各種設定 2:1930年のアメリカの普通の町工場での『AFF Type 30』『AFF 1930 750HP』の製作
「最先端の航空機工場」ではなく、「蒸気機関車や大型農機具を作っているような腕自慢の町工場」であれば製作可能という、非常にユニークな結論となる理由。
1. 「力押し」のエンジン製作(800kg・鋳造)
1930年のアメリカには、全土に自動車やトラクターのための鋳造所がありました。
技術の転用: 1000馬力級の排気量を持つエンジンを、航空機用の高級な鍛造ではなく、あえて「鋳物」で800kgという重さで設計したことで、町工場の設備でも製造が可能になります。
精度の克服: 「フォード(自動車製造)以下の精度」であっても、1800回転という低回転運用デチューンであれば、各部のクリアランス(隙間)が広くても焼き付きにくく、多少の振動もエンジンの「重さ」が吸収してしまいます。これは航空機エンジンというより、「極めて強力なレーシング・トラクターの心臓部」を作る感覚です。
2. どこまで排気量を上げてデチューンできるのか?
この設計思想(日本の低精度・低材質をアメリカの資材で補う)を極める場合、以下のようなスペックが限界点となります。
アメリカの良質な資材(鉄鉱石や合金の質)と、平均的な町工場の工作機械があることを前提とした数値。
材料の暴力: アメリカの町工場には、当時から不純物の少ない良質な鋼材が安価に転がっていました。日本の職人が苦労して熱処理するレベルの強度を、アメリカの素材は「削りっぱなし」で持っています。
工作機械の信頼性: 「精度がフォード以下」といっても、アメリカの町工場にある旋盤やフライス盤そのものの剛性が高いため、日本の町工場で作るよりも「重くて頑丈なパーツ」を安定して削り出せます。
目標排気量:約50,000cc (50リットル)
当時のリバティ・エンジン(27リットル・400馬力)の約2倍の排気量です。
デチューンの限界:
本来なら1500馬力以上出せる排気量(大口径シリンダー)を確保します。
それを「吸気制限(キャブレターを絞る)」や「低圧縮比」「低回転運用」により、常用750馬力に抑え込みます。
この構成の利点:
超寿命: 常に「全力の50%」で動いているため、町工場精度のパーツでも折れたり壊れたりしません。
低質燃料への対応: 精度が低く圧縮比も低いため、高価な航空ガソリンではなく、当時の「質の悪いガソリン」でもノッキングを起こさず動きます。
3. 鋳造で800kgのエンジンを作る現実味
1930年当時、航空エンジンを軽く作るには「鍛造鋼」を薄く削り出す高度な技術が必要でした。しかし、あえて「鋳鉄」や「鋳造アルミニウム」を主体にするなら、話は変わります。
排気量の拡大: 800kgという重量予算があれば、排気量を40〜55リットル程度まで拡大可能です(当時の軽量1000馬力級エンジンが30リットル前後)。
肉厚による精度のカバー: 加工精度が低く、シリンダーの真円度が出ていなくても、壁を厚く(肉厚に)することで爆発の圧力に耐えさせ、熱による歪みも「重厚な鋳物の熱容量」で強引に抑え込めます。
1800回転の妥当性: 当時の最先端機は2500回転以上を目指していましたが、1800回転は「蒸気機関」や「大型トラック」に近い低回転です。これにより、軸受け(ベアリング)の精度が多少低くても摩擦熱で焼き付くリスクを劇的に下げられます。
強制空冷ファン: 15枚の羽根を持つファンが、800kgの巨大な鋳造エンジンの熱を強引に吹き飛ばします。このファン自体も重い鋳物であれば、エンジンの回転を安定させる「フライホイール」の役割も果たし、振動を相殺します。
4. プロペラの分割プレス工法(この工法では750馬力1800回転が限界です。それで舞台は1930年に)
3.6mという巨大なプロペラを、町工場で実現するための最も合理的な方法です。
鉄棒(芯材): 鉄の棒を旋盤で削り出し、スプライン(溝)を切ってハブにする作業は、当時のアメリカの町工場が最も得意とした「鉄道や産業機械」の技術そのものです。
ジュラルミンプレス: 翼端を分割し、プレス機で成形して鉄の芯材にリベットやボルトで固定する方式は、航空機メーカーの高度な削り出し技術を必要としません。町工場にある大型プレス機で「板金工作」として量産できます。
5. 「丸頭リベット」と「極厚の翼」
工作の簡略化: 翼の付け根が50〜60cmもある設計は、内部に頑丈な鉄製や厚手のアルミ製の「桁スパー」を通す余裕を生みます。
リベット打ち: 沈頭鋲のような高度な技術ではなく、外側に頭が出る「丸頭リベット」を力任せに打つ手法は、ボイラーや橋の建設に携わる職人の技術で対応可能です。
この1930年アメリカの「町工場モデル」は凄すぎる。
1930年当時のアメリカにおけるこの機体は、以下のような存在になります。
製作環境: 航空機専門のクリーンルームではなく、火花が飛び散り、油の匂いが立ち込める「鉄工所」の風景の中で完成します。
職人の役割: 航空エンジニアではなく、「腕の良い蒸気機関車の整備士」や「大型トラックの改造屋」が主役となります。
完成品: 繊細な美しさはありませんが、多少の被弾や荒い着陸ではびくともしない、「空飛ぶ鋼鉄の塊」です。
アメリカの町工場にある「ありふれた設備」と、当時の日本が想定した「低い加工精度でも性能を出す設計思想」が融合することで、キャデラック数台分(約2万ドル前後)という低価格(量産前提)で、当時の正規軍用機を性能で圧倒する「野良の化け物機」が誕生するでしょう。
キャデラック数台分(約2万ドル前後)という低価格(量産効果)とは?
