4話 暇潰し遊戯
「あ~、ねみぃ」
はっきりしない頭に活を入れ、授業に集中しようと試みる。しかし、人間そう簡単に生理的欲求に勝てるものではなく、閉じようとしてくる瞼を押し上げる事に精一杯で、結果的に授業に集中する事など出来ていなかった。
「で~あるからして~……」
相も変わらず、この国語教師の喋り方はゆっくりとしていて、子守唄の如くゆったりと右の耳から入り、左の耳へと抜けて行く。
このまま夢の世界へ旅だとうとした時、後ろから微かな音量で声を掛けられた。
「おい、起きてるか?」
「んだよ白崎、俺の睡眠を邪魔すんな。俺は今から心地好い夢の世界に旅立つんだよ、止めてくれるな。」
ちなみに、俺の席は窓側一番端っこの、後ろから二番目の為、多少うるさくしてもばれないのだ。
「今、一応授業中だかんな?ってそんな事より、暇だからなんかして遊ばねーか?」
「ん〜まぁいいけど、なにかってなにすんだよ?」
そう言うと白崎はニヤリとわらい−−
「って、きめぇからニヤニヤすんな」
「ひどっ!笑うことすら許されないのか俺は!」
少し涙目の白崎……うん、きもい。
「いいから何かあんなら、早く言えよ。」
そう言うと白崎はこっちをキッと睨んでくる。
「この鬼!悪魔!ひとでなし!」
「いいからさっさと言わんかいっ!とぉ!」
あっしまった、つい癖で手が出た。
「ぶふぅ!?」
「おぉっと、スマン」
「な、殴ったな……父ちゃんにもなぐ「うぜぇ」」
「ぐはぁ!?」
「ふぅ~いい仕事したわ~」
「お、お願いだから、最後まで、言わせて」
「んなら最初からさっさと言えよ」
俺が白崎にそう言うと、白崎は、はぁとため息をついた。何がそんなに不満なのかね……
「うんまぁ、作文ゲーム的な事をしようと思ってな」
「作文ゲームか……まぁいいんじゃないか」
作文ゲーム、五枚の紙を用意して、それぞれの紙にそれぞれの人が、いつ、どこで、誰と、誰が、何をしたか、を書いて、完成した作文を読み、その内容を楽しもうというゲームである。
「よしっ!んじゃぁ早速人数集めでもすっか」
白崎がそう言い、俺が頷きかけたとき、前の席から声を掛けられた。
「さっきから聞いてりゃ楽しそうな事してんなーお前達、どうせなら俺も混ぜてくれよ」
そういって笑いかけてきた男、この男の名前は荒城亮太郎。長身眼鏡で坊主頭、超絶ヲタクでイケメン……では、ない。ノリがよく、性格も明るいのでクラスの中心として、皆を笑わせている。ちなみに、白崎よりもいじられ属性が高い。
「あーいいぜーやろうやろう。」
「うし、んじゃあ後二人だな。」
そう言って周りを見渡す。
うーん藤田は、遠いしな。
そう考えていると、白崎が声を掛けてきた。
「なぁ竹宮は?」
「竹宮さん?竹宮さんは〜……」
そう言って隣を見る。
「………Zzz〜」
……………
「寝顔がとってもかわえぇです」
「いや、そーゆー事じゃなくて」
もう一度横を見る。
「(コクリコクリ)……Zzz」
「………」
「……んんぅ」
「かわえぇです、萌え死にしそうです」
「いやうん、気持ちは、解るけど」
もう一度横を見る、どうやら目が覚めてぼんやりしているらしい。
「……ん」
「………」
「……ふわぁ」
竹宮さんと目が合う。
「………」
「………」
「えと……」
「はい?」
「み、見ました?」
「それはもう、天使のようでしたよ?お嬢さん」
「………」
「………」
「ふ、ふわあぁぁぁぁ--!!」
おっと危ない、慌てて竹宮さんの口を塞ぐ。
「しー!今は授業中です」
「(コクコク)」
うん、相変わらず可愛いね竹宮さん。
この竹宮さんこと竹宮凪さんは、このクラスの委員長であり、クラス内きっての癒し系だ。セミロングのふわふわヘアーと、いつもにっこりしているしっかり者で、副部長さんと似た雰囲気を持っている。身長は平均より低く、まるで等身大の人形のようだ。
「ううう……は、恥ずかしいです」
「あははは……、まぁそれは置いといて、竹宮さんも作文ゲームやらない?」
竹宮さんは落ち着いたらしく、首を傾げている。うんかわえぇ。
「作文ゲーム?うーん、でも今授業中ですよ?」
「まぁまぁそんな事言わずにさぁ、竹宮が参加した方が絶対楽しいって。な?」
「俺的にも竹宮さんが参加してくれる方がたのしいかな」
テンション的な問題でね。
「そ、そうですか?うーん、でも……」
竹宮さんが困った顔をする。
うぅむ、余り彼女を困らせることはしたくないが……仕方ない、これも俺のテンションの為だ!ゴメン竹宮さん。
「そうかー、それなら仕方がない、さっきの竹宮さんの(かわえぇ)寝顔を公開するしかないのか〜」
「ええ!ね、寝顔ですか!い、いつのまに……や、やめてくださいー」
いきなり真っ赤になったと思ったら、次は、慌てだす。
表情がコロコロとかわるその姿は、小動物の様で、とても愛らしい。思わずお持ち帰りしたくなるほどだ。
「えー、でもなぁ……竹宮さん、参加してくんないしなー」
「さ、参加しますー参加しますよもぅ」
膨れてる竹宮さんも可愛いですよ。
「よし、これで四人だな」
「あと一人か」
「うーん……誰かいないかね」
「もうっ」
と、言いつつも全員で白崎の隣の席を凝視する。
「……………」
「「「「じーーーー」」」」
