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その翌日。六時を回った頃、探偵事務所に一人の女性がやって来た。長澤さんである。
「こんばんは……」と、彼女は挨拶する。
「あ、こんばんは! こちらへどうぞ」
私も彼女に挨拶し、ソファに座るように勧める。彼女はソファに座る。
「御手洗さん、長澤さんがお見えです」
それから、私は奥の部屋にいる彼を呼んだ。
「今、お茶のご用意をしますね」
私はそう言って、キッチンへ向かう。
「ありがとうございます」
少しして奥の部屋の扉が開き、御手洗さんが出てきた。
「こんばんは。突然お呼びしてすみません……」
そう言って、御手洗さんは彼女の対面のソファに腰掛けた。
「いえ……」
「ええっと……あのですね……。事件のことでちょっと気になったことがありまして……」
御手洗さんはそう言って、話を切り出す。
「お聞きしたいのは、あなたのアリバイについてです」
「アリバイ?」
長澤さんは小首を傾げた。
「アリバイと言っても、あなたがここ数日間、何をされていたかについてです。昨日、お友達の大河内さんにお話を聞きましたので」
私は二人の所へ行き、出来上がった紅茶とチーズケーキを二人の前に置いた。それから、私は探偵の横に座った。
「はい……」と、彼女は頷く。
「事件が起きた日のこと。あなたは恋人の堺さんとドライブデートをしていたそうですね」と、御手洗さんは話す。
「そうです」
「そのデート中に、大河内さんから電話があったそうですね。その時、言われたことは覚えていますか?」
「覚えてます」
「なんて言われたんです?」
「陽介が他の女の人と会っていたって……」
彼女はぽつりと言った。
「なるほど。どうやら、そのようだったみたいですね……。それで、あなたは彼の浮気を知った」
「ええ」
「それから、すぐに自宅まで送ってほしい。そう彼に言ったそうですね」
「はい」
「ふむ。そこで、大河内さんとは電話を切ったそうですが、その後はどうなったんです?」
御手洗さんは訊く。
「その後は……彼にそのまま真っすぐ家まで送ってもらいました」と、彼女は言う。
「なるほど。その後、彼は帰りましたか?」
「はい。すぐに車を走らせて行きました」
「そうですか」
少しして、彼女が口を開く。
「その後、私、彼とちゃんと話していないことを思い出して、話をしようと思って彼に電話をしたんです。だけど、繋がらなくて……。二回、三回って電話をしても全然繋がらなかったんです。あれ? おかしいって思って。それからすぐにもしかしたら、莉歩の所にでもいるのかなと思って、彼女に電話しました。そうしたら、莉歩も彼と一緒じゃなかったみたいで……」
「なるほど……そうですか」と、御手洗さんは頷く。
「ところで、長澤さんは自動車免許を持っていますか?」
唐突に、御手洗さんは彼女にそんな質問をした。
「え? ああ、持っていますけど」と、彼女は答える。
「そうですか。因みに、大河内さんが免許を持っているかとかって、ご存知ですか?」
それから、御手洗さんがそう訊いた。
「確か莉歩も持っていたと思います……」と、彼女は言う。
「そうですか。分かりました」




