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A.F.F.S (アカギ・フライングマシーン・ファクトリー・ストーリー)  作者: あくまでもフィクションです。石を投げないで。
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1930年12月 コネチカット州ハートフォード P&W社近くのバー

「聞いたか? あのアカギとかいう男の『フライング・トラクター(空飛ぶトラクター)』の話を」


 ライト社の技師長が、琥珀色のウイスキーグラスを揺らしながら、P&Wの若手設計士に笑いかけた。テーブルの上には、密かに手に入れたAFFタイプ30の三面図と、エンジンの諸元表が広げられている。


「低翼単葉に引き込み脚、密閉式コックピット……。形だけ見れば10年先を行っているが、中身が支離滅裂だ。見てみろ、この『AFF 1930』。排気量4万ccの化け物を、たったの1800回転で回すんだとさ。まるで田舎の農家にある脱穀機用の低トルク・エンジンだ」


 若手設計士が図面を指でなぞりながら、呆れたように応じる。


「4万ccですからね! うちのワスプの倍近い巨大なシリンダーを積んでおきながら、回転数をたったの1800rpmに抑えている。同じ排気量なら、我々なら1000馬力は引き出してみせる。それをわざわざ半分(750馬力)しか出さないなんて……。まるで『競走馬の体躯を持った牛』を作っているようなものです。彼は『1000馬力級を750馬力で使う』と言っているが、それは単に『重くて回らないエンジン』の言い訳に過ぎない」


「致命的なのは、素材の想定だ」


 技師長が図面を叩く。


「彼は、日本の町工場の粗悪な鋼材や、混ぜ物だらけの60オクタン・ガソリンでも動くように設計したと言ったらしい。正気か? 航空機というのは、最高の素材を使い、極限まで贅肉を削ぎ落とす『空の芸術』だ。わざわざ低俗な素材にレベルを合わせるなんて、エンジニアリングへの冒涜だよ」


 話題は戦闘機本体にも及ぶ。


「翼内に7.7mmを6丁。確かに火力は凄まじいが、沈頭鋲も使わずにその重い機体をどうやって飛ばすんだ? 750馬力のパワーの半分は、そのリベットの頭が作る空気抵抗で相殺されるだろうな……。ライセンス料狙いの『ビジネス』だなんて吹聴しているが、大恐慌のこの時期に、わざわざ『時代遅れの重い機械』の図面を金を出して買う国がどこにある?」


「せいぜい、自前でまともなエンジンも作れない東洋の島国(日本)が、藁にもすがる思いで飛びつく程度でしょうね」


「……まぁ、話しの種には困らないな。カウリングを絞って強制空冷ファンを回すのはいいアイディアだ。だが、あのデカいファンが回る姿は、まるで扇風機付きの牛だ」


 笑い声がバーに響いた。



P&W R-1340 ワスプ(当時の標準):

排気量:約22,000cc

重量:約320kg

出力:450〜500馬力


AFF 1930 750HP(アカギの怪物):

排気量:約40,000cc(ワスプの約1.8倍)

重量:約800kg(ワスプの2倍以上)

出力:750馬力

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