「……………」
チラッ
「「「「じーーーー」」」」
「!!!」
「「「「じーーーー」」」」
「…………な、何?」
「いやなに」
「これといった」
「用事では」
「ないですけど」
「う、うん」
「「「「作文ゲーム………やらないか?」」」」
キランッ☆
「い、良いけど……」
どうやらシンクロし過ぎて若干引かれているようだ。
白崎の隣の席の人こと仲村巳琴君。美人系の容姿で、前髪をバックにした腰まで届く茶色がかったロングストレートと眼鏡、おでこが特徴的な女性だ。ちなみにチャームポイントは、おでこらしい。
=SEISYUN=
「よし、五人そろったな」
「んじゃ、始めますか」
「順番どうすんだ?」
「ジャンケンでいいんじゃないですか?」
「そうだねー」
小道具の準備は発案者である白崎が用意し、ジャンケンによって準備を進めた。
「「「「「ジャーンケーン!」」」」」
ここで一つ豆知識をば。
ジャンケンには、必勝方なるものがあるらしい。人の心理的に勝ちたい時、人はチョキを出す傾向が高いらしい。つまり裏を返せばグーを出せば勝てるということだ。
by黒兎(まぁ白崎からの受け売りだか………)
「っぱあぁぁぁぁ!」
↑白崎。
「ぐうぅぅぅぅぅ!」
↑俺。
「ぱあぁぁぁぁぁ!」
↑荒城。
「ぱぁ」
↑竹宮さん。
「パー」
↑仲村君
「てめぇ白崎いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!騙しやがったなこの野郎ぉぉぉぉぉぉ!!」
豆知識とか恥ずい事しちまったじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!
「うるせぇぇぇぇぇぇ!騙される方が悪いんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」
あーだこーだあーだこーだ
「おい、白崎、斬愛うるせーぞ、お前達廊下に−−」
「「すいませんしたっーー!!」」
くっ、白崎め後で覚悟しとけよ……
=SEISYUN=
「んじゃぁ、順番はこれで」
「ちっ、まぁ仕方ねぇ」
その後何回かジャンケンを行い、順番が決まった。以下の通りである。
いつ……仲村君
どこで…荒城
だれと…俺
だれが…白崎
何をした…竹宮さん
ふっふっふっ、覚悟しろよ白崎……地獄を見せてやる。
=SEISYUN=
以下それぞれの視点でお楽しみください。
巳琴Side
うーん……成り行きで参加しちゃったけど、今授業中だしなー……まっ、適当でいいか。
亮太郎Side
どこで、かぁ……まぁ、あいつら(白崎&斬愛)のことだから悲惨な事になるんだろうなぁ……ま、今回は斬愛の方に一枚噛んでみるか。
黒兎Side
くっふふふふふーふーっふっふっ……白崎ぃ地獄ってやつを見せてやんよぉ
雄太Side
黒兎の事だきっと危ない事を考えているに違いない……何とか回避せねば。いやしかし、もしかしたら、素直に楽しもうとか考えているかもしれん!うーん迷う……
凪Side
今授業中なんだけどなぁ……斬愛君も強引だし、はぁ……
まぁやるからには楽しもうかな。
=SEISYUN=
「よっし、皆書けたか?」
クックック、のんびりしていられるのも今のうちだ……
「ふっふっふ、もちろんさ!」
「俺も終わったわ」
「ん、私も」
「私も終わりました」
「じゃ皆それぞれ読み上げてくれ」
遂にこの時が来たっ!覚悟しろ白崎!
「えーでは『昨日』」
む?存外普通だな。
「次は『この校舎のトイレで』な」
おお、なかなかに物騒な単語がでてきたな……
いじめか?タバコか?ふふふこれで白崎を地獄へ落とす布石の一つが出来た。
「よしじゃあ次は俺だな、俺は『白崎と』だ」
「おいぃぃぃぃぃ!!」
「次は?」
「シカト!?」
「はよせい」
「ぐっ……まぁいい俺は『黒兎が』だ!」
「てめぇもかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
睨み合いで牽制し合う
「「「(似た者同士だなぁ)」」」
「あのぉ……次、言っちゃていいですか?」
「「あ、はい、どうぞお願いします」」
「では」
ふふふ、これで貴様も終わりだな白崎。
そして、心なしか頬を朱くした竹宮さんが最後の一言をいい放った。
「『キスをした』です////」
「「「「「………………………」」」」」
「「おえぇぇぇぇぇぇ!!」」
「うるさいぞお前達」
リアル!リアルだっ!状況がこの上なくリアルだっ!ゆえにキモい!
「「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「おい」
もう叫ぶしかねぇだろこれ!!クラスメイトが驚いた顔でこっち見てるけどこの際無視ぃ!
「ありえねぇ!」
「俺のセリフだっ!」
「……………」
白崎と顔を合わせるのが嫌になり隣に目をむける。
すると青い顔した竹宮さんが………どったの?え?うしろ?
「………………(怒)」
あら?なして後ろに赤鬼さんがいるのん?
あらら?隣の白崎さん、なしてそんなに青い顔してんのん?
「………言い訳は?」
「「ついカッとなってやった。
反省はしていない」」
「………廊下」
「「はい」」
あ、ハモった……