13話 変体人形
「はわ〜美人さんです〜。はふぅ」
「うむ、さすがは我が夫。うむうむ」
「に、兄さん……」
「あっはっはっは」
「…………………」
何故こうなったのだろう。何がいけなかった?何処で間違えた?いや、そもそも何故こんな訳の分からない事に巻き込まれた?何故−−
俺は女装などしているんだ!?
遡る事1時間前。
「と言う訳で今日は全員来てんのな」
部長がいつもの様に眠そうな目を半開きにして、そう言った。
珍しい事に今日は、白崎以外の部員全員が既に部室に集まっていた。白崎もすぐにくるとの事だ。
「それで?今日は何をするんですか?」
相変わらず、空気を読めない事に定評のある斬愛さんちの恋歌さんが、いつもの如く爆弾を投下してくれやがりました。
「「「…………」」」
そして一斉に黙りこくる部員一同。
馬鹿だな恋歌、やる事なんざ最初から無いんだよ。無いからこうして集まっちゃったんだろ?
流石の恋歌も失言だった事に気付いた様で、直ぐに口を閉じる。
今更遅いけどね……
そんな中、不意に誰かの携帯が鳴り出した。
「あら〜?何でしょうか〜?」
どうやら着信が入ったのは副部長さんの携帯だったらしく、鞄からシンプルなフォルムの白い携帯を取り出す。
何もやる事が無く、暇だった俺達は、携帯での会話を始めた副部長さんをじっと見ていた。
それから副部長さんは、三分位通話をした後、おもむろにこう言った。
「今から女装セットが届くそうです〜」
その言葉を聞いた部員達の目が、一斉にこちらに向けられる。怖っ!!
「な、何です……か?」
とか言ってみるものの、何の事なのかぐらい安易に予想がついた。なにせ昨日、猫先輩がいらん事を言ったからだ『ウサギは女装似合いそうだの』って。
つまり俺に女装しろと?マジ無理。
だが俺のそんな心の叫びなど露知らず、どんどん皆の顔が怖くなっていく!何でそんな口の端吊り上がってんの!?
「なに、一度やってみたかったのじゃよ」
いやいや、やってみたかったじゃねぇよ!何考えてんだこのロリ猫は!
「大丈夫です〜、きっと可愛いですから〜」
そういう問題じゃないんですよ、副部長さん!
「わ、私は別にそういうんじゃないですよ?でもやっぱりここは空気を読んだほうがいいかなと……」
いらん所で空気読んでんじゃねぇよ、恋歌ぁ!
「あっはっはっは」
笑うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
かくして……
必死に抵抗するも虚しく、着々と女装させられていく斬愛黒兎がそこにはいた。
「はわ〜美人さんです〜。はふぅ」
「うむ、さすがは我が夫。うむうむ」
「に、兄さん……」
「あっはっはっは」
「…………………」
何故こうなったのだろう。何がいけなかった?何処で間違えた?いや、そもそも何故こんな訳の分からない事に巻き込まれた?何故--
俺は女装などしているんだ!?
いやうん。分かってるさ、動機も何もかも。でもね、納得出来ねぇぇぇぇぇぇ!!
くぅ~ は、恥ずかしいっ! 何かやたら凝視されてるし! しかも副部長さんの目が尋常じゃない事になってるー!
少し(というか大分)危ない目をした副部長さんから視線を外し、隣にいる恋歌に視線を移す……
「ぶつぶつ……かわいい……ぶつぶつ」
そこには、顔を紅潮させ、うわごとのように何事かを呟く我が妹の姿があった。
うん、見なかった事にしよう。
周りからの視線に堪えられなくなり、少し俯く。
「かわえぇのぅ」
くそっ!ロリ猫め!
それからしばらくの間、このおぞましい羞恥プレイは続き、終わる頃には心身ともに尽き果てていた。
「ふむ、これなら問題なさそうじゃの」
ロリ猫が何か言ってるがシカト。もう、死にたい……
そんな事を考えていると、部室のドアが開き白崎があらわれた。
……一先ずこの鬱の共感者を増やすか。
俺は立ち上がり、女装セットを持って白崎の元へ近づいていったのだった。
お、遅くなりました……
お許しを~(泣)
次回も遅くなりそうです
お許しを~(号泣)