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第一章 秘密 9

「もうオンコジーンを手にすることはできないはずです」

 落胆するアデポネだが、彼女の知りうる範囲外の事実があるに違いないないのだ。アデポネの話だと、入ったら出て来れないという試練の洞窟を抜け、ブレインに会って、その人の力を借りればなんとかなるかもしれないというのである。


「でも、普通の人が入れる場所じゃありません」

 過去にたった一人、その道を通った男がいる。それが父だ。ならば俺にも可能性がないわけではない。ただ、父はオンコジーンとやらを手にいれたことにより、力を持ってして通ったというのである。それと同等の力を手に入れれば、俺にも出来るはずだ。


「選ばれし者。というわけかな」

 伝説の戦士と、平和の女神との間に生まれた子。何かの才能に恵まれていても不思議ではない。だが、今の所、何の兆しも見られないが。


「あなたをお守りすることが私の使命なのです。無茶な考えは決して許しません」

 アデポネの口調はきつい。母を失い、その上…という考えに至るのは仕方のないことであろう。


「分かっているよ。無茶はしないと約束する。でも、できることがあるのならば、その道を選択したい。母のためにも」

 怒りと不安のなかに、燃え上がってくる何かがあった。これが血筋というものなのかもしれない。


「お待たせしたわね」

 チャイムも鳴らさずに入ってきたのは、ティクスだった。その後ろには、彼女の母親、エピ=ジェネが続いた。全てを知り、運命を決めてきた女性。ジェネの意図により集められたのであるからには、この先に待つ運命もまた、彼女には見えているのかもしれない。

 

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