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「犯人は、おそらくあの二人のどちらかだろう……」

 長澤さんが帰った後、御手洗さんはソファに座り、チーズケーキの残りを食べながらそう言った。

「でも、どちらが犯人でしょう?」

 私は紅茶を啜った後、そう彼に訊いた。

「まだどちらが犯人かは分からない。それと、もう一つ分からないことがある……」

「分からないこと?」

「うん。事件当日、堺という男が殺される前、彼は長澤さんとドライブデートをしていた。その後、彼女のスマホに大河内さんから電話があって堺さんの浮気話を聞いた後、長澤さんはすぐに車を降りた……と言っていたね?」

「はい」

「その後のことだよ」

「その後?」

「堺さんは自分の車の中で殺害されていたんだ。そして、彼の車は自宅アパートの駐車場にあった……」

 ああ、そうかと私は思い出す。

「つまり、犯人が()()()()()()()()()()ってことですか?」

 私が御手洗さんにそう訊くと、「うん、そうに違いない!」と彼は首を縦に振る。

「じゃあ、それがあの二人のどっちかってことですか?」

「そうなるね。二人とも()()()()()を持っているから、それができるという訳だ」

「なるほど! だとすると、長澤さんが嘘を吐いていることも考えられますね」

「うん。もしかすると、彼女は車を降りなかった……。いや、一度降りて彼を殺害し、そのまま車を彼の自宅へ走らせた。そして、アパートに到着した後、車を駐車場に停めた。それから、彼女は車を降りて歩くか電車に乗って自宅へ戻った……」

 御手洗さんは淡々とそう説明する。

「それが長澤さんの場合だが、大河内さんにも同じようなことが可能だよ」

 御手洗さんがにやりと笑って言う。

「と言うと?」

「僕の推理だけどね。ドライブ中、長澤さんのスマホに電話が掛かってきて、堺さんが浮気をしていたと伝えられた彼女は、すぐに家まで送ってと彼に言った。不思議に思った堺さんは、その電話が誰からで、どんな内容かをすぐに彼女に聞いたんだろう。それが大河内さんからで、しかも自分の浮気をばらされたことが分かった彼は怒りに満ちた。彼は長澤さんを家へ送った後、そのまま大河内さんの家へ向かった。彼女に殺意が向いたからだ。数分後、彼女の家に到着した。大河内さんは彼が来たことにびっくりしたと思う。そして、堺さんは彼女を殺害しようとした。襲われそうになった彼女はキッチンから包丁を取り、抵抗をした……」

「気が付いたら、彼女は彼を殺していたと……」

 私はぽつりと言った。

「ああ」と、御手洗さんが頷く。「焦った彼女は、彼をどこかへ隠すことにした。外へ出ると、彼の車が停まっていることに気付いた。その車をどうにかしないといけないと思った彼女は、すぐに彼をその車に乗せてそのまま彼のアパートに車を戻すことを考えた。そしてすぐに車を発進させた。彼の自宅へ到着し、車を駐車場に停め、彼女はそこから離れていった……」

「なるほど」

 その後だろう。長澤さんから彼と連絡が繋がらないと彼女に電話があったのは。彼女からの連絡を受けて、大河内さんはこの探偵事務所に押し掛けた。

「つまり、二人には犯行が可能だったという訳ですね」

「そう」

「一体、どちらが犯人なんでしょう?」

 私がそう訊ねると、「さあ? どちらかだと分かる明確な証拠があればね……」と、御手洗さんはポツリと呟いた。

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