咲良の決意 2
「ダメ! 絶対ダメ! そんな、私のためにそこまでしてくれなくていいよ」
「大丈夫、桜のためだから・・・」
「でも・・・!」
「お願い・・・桜・・・」
◆
あのときの俺は凄く幼く、ただ桜の喜ぶ顔が見たくて、無謀なことを後先考えず、言い出してしまって。
まだ反対していた桜を半ば強引に納得させて、そして俺”咲良”は”桜”として、入学をした。
桜の髪とよく似たウイッグをかぶって髪が伸びるまで待つことにした。
薄くなれない程度に化粧をして、スカートをはいた俺が知人にとってもらった入学式の写真に写っていた。
それを病室で桜と一緒に笑いながら見た。
その一か月後、桜はだいぶ良くなり、自宅療養をすることになった。
それでもまだ、学校に行くことは出来なかった。
◆
俺は今、カフェで渡辺瑞希と一緒にいる。
「まぁ、あんたから電話きたときは吃驚したけどねー」
「悪い・・・」
「いきなり、『俺は妹として入学する』とか言うんだもんっ。何のドラマだよって」
瑞希は俺たちにとっての大親友で、少なくとも特別な人だから、知ってて欲しかった。
それに、多分、瑞希だったら、俺たち双子のことなんて、見ただけで一目瞭然だと思うし。
「まぁ、教えてくれてよかったよ。絶対混乱するからね」
俺はずっと悩んでいたことを瑞希に話せて、少し気が楽になっていた。
今、この瞬間に、桜がどうなっているかなんて、全く考えもしていなかった・・・