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続話 正義罪人




多少グロが入ります





 暗くなった会場内では、わーわーきゃーきゃーと悲鳴が聞こえてくる。

 まずいな、まさか電力ダウンでくるとは……… そうなると相手にもプロがいるって事か。今はそれより依頼主と護衛対象の安全確保が先決か。

 そう考えた俺は、悲鳴の響く会場内で白崎に声を掛ける。


「田村!」


 しかし、そう叫んだ所で不意に電気が回復する。


「なんだ?」


 隣をみると、白崎も何が起こったのか分からないといった表情をしていた。

 何だ?何がおこったんだ?

 だがその疑問はすぐに晴れた。


「おいこらぁ!村越出せやごらぁ!」


 その言葉に、ごらぁごらぁ、と周りのヤクザが続く。

 あらー?極道様御一行招待ー?

 うん、あれ多分50人はいるぞ。

 そんな事を考えながら隣をみると、流石の白崎も驚いていた。しかし、その顔をすぐに直し、ニヤリと笑う。


「黒兎。お前どれくらいだ?」


 その質問に少し考えてから、まぁ停電の時間帯から考えて10分くらいかな、と答える。そして右手に持っているナイフを弄る。ちなみにこのナイフはテーブルに置いてあった物を拝借したのだ。


「んじゃぁ一人でもいいよな」


「別に最初からお前なぞ居なくても一人で出来るわ」


 そう言ってナイフを白崎に向けると、白崎は苦笑した。

 そうしてから別々に行動を始める。ひとまず俺は依頼主の安全確保だな。




 少し俺と白崎についての話をしよう。

 Dランクに参加する猫部員は戦闘のプロである事が多い。そして俺と白崎はコンビで動いている。コンビ名は白黒矛盾(モノクロパラドックス)。うん、言いたい事はわかる。まぁ色々あったのだ色々………

 白崎はこの業界でもかなり有名な奴だ。二丁の銀製自動拳銃を使い、戦闘は勿論、交渉や戦略、リーダーシップもある。

 んで俺はプロでも無ければ有名でもない、ただの一般人……だった。

 とある一件から俺を知る同業者は、俺の事を『狂った殺人鬼』なんて呼ぶようになった。



 幸い藤代氏はすぐに見つかった。会場内はヤクザの怒号と招待客の悲鳴で満たされていたが、藤代氏は勇敢にも周りの招待客へ避難を呼び掛けていた。


「藤代様」


 そんな藤代氏に声をかける。すると藤代氏がこっちに振り返り焦った様な表情で、村越は?と問いかけててきた。ひとまず村越氏には田村を付けたので大丈夫と答えて、藤代氏に避難を仰ぐ。


「あ、ああ、そう「おい!ありぁ、あん時の社長じゃねぇか!?」なっ!」


 藤代氏が避難しようとした時、どうやらヤクザも藤代氏の事を知っていた様で、数人のヤクザがこちらへ向かってくる。


「ちっ!」


 舌打ちを一つし、藤代氏の前に立つ。そうしてヤクザ達と対面し、持っていたナイフを握りしめる。


「邪魔だ餓鬼ぃ!」


 ヤクザも折りたたみナイフや日本刀、自動拳銃を取り出す。

 そんな光景をみながら、吊り上がる口の端を抑える。

 ふむ、数は……11人か……

 そう考えていると、ヤクザの一人がナイフを持って襲い掛かってきた。


「死ねぇ!」


 俺の身体を穿つために振るわれたナイフを難無く左に避け、持っていたナイフをヤクザAの首へ投擲する。


「かひっ………!」


 ナイフは見事にヤクザAの喉へ刺さった。そうして気が逸れたヤクザAの手から折りたたみナイフを奪い、それをヤクザAの目に投擲する。


「あがはっ!!」


 ナイフが目に刺さり苦悶の表情をする。叫ぼうとするも、喉に刺さったナイフのせいで口からは血が吐き出されるだけだった。

 一つ一つの動作におよそ無駄がなく、むしろ美しくも見える。投げたナイフは狙った場所に的確に、そして深く刺さっている事からそれなりに威力がある事もわかる。もはや黒兎の技能は異常だ。