1. 試作プロトタイプ1機にかかる費用
町工場が初めてこの設計図を受け取り、手探りで1号機を完成させるまでの総費用です。
試作価格:約45,000ドル 〜 60,000ドル
理由: 鋳造エンジンのための「木型」製作や、3.6mプロペラをプレスするための「金型」をゼロから作る費用が重くのしかかります。
また、町工場レベルの「フォード以下の精度」で各部を合わせるため、現物合わせの微調整(削ったり叩いたり)に膨大な人件費(職人の工数)が発生します。
この価格は、当時のアメリカ陸軍が発注する最新鋭試作機の半額以下ですが、町工場にとっては数年分の利益に相当する大プロジェクトになります。
2. 「量産前提」の意味:町工場のネットワーク化
1機目の「金型」や「治具」さえ完成してしまえば、同じ設備を持つ全米の町工場で、2号機以降を安く、早く作れるようになる点です。
1号機で設計の不備(2.3トンの重量バランスなど)を洗い出した後の「量産コスト」は以下のようになります。
量産単価(10機〜50機程度の場合):約18,000ドル 〜 22,000ドル
エンジン(800kg・鋳物): 一度木型ができれば、近隣の鋳造所で安価に量産できます。
プロペラ(分割プレス): プレス金型を使い回すことで、1枚あたりのコストが激減します。
機体(丸頭リベット・極厚翼): 特殊な工作機械が不要なため、自動車修理工を並べて「流れ作業」で組み立てが可能になります。
3. 「野良の化け物機」としての立ち位置
1930年当時のアメリカ正規軍用機(ボーイング P-12等)は、1機あたりの機体単価約15,000ドル〜20,000ドル(これに「高価な航空エンジン(1万ドル以上)」を加えて3万ドルを超える)でしたが、それらは「450馬力・1.2トン・機銃2丁」というスペックです。
対して、この町工場製の機体は、
試作費: 軍用機の約3機分(6万ドル)かかるが、
性能: 倍の馬力(デチューン750馬力)、3倍の重武装(6丁)、そしてより高速(340km/h)。
頑丈さ: 鋳物エンジンと極厚の翼により、正規軍用機よりも遥かに被弾に強く、ラフな扱いに耐える。
結論:「試作」から「量産」への流れ
試作段階: 「変わり者の町工場の親父」が、日本の設計思想? (重厚・低精度・高出力)を元に、全財産の6万ドルを投じて1号機を完成させる。
評価: 精度はガタガタ、エンジン音はトラクターのようだが、飛ばしてみると正規軍の戦闘機を追い回すほどの怪力を発揮する。
量産への道: その性能に驚いた民間の警備会社や州兵が、「1機2万ドルなら、精密だが華奢な正規軍用機を買うより、この頑丈な化け物を揃えた方がいい」と判断し、町工場ネットワークでの製造が始まる。
4. 町工場での製作風景
「町工場」の姿はこうなります。
旋盤加工: 高度な研磨機ではなく、使い古された大型旋盤でシリンダーを削ります。「フォード以下」のガタがあっても、ピストンリングを厚くし、潤滑油を多量に循環させることで解決します。
この「ハイテクではないが、圧倒的な馬力と物量でねじ伏せる」というキャラクター(サトシ・アカギ)こそが、この機体の最大の魅力となります。
本来ならば。
高所作業車や、1930年代アメリカの航空雑誌やサイエンス・マガジンなどで、ジャパン・スタイルと呼ばれる翼の上のエンジン(水上機や飛行艇では珍しくないような)など、全てオミット・トゥ・ドゥ。
ソ連やドイツや北欧、中南米などを飛ぶAFF社製の機体など、夢は広がっていたんですが。それで本編終了後にダラダラ続くことになりました。




