11
帰宅して手洗いとうがいを済ませ、私は冷蔵庫を開けた。
中にあるレモンサワーの缶を取り出し、それを開けてクイっと飲んだ。
「プハー」
レモンサワーで一息吐く。
それから、再び冷蔵庫を開けて野菜とお肉を取り出し、それらを一口大に切ってフライパンで炒めた。すぐに肉野菜炒めが完成する。冷凍のご飯をレンジで温め、昨日作った豆腐の味噌汁を温めて即席の夕飯が出来上がった。それぞれの料理をお皿に盛る。
トレーに料理を乗せて、リビングへ向かう。リビングのテーブルにそれを置くと、私は席に着いた。
いただきますと手を合わせ、私は肉野菜炒めを一口頬張る。適当に味付けしたが、案の定、それは美味しくできていた。思わずレモンサワーに手が伸びる。うん、お酒とも良く合うなあと私はつい顔が綻んだ。
それから、私はテーブルの上にあるテレビのリモコンに手を伸ばす。テレビを点けると、ちょうどバラエティ番組がやっていた。私はそれを観ながらご飯を食べ進める。
食べ終わってから甘い物が食べたくなり、私はキッチンへ向かった。そこに買っておいた「みたらし団子」があった。それを食べようと、電子ケトルでお湯を沸かし、緑茶のティーパックをマグカップに入れる。少ししてお湯が沸いたので、そのマグカップに注いだ。お茶とそのお団子を持って、私は再びテーブルに座る。
早速、みたらし団子を一つ食べた。
「はあ、おいしい」
私は幸せを感じた。それから、緑茶を啜る。緑茶も美味しい。お団子と緑茶ってどうしてこんなにも相性抜群なのだろう。
ふと、私はある人物の顔が思い浮かんだ。
あの探偵――御手洗薫――の顔である。
御手洗さんは大の甘い物好きである。私は都度、彼に様々な甘い物を出したことがあるのだが、ある日、私は彼に「みたらし団子」を出したことがあった。すると、どうしたものか急に彼が不機嫌な顔をした。それから、彼がこう言った。
「君、僕を馬鹿にしているのかい?」
彼は真面目な顔でそう言ったので、私はビックリした。
「馬鹿になんてしていません」
私がそう正直に言うと、「悪いけど、それだけはやめてくれないか」と、彼は静かに言った。彼は怒っているようだった。
「はい……」と、私は返事をするしかなかった。
私はその時のことをよく覚えている。後で彼から聞いたところによると、別に彼は「みたらし団子」が食べられないという訳ではなかった。彼がみたらし団子を嫌いになった理由には、彼の名前が関係しているからなのだと言う。
「おいしいのにね……」
そう言って、私はもう一口その団子を頬張る。私はみたらし団子が好きである。
それ以降、あの事務所でその団子を出すことがなくなった。そういや、一度、「あん団子」を出したことがあるのだが、その時彼は何も言わずにそれを食べていた。
それからしばらく、私はソファに横になりながらテレビを観ていた。気づけば、夜九時を回っていた。
お風呂に入ろうと思い、お風呂を洗い、お湯張りのスイッチを押す。その間に、私はメイクを落とした。それからお風呂が沸いたので、入ることにした。
湯船に浸かり、私は思考を巡らす。ふと、二人の女性の顔が浮かんだ。――大河内さんと長澤さんだ。
犯人は二人のどちらかであるのは確かだろう。だけど一体どちらが犯人なのだろう。この人物であるという決定的な証拠があればいいんだけど……。
証拠……証拠……。
「うーん、そんなものあったかな……」
私はひとりごつ。考えてみても、全然思いつかない。何か見落としているのだろうか……。
「もしかして……」
呟いて、そこでやめる。真犯人は別にいるのかもしれない。そう思ったけれど、すぐにそんなはずもないだろうとも思った。
だんだん熱くなってきた。これ以上考えるとのぼせそうだと感じ、私はもう出ることにした。
お風呂から上がり、着替えた後、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、グラスに注ぐ。私はそれを一気に飲んだ。「プハー」と、息を吐く。
それから、化粧水や保湿クリームを付け、髪を乾かした。
再びあの探偵の顔を思い出す。
彼はもう犯人が分かっただろうか。彼のことだから、もう分かっているんじゃないだろうか。いや、まだ分からずに困惑しているだろうか。
いずれにせよ、明日、私はまた仕事で彼に会う。その時もう一度、彼と一緒に事件の整理をしようと私は思った。
時刻は十一時を過ぎていた。私は歯を磨いて寝ることにした。




