第一章 秘密 11
ジェネは暫く考え込んでいたが、その後、俺を神の居る地へと案内すると言い出した。
「朱里の再後の言葉の真意を確かめに行くしか他に方法はなさそうだわ」
俺とティクスは後部座席に乗り込み、車を走らせた。
「私も早くお母様のように、未来が見える脳力に目覚めたいわ。そうすれば、あなたの事も救えるかもしれないし」
ティクスは優しい女性だった。とてもこの国を背負うような資質ではなさそうだ。だが、それもまた運命なのかもしれない。
「そんな力、ない方がいいよ。自分が自分でいるために」
力があれば、利用されるものとの戦いが始まる。歴史はそう教えてくれいる。父もまた、その犠牲者の一人だったのかもしれない。
三時間ぐらいで、ジェネの家へと着いた。地図には載らない場所でありながら、世界有数の研究所といわれているジェネの城。世界のあらゆる情報がここでは手に入るに違いない。
「さあ、こっちよ」
ジェネの城の地下にそれはある。聖域、いや、墓場なのかもしれないが。
「私も初めてよ」
ジュネの後ろにティクスが続く。
神に一番近い場所と言われている、このカプジと呼ばれる場所がここにあることを、未だ知られてはいない。
「さあ、着いたわ」
真っ暗の階段を、ランタン一つで降り、その先にある洞窟を進むと、そこには薄青色に光る壁のようなものが現れた。粘液質のような、液体のような、不思議な見た事もない物質だった。
「あなたのお父様は、このグリアを超えて神に会われたのよ。でも、その後の事は分からない。死んでしまったはずだけど、私が見えていないだけなのかもしれないし。朱里がオンコジーンの名を口にした以上、ここに何かヒントがあるはずよ」
一度入ったら、二度と出て来れない道。後戻りは出来ない。
父が、その身を投じて守ろうとしたもの。
その血を俺は受け継いでいるのだろう。
母の復習のために、自分自身が生き延びるために。
俺は、その扉を開いた。