いた時は、彼女の自身の心の傷のせいだと思ってた…
だけど…違かったんだ…
「アヤさん…ありがとう」
僕は感謝の言葉と共に、アヤさんの涙を指で拭き取る。
そんな僕に、アヤさんはいつもは見せない最上級の笑みを浮かべていた。
…この至近距離でこの笑顔は反則だろ。
犯罪者でも、この笑みの前じゃきっと何も出来なくなる。
い、いかん! 他のことを考えなければいろんな意味でヤバい…
…そういえばアヤさん、いつもと違う…!?
「アヤさん…しゃべり方少し治ったんじゃないですか?」
今日の午後まで、語尾に『の』とか『だよ』とかつけてなかった。
僕の言葉に驚いた顔したアヤさんは、徐々に抱き締める力を強くしながら、うつむいた顔が赤くなっていた。
言っちゃ悪かったか?…
「…くんと……した、から…」
「えっ? なんです?」
そう言った僕に、うつむいてたはずのアヤさんの顔がいきなり近づいて…!?
僕の唇に一瞬、甘く柔らかな温もりがふれる。
いきなりの事に僕は固まってしまい、さっきより顔を真っ赤にしたアヤさんは、僕の耳をおしゃぶりのようにハムハムと甘噛みしていた。
しばらくして、アヤさんが甘噛みをやめて僕から離れようとした時に
「これで、二回目。かーくん、寝てる時に…キス、したの。…だからだよ」
とささやかれた瞬間、心臓の鼓動がピークに達し、僕の意識はバズ・ライトイ〇ーと共に、宇宙の彼方に飛んでいった…
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目が覚めた僕は、いつも通りのベットの上で、見慣れた自室の天井を見ていた。
部屋の小窓からは暖かな朝日が差し込む。
どうやら、昨日は過労のせいで煩悩が僕にアブナイ夢を見せたようだ。
「よかった…簡単な夢オチで」
僕はあり得ない夢から覚めたダルい体を起こし……!?
寝起きボーとしてて気付かなかった…包帯を巻かれていた僕の右腕には…
「……ふぁーくん…んッ…ハムハム…」
床に座りながら器用に寝ているアヤさんが、僕の腕を抱き締めながら、その指をしゃぶってました…
そういや、昔のアヤさんって年上とは思えないほど甘えん坊だったけ…
いつもは大人びてるけど…昔と変わんないな。
…つうか、エロいだろこれ…
それに、そうやってしゃぶられてると、なぜか耳に違和感が…
「あはははは…、あれって夢だよね? …早く学校行こ」
完全に眠気の覚めた僕は、なんとかアヤさんから脱出し、いちよう彼女の朝食と
「教師は遅刻厳禁」と書いた置き手紙を残してから、登校という現実逃避を実行した。
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えっ! 残りのVTRはまだ準備中? 次回まで逃げ切れ!?
作者の横暴だ! 職権濫用だ! トラック二十周目に突入だ馬鹿野郎!!
…と文句は言ったけど、1000ヒット記念もあるし、今回だけは百周でも千周でも走って逃げ切ってやるよ!
けど…
「アヤ姉、どうだったの?」
「かーくんの、朝ご飯、美味しかったよ」
「…今度、食べさせてもらお…って違う!! さっきのって夢オチ!? それとも本当なの!?」
………ポッ
「…教えない」
『クソォォォオオオオオ!!!』×こんもり
あぁ、神よ。1000ヒット記念に、嘘でもいいから…夢オチと言ってくれぇええ!!
神様:〔……さぁ?〕
作者〔1000ヒット記念だ。最終話までは生かしてやろう…〕