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 翌日、私はいつも通り出勤すると、そこにもう御手洗さんの姿はあった。いつもならゆっくりなのに、今日は珍しく早いなあと私は思った。

「おはようございます」

 私が挨拶すると、彼はデスクの上の電話機で誰かと話しているところだった。

 彼は私に気付いてペコリとする。しばらくして、彼は電話を切った。

「あ、おはよう」

 それから、彼は私を見て言った。

「誰と話していたんです?」

 私がそう訊くと、「大河内さんだよ」と、彼は言った。

「大河内さん? どうしてです?」

()()()()()()()()()()んだ!」

 御手洗さんはそう言ってにやりと笑う。

「え? 本当ですか!?」

 私が驚くと、「ああ。これから彼女と会って来る」と、彼は言った。

「これから……ですか。え? どこで?」

「駅の近くの喫茶店だよ」

「私も行っていいですか?」

 慌てて私がそう訊くと、彼は首を縦に振った。

 一時間後に、私は彼と駅の近くの喫茶店で大河内さんと待ち合わせた。


「お待たせしてすみません……」

 大河内さんがやって来るなりそう言った。

「いえ、こちらこそお忙しい中、お呼び出ししてすみませんね」

 御手洗さんは笑顔で言う。

 彼女は私たちの向かいの席に座った。それから、御手洗さんは店員を呼ぶ。

「チョコレートケーキを一つとコーヒーを二つ。あと……大河内さんは何か飲まれますか?」

 彼は彼女にそう訊いた。

「え? ああ、じゃあ、私もコーヒーを」と、彼女は答えた。

「それじゃあ、コーヒー三つで」

 御手洗さんがそう言うと、店員は頷いてその場を去る。

「それで……お話したいことと言うのは?」

 早速、大河内さんが口火を切った。

「犯人が分かったんです!」と、御手洗さんは言った。

「え!? 本当ですか?」

「ええ」

「一体誰が……?」

 彼女が探偵を見て訊いた。

「犯人は……大河内さん、あなたです」

「え!?」

 私は思わず驚いた。「大河内さんが?」

 御手洗さんは頷く。

「どうして大河内さんなんですか?」

 私は彼を見て訊いた。

 ちょうど店員がやって来て、チョコレートケーキを御手洗さんの前に置き、コーヒーをそれぞれに配る。御手洗さんはそのチョコレートケーキを一口食べながら話を続ける。

「堺さんを殺害した犯人は、彼を車まで乗せ、その車で彼の自宅へと向かった。理由は、前にも話した通り死体を隠すため。大河内さんも長澤さんも自動車免許は持っていました。そうですよね?」

「はい」と、彼女は頷く。

「だから、どちらかが犯人であると絞ることはできる。しかし、どちらかは違う訳で、二人のうち一体どちらだろうかと考えていたら、ふとあることを思い出しました。車の中の状況です。確か……ボンネットの上に「銀縁のメガネ」が置いてあったと思います」

 彼女は目を丸くする。

「銀縁の……メガネですか」

 私が呟くように言う。「それが犯人の持ち物とか?」

「ああ、そうだ」

「でもそれって……」

 私が言おうとして、御手洗さんが話を続けた。

「最初、僕もそれが堺さんのモノと思っていた。けど、どうやら彼のモノじゃないらしい。それと、さっき長澤さんにも電話で確認したけど、彼女は普段からメガネを掛けないそうだ」

「それじゃあ……」

「大河内さん、今、免許証はお持ちですか?」

 御手洗さんが彼女に訊いた。

「ええ……」

「少し拝見させてもらえませんか?」

 御手洗さんがそう言うと、「分かりました」と彼女はカバンの中から財布を取り出した。中から免許証を出して、彼にそれを見せた。

 彼が見た後、私もそれを見せてもらう。彼女の免許証の写真は眼鏡を掛けていない。

 が、免許の条件等のところには確かに「眼鏡等」と記載されていた。

 私はそれを見た後、すぐに彼女に返した。

 再び御手洗さんが口を開く。

「大河内さん、あなたは普段通りメガネを掛けて彼の車を運転したんでしょう。彼の自宅に着いてホッとしたあなたは、自分のメガネをそのままボンネットに置きっぱなしにしてしまった。すぐに逃げないといけないと思ったあなたは急いでいたこともあり、それを忘れてしまったのでしょう。後からそれが無いことに気付いたかもしれませんけど、もういっそのことそのメガネを()()()()だということにすればいい」

「あ!」

 ふと、私は声を上げた。昨日のことを思い出したからだ。

 帰り際、私がスマホを忘れ、それをトイレで見つけたことである。正直、恥ずかしい話であるのだが、「忘れ物」という点では類似した話であるなと私は思った。そして、おそらく御手洗さんはその一件でこの事件の真相が分かったのかもしれないことに気付いた。まさかあれが事件の伏線になるなんて……。

「大河内さん、本当にあなたが?」

 それから私が彼女にそう訊くと、「はい……」と、彼女は頷いた。

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