6話 LunchTimeにSASUKEを一つ
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
四時間目が終わり、昼を告げる鐘がなる。
昼になれば、やって来るのは飯の時間、二時間目から腹が減っていた俺は、全速力で学食へのスタートを切った。………はずだった………
「っしゃー!いぃぃぃくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉ!!』
場所は体育館。クラスの男子全員がバスケットゴールの前に陣取っていた。
男達は二つのグループに分かれていて、こちらの男達は、円をつくっている、その中心で白崎が叫んでいた。そして、それに合わせて周りの男達も一斉に叫ぶ。
「俺達はぁぁぁぁ?」
『勝ぁぁぁぁぁぁつっ!!』
正直、いつもは息が合わないクラスの野郎共が、ここまでシンクロしてると吐き気がする。
まぁ、かく言う俺も叫んでいるのだから、人の事は言えない。
今や体育館の片隅は、異様な熱気に包まれていた。
「Hey!SA!」
『SA!』
「SU!」
『SU!』
「KE!」
『KE!』
『SASUKE!!ひゅぅぅぅぅぅ!!』
ヒューヒューと喚き始める有象無象。
一体何故こうなった………
遡るは5分前………
=SEISYUN=
「っしゃー昼だー!」
俺は席を勢い良く立ち上がると、教室の扉目指して走り抜ける、しかし、もう少しで扉をくぐるという所で声がかかった。
「黒兎ぉ!!」
白崎に呼び止められた俺は不快感を隠しもせず、渋々といった動作で振り向く。
「あんだよ、俺は今腹が減ってんだ。くだらない用件だったら、貴様の大事な玉を潰「SASUKEやらないか?」OffCourse」
=SEISYUN=
「録でもねぇな………」
本当に録でもなかった。
俺がぼーっとしていたのが気になったらしい、白崎が声をかけてくる。
「おいおい、今からそんなんで大丈夫か~?」
相変わらずキモい笑顔を振り撒いて、話かけてくる暑苦しい男がキモい。
「大丈夫だ、お前よりは活躍出来る」
「はっ!言っとけ!」
俺達はスポーツマンらしく握手を交わし、自軍陣営に戻っていった。まぁ同じチームだが。
さて、ここでSASUKEについて説明したいと思う。
SASUKE………正式名称SurvivalBasketBall、ルール無用の地獄絵図、とにかくボールを唯一のゴールに決めればいいと言う簡単ルール。
このSASUKEは昼休み全部を使い、己の精神と向き合う神聖なスポーツである。というのは、建前で実際はただ単にカッコつけたいだけだったりする。
このSASUKEだが、実は他学級だけでなく、他学年にも人気で、これが意外と盛り上がる。勿論女子の皆様もいるので、いい所を見せたい男子達は、相当張り切る、という訳だ。
実際にこれがきっかけとなって交際を始めた男女もいるしね。
ちなみに俺がカッコつけたい相手は勿論、竹宮さんと副部長さんだ。
「っしぁーっ!!気張って行くぞーっ!!」
『おぉぉぉぉぉぉ!!』
さぁ、試合開始だ………
=SEISYUN=
俺達はポジションにつき準備完了、何時でもスタート出来る。
そして、審判が手を挙げる………
「始めっ!!」
「死ねぇぇぇぃ白崎ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「甘いわ、黒兎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
開始と同時に白崎にとびかかる。
しかし、見抜かれていた様でするりとかわされてしまった。
「やるじゃねぇか白崎ぃ」
「そりぁ、五度目にもなりゃぁなぁ」
見ると他の男子達は、既にボールに群がっていた。
わー、まさに阿鼻叫喚ー
「白崎ぃ、ボールだぁ!!」
「おうよっ!!」
そうして俺達は、戦場に繰り出したのだった。
=SEISYUN=
「酷い目にあった」
五時間目、SASUKEによって身体だけでなく、精神まで疲れ果て、皆一様にぐったりとしていた。
国語教師は、さして気にしたふうもなく、淡々と授業を進めている。
結局勝敗は分からず仕舞いで、うやむやのまま終わってしまったのだった。
「嗚呼、無情」
そう呟き、俺は深い眠りに堕ちていった。