 右目からは深紅の涙を流し、口からはびちゃびちゃとおびただしい量の血を吐き出す。そんな血だらけの物体を蹴り倒し、喉からナイフを抜く。


 ずちゅ


 ナイフを引き抜こうとすると、肉が纏わり付きいびつな音をかなで、喉からは真っ赤な血がゴボっゴボっと吹き出す。辺りは血の臭いで充満していった。

 血まみれの物体はしばらく血を吐き出し、ぴくっ、ぴくっ、と痙攣していたが、やがてそれも無くなり、ただの冷たい肉の塊になった。

 後ろの藤代氏から息を呑む音が聞こえてくる。

今まで勢いのあった残りのヤクザも、その場に縫い付けられた様に立ち止まり、目を見開いてこちらを見ている。


 この恐るべき殺人技能こそが、俺が『狂った殺人鬼』と呼ばれる由縁だ。

 俺の先祖には恐ろしい殺人鬼がいたらしい。そして俺はその恐ろしい殺人鬼から、天性の殺人技能を受け継いでいる。だが最初からこんなとんでも才能をもっていた訳じゃない。一年前の春先にちょっとした事件があり、その時に俺は狂った。俺のこの才能には制限があり、刃物を持っている時限定だ、しかも持っている時間も関係があり、持っている時間が長ければ長い程、人間離れしていく。そして、刃物を手放したとしてもすぐに元に戻る訳では無く、一定の時間冷まさなければいけない。

 当時は手に入れた力に酔いしれて、半ば無意識に殺人をした。しかし今ではほぼ完全に制御出来る様になっていた。

 そんな俺は血塗れのナイフを持ち、ヤクザ達に向き直る。


「さて、どうする?」


 無意識のうちに笑みがこぼれた。








=SEISYUN=








 依頼主を黒兎に任せ、護衛対象の元へ走る。途中何度かヤクザに襲われそうになったが、愛用の銀製自動拳銃−−聖母(マリア)で脚を撃ち抜き、追跡出来ないようにしてやった。

 俺の愛用している聖母は、銃身が長方形の形で、他の銃に比べて少し長い。正に名前の通り綺麗な銀色に輝く美しいフォルムをもった自動拳銃だ。しかも二丁。

 そうして走っていると、ようやく護衛対象の部屋が見えてきた。

 今回の相手のなかにはその道のプロがいる可能性が高い。それは先の停電でもわかる事だ、少なくともこんな都合のいい停電は自然にはないだろう。

 そうなると会場に乗り込んできたヤクザは囮の可能性が高い、何せ今回の本命は護衛対象だからな。

 そう考えながら護衛対象の部屋の前まで来ると、なかからガラスの割れた音が聞こえてくる。

 ドアを蹴破り、なかに入るのと同時に声を張る。


「Freeze!!」


 なかでは黒いコートを着た一人の男が、護衛対象に自動拳銃を向けていた。


「ちっ、ガードか」


 コートの男は俺を見るなり、その手に持っていた銃の引き金を引こうとする。しかし、相手が発砲する前にこちらが、相手の銃を撃ちぬいた。


「なっ!」


 どうにか弾は護衛対象から逸れ、床を穿つだけにとどまった。

 ふぅ〜冷や冷やさせてくれるね!心臓止まるかと思ったよ!

 流れる冷や汗を拭いもせず、相手に向かって一直線に走り、手に持った聖母で相手の頭部を殴りつける。


「ふんっ!」


「がぁっ!」


弾が外れた事に驚いていたコートの男は、俺の接近に対応出来ずにもろにくらった。そうして態勢を崩した男にタックルを仕掛け、倒れた相手を床に押さえこむ。


「はぁ、はぁ……ったく、俺は黒兎みてーに身軽じゃないんだよ」


 そう愚痴りながら、聖母の銃口を男の後頭部にあてる。すると男が身震いをした。


「こ、殺すのか?」


 そうかすれた声で問いかけてくる男に、そうだ、と平然を装って告げる。

 もしかしたらこの男は新人かもしれない。


「悪いな。これも仕事だ。」


 そう言うと、男の息をのむ男が聞こえた。

 俺だって無駄な殺人はしたくない。だが仕方ないのだ、これも仕事だから。

猫部のエージェントは、殺し屋を殺さなくてはいけない、それが例え同じ猫部のエージェントだとしても………

 引き金に指をかける。


「許してくれ………聖母(マリア)



 パァン!!



 渇いた音が鳴り響いた。








=SEISYUN=








 その後、死体の処理や後処理は猫部関係のサポート班が行い、残ったヤクザに関しては警察に連行して貰った。

 パーティーは中止になったが、参加者に怪我等はなく、護衛対象も無事だった。どうやら白崎が頑張ってくれたらしい。

 この事件は国によって隠蔽され、乗り込んできたヤクザの組は壊滅したらしい。




 そして翌日。


「君達のおかげて本当に助かった。ありがとう」


 そう言って藤代氏が頭を下げる。

 それに対して、俺達はいつも通りの言葉を返す。


「そう思うのでしたなら」


「これからも」


「「どうぞ御贔屓に」」







はい、次も遅くなりそうです。

…………………


はい、すいません(泣)





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