表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/42

試し撃ち

「メイユイちゃん、いるの?」


 クオンが声を張り上げる。

 ここにいるのはメイユイという名前の人らしい。

 

 どこから出てくるかと、俺も周りを見渡す。

 おそらく銃が入っているのであろう木箱がたくさん並んでいる。

 

「呼んだ?」


 木箱の山から顔を覗かせたのは黒髪で背の高い女性。

 

「メイユイちゃん、早速で悪いんだけど、この子の銃を見繕うことはできないかしら? できれば今日中に」


 クオンとメイユイさんは仲がいいのかな? 

 クオンは友達多そうだし。


「新しい戦闘員?」


 彼女は俺をみて首をかしげる。


「は、はい。空色光輝です。よろしく」


 本当は戦闘員と聞かれてイエスと返したくないんだけどな。

 そういうことを説明すると面倒になるのでやめる。


「それで、できそうかしら?」


「問題ない。見た瞬間にほとんど決まっていた。今からでも用意できる」


 そういって彼女は奥のほうへ行ってしまった。


 なんというか、愛想がないというか、表情が乏しいというか。

 感情がわからない人だな。

 口調も淡々としてるし。


 なんだか緊張してきた。

 だって、銃なんて日本で暮らしてたら絶対に触れることなく終わるし。

 それが俺のものとしてもうすぐやってくるんだから、すごいことだと思う。


「これでどう?」


 考え事をしていたら突然後ろから声をかけられた。

 いつの間にかメイユイさんは後方から来ていたらしい。


 彼女が持ってきたのはやはり木箱。

 あと、ベルトみたいなものと別の箱。


「この箱が銃。これがホルスター。それと弾倉」

 

 彼女はひとつひとつ指を指しながら説明してくれる。

 確か、弾倉は銃弾がたくさん入っているんだよな。

 そのまま銃に装着するもののはず。


 俺は木箱を開けて銃を確認する。

 

「意外と小さいんですね」


 中に入っていたのはなかなか小ぶりなものだった。

 いくらか飾ってあるものと比べてみればわかる。


 恐る恐る手に持ってみると重い。

 金属の塊だもんな。


「あなたの体格にあわせた。大きな銃は反動が大きい。下手をすると骨折する」


 なるほど。

 だから銃を見繕う必要があるのか。


「とりあえずホルスターをつける。やり方はわかる?」


 銃を木箱において今度はホルスターを手に取る。

 ホルスターといえば太ももか腰につけるイメージだったんだが、これはどちらでもないらしい。

 よくわからなかった。


 俺がホルスターを手に取ったままキョトンとしていると、メイユイさんが近づいてくる。


「私がやる。じっとしていて」


「ああ、ありがとうございます、メイユイさん」


 面倒をかけさせてしまって申し訳なくなり、しどろもどろする。


「そんなにかしこまらなくてもいい。私のことはメイユイでいい。私もコーキと呼ぶ」


「……分かった、メイユイ」


 言い直してみるものの、メイユイからは何の反応もない。

 いや、逆に何もないというのは不満がないということなのか。

 少しばかり感情が乏しいというか、難しい人だな。


「それにしても、よくホルスターが用意してあったわね。私のときは発注してもらったのに」


 俺がホルスターをつけてもらっているときに、クオンがこんなことを言う。


「ここにはあなたのような体が大きな人ばかりだから、大きなサイズばかりなくなっていた。標準サイズはまだ在庫がある」


 確かにでかいやつばっかりだったな、教室。


 そう話しているうちに、ホルスターを装着完了した。

 このホルスターは胸の辺りにつけるタイプのものだったらしい。

 普段は服で隠しておくためだとか。

 確かにクオンの制服の中にホルスターが少しだけ見える。

 みんなボタンをしていないと思ったら、すぐに銃を取り出せるようにするためだったのか。


「じゃあ次は撃ってみて」


 メイユイはそう簡単に言うが……


「そんな、いきなり? ちょっと心の準備をさせてほしいというか」


 人の命を簡単に奪ってしまう武器だ。

 そんな簡単に撃てるものじゃない。

 刃物を振り回すほうがまだ安全だと思う。


「引き金を引くだけ。何も難しいことじゃない」


 そういいながら、メイユイは自身の銃を取り出す。

 銃口を横に向け……発砲した!!


