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模擬戦(一回戦)

 ラストと対戦相手は場内に立つ。

 相手は当然のように大きい。

 体重は2倍くらい違うんじゃないだろうか。


〔さて、ルミちゃん以外の人はどれくらい強いのかな?〕


 ラスト本人は全く動じる様子はない。


 そして試合開始の合図が鳴る。


〔あー、準備運動くらいしておけばよかった〕


 今更になってそんなこと言うなよ。

 確かにどんなスポーツにだって準備運動は大切だ。

 特に今回のような激しい運動の場合は念入りに身体を暖めておく必要がある。

 やらなかったのは本当に失敗だったかもな。


〔おい、集中しろよ。始まってるぞ〕


 しかし今考えても仕方がない。

 集中力を欠けば命すら危ぶまれる状況だ。

 そんなことを言っている暇はない。

 

 しかも、こう着状態から始まると思ったのに、そうはなってくれなかった。

 相手が先に仕掛けてきたのだ。

 つまり、格下に見られたという事である。

 クオンの言う、オーラがなかったからか?


〔確かに並みの人間とは違うスピードだ。でも……〕


 ラストは拳が眼前に来たところで身体をずらすことで避ける。

 さらに、このつきだされた腕をつかみ、引き寄せる。

 引き寄せたのと反対の手で拳を作り、前に突き出しておく。

 これで、勝手に相手が攻撃を食らってくれる……はずだったのだが。

 これを避けられた。


〔これを避けるのか。一般人ならまず反応できないんだけどね。さすがの反応速度だ。一筋縄ではいかないね〕


 攻撃が当たらなかったからと言って、ラストの口調には焦りが一切見えない。

 想定内という事か。

 おそらく、さっき突きだした拳。

 速度を与えていれば直撃していたはずだ。

 そうしなかったのは相手の力量を見極めるためか?


 互いに攻撃を当てられず、二人は距離を置く。

 相手は避けられたのが想定外だったせいか驚きの表情が見える。

 警戒しているのか仕掛けてこない。


〔それは困るんだよねぇ〕


 今度はラストが動いた。

 

 いや、待て。

 攻撃は避けられるし当てられる状況にあるなら、力量は知れている。

 見極める必要などないはずだ。

 

 ではいったい何のために決着を遅らせているのか?

 

 その疑問を汲み取ったのか、ラストが作戦をちゃんとした考えを頭にイメージしてくれる。

 

〔!? おまえ、そんなことできるのか?〕


〔現に実行中だよ〕


 たしかに今のところできているが。


〔生き死にがかかっているんだからほどほどにしてくれよ〕


〔大丈夫だよ。この試合だけだから〕


 何をもって大丈夫だとするのかは知らないが、集中して取り組んでいるようなので容認する。


 ラストは接近するとラッシュを仕掛ける。

 相手は一撃、二撃目を回避し、ラッシュだと理解してバックジャンプで一気に距離をとる。

 

 連続攻撃は移動しながらだと、溜めができないからな。


 ならばと、今度は高速で移動して距離を詰め、そのスピードとパワーをすべて拳に乗せた攻撃を繰り出す。

 逃げられるのなら張り付きながら攻撃するまでだ。

 手数は減るが、一撃にかける集中力が違う。

 攻撃力も命中率も高くなっている。

 しかし相手はこれすらも身体をひねりながら、かろうじて避ける。

 さすがに反撃する態勢には移れないが。

 

 逃げながら回避。

 追いながら攻撃。


 しばらくこの状態が続いた。

 途中でうまく攻撃を避けられ、攻撃と回避の立場が逆転した瞬間があったが、あっという間に元に戻した。


 タイマーを見ると、残り20秒になっていた。

 

