第一章 秘密 12
ドドドドォー
突然の地響きが轟く。
転地は揺れ動き、鼓膜は圧力に押され高音を感じ取っていた。
「来るではない、若者よ」
頭の中に直接声が響き渡る。俺は声はおろか、身動き一つ出来ない、まるで金縛にでもなっているかのようであった。
「以前のオンコジーンは、ウイルの死により、完全に封印されておる」
やはり、父は死んだのだ。だが、その命は無駄ではなかった。
「残念だが、オンコジーンは一つではない。もし」
ゆっくりと、神は語る。
「もし、お主が、この世を救いたいと思い、生きたいと望むのであれば、オンコジーンを探すがよい。そして開花させてみよ」
その後はやがて辺りがもとの静けさへと戻った。
「どうしたの、何かあった」
後ろで待つティクスは心配そうにこちらを見ている。どうやら彼女等に、神の声は届いていなかったようだ。
「そう、神がそのようなことを」
ジェネは話を聞いて、納得していたようだ。神の導く道、それがジェネの歩くべき道なのだろう。
「では、ティクスを連れて行きなさい。あなた一人では、何かと不都合があるでしょうから」
ティクスはまだ千里眼の能力を開花させてはいなかったが、彼女がいれば、経済的にも、情報的にも困りはしないということであろう。
命を狙われている俺のお供に、自分の娘を行かせるとは、ジェネは何を考えているのか。いや、彼女には未来が見えている、それも織り込み済みなのかもしれない。
「そういうことだったのか」
俺はポケットに仕舞いこんだ、朝の紙切れを思い出した。そこには、見た事もない模様が書かれていた。だが、それは暗示。神の仕業だったのかもしれない。
「もしかして、これがオンコジーンなのか」
その紙切れをジェネに見せた。
「そう、確かにこのような形。あなたどこでそれを」
決して伝えられてはいけない伝説。それが再び動き出す。
選ばれし、勇者の血を引く者。
狙われし、悪魔の鼓動を馳せる者。
開けてはならない禁断の箱、引き寄せられる美貌の果実。
物語は、新たなる局面へと足を踏み入れる。
時代は、オンコジーンを求めたのだ。