 銃声。

 突然の大きな音に俺は身をこわばらせる。

 彼女が撃った方向を見ると弓道に使いそうな円状の的がある。

 

「あら、あんなところに的なんてあったのね。私もしばらく撃っていないからちょっとだけ練習しておこうかしら」


 そう言うとクオンは的の正面に向かい、銃を取り出す。


「ほら、ルミちゃんもいらっしゃい。あなたも長いこと使っていないでしょ?」


「私は別に……」


 門寺さんはあまり乗り気ではなかったが、クオンが無理やり連れて行った。


 二人は銃を構え、3発ほど発砲する。

 クオンは見事なもので、すべて中央付近に当たっている。

 対して門寺さんはすべて的からはずれていた。


「いいのよ。どうせ威嚇射撃にしか使わないんだから」


 責めてもいないのに、言い訳をしてくれた。

 気にしているんだな。

 だからやりたがらなかったんだ。


 3人ともやったんだから、俺も撃たなきゃいけない状況になったな。

 やらないと、門寺さんの面目がたたないし。

 大丈夫。

 おもちゃだと思えばいいんだ。


 俺はさっきの3人のフォームを思い出しながら銃を構える。


「初めてなら、両手で持ったほうがいい」


 俺が片手撃ちの構えをしていると、メイユイがそう指摘する。

 確かに、さっき反動が云々って話をしていたな。

 門寺さんもうまくないなら、見栄を張らずに両手で持てばいいのに。


 俺は素直に両手持ちに切り替えるが、なんだかしっくりこない。

 それは傍から見ても同様だったようで、メイユイが近寄ってきた。


 身長が俺とあまり変わらないメイユイは、俺の後ろに覆いかぶさるようにして俺の両手をつかむ。

 頭は俺の肩の上に乗せる。

 そうやって俺の姿勢を矯正してくれるのだが、ちょっと密着しすぎじゃないか?


「ちょっと! 近すぎよ!」


 門寺さんが注意してくれた。


「問題ない。それにこれが一番教えやすい」


「でも何をされるかわかったものじゃないわ!」


 ああ、俺を信用していないだけか。

 許したとわいえ、警戒はされているわけだな。

 そっち方面でも。


「問題ないと言っている」


 メイユイは同じ言葉を繰り返した。


 ここまで言われると門寺さんも何も言えないらしく、おとなしく引き下がった。


 とりあえず、メイユイの丁寧な指導によって正しい姿勢はなんとなく分かった。

 もう少し練習が必要だが、そろそろ次の授業が始まる時間なので解散となった。


 帰りはさすがに歩いて帰った。

 ランキング1位がこちらにいる限り、ちょっかいを出してくる人間はいないだろうという、クオンの判断だ。

 門寺さんはさっきあしらわれたことで少し機嫌が悪いようだ。

 さっきから一言も話さない。

 そういうわけで、門寺さんを先頭にしてクオンと俺は二人で並んで話す。


「なぁ、クオン。あれって、本物かな?」


 俺の視線の先にあるのは前を歩いているやつが背負っている剣。

 ちょうどモンハンの大剣みたいな。


「ええ、本物よ。確か30キロはあるんじゃなかったかしら?」


「そんなのを振り回すのかよ……」


 俺があきれたようにつぶやくと、クオンはさらに口を開く。


「彼は武装戦闘ではランキング1位よ。腕力もすごいし、剣を持っていなければ俊敏な動きもできるから、彼は徒手格闘でも2位なの」


 つまり門寺さんの次に強いってことか。

 しかも武器を使えば1位なんて。

 門寺さんよりヤバイんじゃないの?


「そういえば、あの剣もメイユイちゃんが用意したものなの」


 でもさっき、あの倉庫には銃しかなかったような。 


「銃以外も扱っているのか?」


 詳しく聞くと、彼女の専門はやはり火薬を使う武器らしい。

 製造、販売を行う会社の一人娘なんだとか。

 しかも、ほかの会社や武器商人と独自のネットワークがあるらしく、要は彼女に頼めば、ナイフからミサイルまで何でも手に入るそうだ。

 

 だから非戦闘員という形で重宝されているんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