〔そろそろかな〕


 ラストはそうつぶやくと、もう何十回目となる突進攻撃の準備をする。

 相手も同じように回避の準備をした……が。

 攻撃の方向を見極めようとしたその瞬間には、ラストの拳はすでに届いていた。


 相手は通常ではありえないほど吹き飛び、そのまま場外へ転がる。

 つまりラストの勝利である。


 ラストはふぅ、と大きなため息をつく。


〔なんとか勝てたね〕


〔嘘つけ〕


 攻防が激しい接戦は珍しいらしく、ギャラリーは少々注目していた。

 興味の目線を向けられているが、警戒じゃないということはさっきの対戦相手はさほど順位が高くなかったのだろう。

 自分と戦うことになっても大丈夫だと思われている。


 ラストは軽くギャラリーを見まわしてから門寺さんたちの方へ向かう。

 つくと早々にクオンが話しかけてきた。


「やるわねコーキ君。いえ、ラスト君だったかしら?」


「僕はその名前嫌なんだけどね。でもまぁ、賞賛に対してはありがとう。でもやっぱり、ここにいる人たちは本当に強いよ」


「それは当然のことよ。それでも勝っているじゃない? 私はてっきりあのまま決着がつかないんじゃないかと思っていたわ。最後のだけ見事に当たったわね」


「ああ、実はあれにはタネがあって――」


「リズムでしょ?」


 クオンとは別の声がラストの言葉を紡ぐ。

 門寺さんだ。


「あれ? ばれちゃった?」


「あんなに正確にやっていたらね。まぁ、戦っている最中なら疑うこともなかったかもしれないけど」


「二人だけで話さないでよ。気になるじゃない!」


 クオンがしびれを切らしたように言う。

 

 ラストが解説を始めようと口を開くが、門寺さんに止められる。

 確認の意味も込めて自分が解説するという。


「こいつは突進を始めてから相手に到達するまでの時間を一定にしていたのよ。で、そのタイミングを相手に刷り込ませたところで、スピードを変えて直撃させたの。そうでしょ?」


「うん。正解だよ」


 そうなのである。

 ラストは驚くべきことにコンマ一秒単位の体内時計を持っているらしく、全く同じテンポで攻撃していた。


〔補足するなら相手との距離も調整していたかな〕


 そんな並外れた力の情報をもう一つくれた。


「でも、相手が回避に徹してくれるとは限らないわけじゃない?」


 この話に疑問を持ったのはクオン。

 この疑問には代わりに門寺さんが口を開く。


「そうなるように動かしていたんでしょ。最初にラッシュを仕掛けてみたり、いったん逆転させてみたりして、その行為のほうが危険だと思わせていたのよ」


「そこまで見通されていたのか。これは君との戦いは苦しくなりそうだね」


「私もそう思うわ」


 そうしてまた、二人の間で火花が散っていた。


 そのあとラストはひたすらほかの試合を観戦していた。

 いろんな戦闘スタイルがみられるから面白いんだそうな。

 特にランキング上位の試合はかなり注目していた。

 しかし、門寺さんの試合に関しては、また一撃で決着していたが。


 そういえば二回戦になったことで、シード権を持っていたやつも戦い始めた。

 一位の門寺さんがシード権を持っていなかったところをみると、ランダムに決まっていたのかもしれないな。


 ランキング上位者以外にもラストには注目している戦闘員がいた。

 それは俺や門寺さんと同じように小柄な戦闘員だ。

 俺と同じように特殊な体質の可能性があるからだ。

 そうは言って数は多くない。

 教室にいたのは3人くらいだ。

 しかし、武道館内にいるのは一人だけだった。


 その一人は門寺さんより少し身長が高いというくらい。

 160センチくらいか。

 そして何といっても門寺さんと同じく珍しい女性戦闘員だ。

 

 彼女はのことは浮いていたから少々記憶に残っている。

 確か、チームに所属していなかったうちの一人だったはずだ。 


 シード権を持っていたらしく、これが彼女の最初の試合だ。

 相手は当然のように大柄。

 しかも1回戦を勝ち抜いているだけに、順位はそこまで低くないだろう。


 ラストから見ても、彼女からは強そうなオーラが感じられないようだ。

 クオンが俺たちに感じたのと同じように、むしろそれに違和感がある。


 そして試合が始まった。

 そしてそれと同時に俺たちは驚愕した。


 彼女のほうから突っ込んでいったのだ!

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