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翌日、午前七時半に私は起床した。今日はお休みである。休みだが、予定があった。
朝食を食べて着替えた後、メイクやヘアセットをする。
支度を終えて、私は家を出た。午前九時前である。
最寄りの駅まで歩き、私は電車で横浜駅まで向かった。駅に着いたのは、九時半頃。そこから五分程歩いて目的の喫茶店に着いた。私はそのお店に入った。
「いらっしゃいませ」と、若い女性の店員が挨拶する。「一名様ですか?」
それからすぐに私は奥のテーブルに座る御手洗さんを見つけた。
「中に連れが」と私は言って、彼のいるテーブルまで歩く。
「御手洗さん、おはようございます」
私は彼に声を掛ける。
「おはよう」
彼は欠伸をしながら言った。
私は彼の正面に座る。彼はサンドイッチを食べながらコーヒーを啜っていた。私はメニューを見て、コーヒーを注文した。
「お休みなのに、すみません」
まず私は彼にそう謝った。
「いやいや、君こそ、休みなのに付き合わせて悪いね……」と、彼も言う。
「私が昨日、御手洗さんに無理を言ったんですから、私の方が悪いです」
「まあいいさ。それより、今日の作戦会議だが、これからどう動こうか?」と、彼が口火を切る。
「えーっと……」
私は言って考える。事件について捜査するとは言ったが、何をどのように調べていくかを私は全く考えていなかった。そもそも私たちは警察官ではないからだ。
「うーんと、そうですね……」
私が言い淀んでいると、「ん? 特に考えてなかった?」と、彼が言った。
「はい……」と、私は小さな声で返事する。
「そうか……」
彼はコーヒーを啜る。
ややあって、私のコーヒーがやって来た。私もコーヒーを啜ろうとしたが、まだ熱かった。
「そうだな。まずは事件について整理してみよう」と、彼は言った。
それから、彼は事件の概要を語る。
「事件は昨日の午後五時頃。僕は堺陽介の自宅アパートを訪れたが、彼はいなかった。だから今度、駐車場を調べた。いるかどうかは分からないが、一応念のためにと思い、そこも見た。すると、そこに一人の男性が車に乗っているのを発見した」
それから、その男が写真で見た人物に似ていたことから彼が堺陽介だと判断し、私に電話を掛けたと御手洗さんは話した。
彼が事務所に戻ってきた後、私は彼の撮った写真を見せてもらった。大河内さんから見せてもらった写真の人物に似ているなと思った。その後、依頼人の大河内さんらにも確認してもらい、やはり彼が「堺陽介」であることが判明した。
「死亡推定時刻などは警察じゃないので分からないが、犯行はおそらくその日の午前中か午後だろう。あるいは、前日の夜かもしれない……」
「犯人はどうやって堺さんを殺害したのでしょう?」
私は疑問を口にする。
「僕もちゃんと死体を見たわけじゃないから、何とも言えないよ。多分、何か凶器で殺害されたか、あるいは絞殺か。毒物による殺害ということも考えられる」と、彼は言う。
「なるほど……」と、私は頷く。
「それと、もう一つ気になるのは……」と、彼が再び口を開いた。「その男がどうして車内にいたのか、ということだ」
「どうして?」と、私は小首を傾げる。
「そう。まあ、単に車に乗っていたのであれば、仕事のためであったり、買い物や食事へ行くためだったりということだろう。あるいは――」
「真璃さんとデートへ行くため、とか」
私が思いついたことを言うと、「そう」と、彼は頷いた。「その可能性もある」
「なるほど」と、私は納得して言う。
「それともう一つ。犯人に乗せられたという可能性もある」
「犯人に? 乗せられた?」
「ああ。犯人は彼を自宅かどこかで殺害した後、遺体を車まで運んだ」
「なるほど……。それじゃあ、犯人は彼を車に運んだ後、そのまま逃げたということでしょうか?」
「とういう風にも考えられる」
「そっか……」
確かにそうとも考えられる。だとすると、犯人は――「依頼人の女性と恋人の女性の二人が怪しく感じますね」
私がそう言うと、「うむ」と、彼は頷いた。
「それじゃあ、二人に話を聞きに行きましょうか?」
それから私がそう提案すると、彼は首を縦に振った。
私は早速、大河内さんに電話を掛けた。
「もしもし」
『はい、もしもし……』
「あ、大河内さんですか。私、御手洗探偵事務所の岩尾です」
『はい……何か?』
「一つお話しし忘れたことがあって……。本日か明日以降で少しだけお時間作れませんか?」
私がそう訊くと、彼女は『ええっと……』と考えた後、「明日の午後四時以降なら……」と答えた。
「すみません。ありがとうございます。では、明日の午後四時に。探偵事務所でお会いできますか?」
『はい、大丈夫です』
「分かりました。では、明日、よろしくお願いします」




