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サムライ令嬢、抜刀!  作者: 藤平クレハル


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第五話 サムライ令嬢、強敵と相対す

 実技の部・第一試験で発生した異常事態による混乱も収まり、第二試験はつつがなく行われる運びとなった。どこかに行っていたジークフリートも気づけば戻ってきている。


 程なくして、アタシたち受験生は、次の試験会場である闘技場と呼ぶべき円形状のフィールドに集められていた。


「今度はなにかしら」

「サクラさん! さっきはすごかったねえ! あんなにカッコいい戦い、初めて見たよっ!」

「そ、そう。ありがとうルルミラ」


 相変わらず気さくに話しかけてくるルルミラ。彼女もしっかり第一試験を突破していた。周りを見る限り、よっぽど落ちにくい試験だったらしく、ほとんどの受験生が残っている。ここからどうやって次のふるいに掛けるのかしら。


 答えはすぐに出た。


「あれは……?」


 フィールドの中心部から微かな地響きと共に、真四角の台座が地面からせり上がってきた。おそらく、そこが第二の会場ということなのだろう。少し広すぎる気もするが、試験内容は一対一の手合わせか。


「それでは、これより実技の部・第二試験を開始します。先ほどは皆さんの基本的な戦闘能力を拝見しました。今度は応用、つまり対人戦スキルを確認するための試験、魔法でランダムに選んだペア同士による模擬戦を行います!」


 やっぱりそういう感じなのね。そうなると、アタシの相手は誰なのかしら。


 順々に名前が呼ばれていく中、アタシの番がなかなかこない。まさか実は落ちてましたーなんて話はないわよね?


 そう思っていたら。


「えー、まだ名前が呼ばれていない方がいるかと思いますが。その方々はいわゆる特別枠です。第一試験の内容を鑑みて、第二試験を免除されていますので、ご了承お願いします」


 なぬ。ラッキーだけど、なんだか少し物足りないわね。せっかくなら強い人と戦ってみたかったのに。


「オイオイ、そんなの面白くねえなあ。オレにも戦わせろよ!」


 物騒な発言。並み居る受験生を割って進み出てきたのは、ジークフリートとは別の方向性だが、かなりの美男子だった。


 眼を焼くほどに鮮やかな紅の長髪に、彫りの深い整った目鼻立ち。そして一番特徴的なのは、金銀の装飾で飾り立てられたその細長く尖った両耳だった。


 ―――エルフ種。この世界に生きている知性動物は人間だけではない。魔力の影響を受けて遥か昔に進化した、人間とは別の種族。ミヤモトにもらった教本だと、人間よりもはるかに高度な魔法を操るのだとか。


「なっ、あの人って……」

「知ってるの、ルルミラ?」

「だ~か~ら~! なんでサクラさんは知らないのさっ!? 彼も “五天” の一人だよ! エルフの王族にして、“火天の魔法騎士” ラヴァナ=ラクシャーサ!」


 なんと。あの派手派手しい青年も “五天” とは。


「おい。間違っても僕とあんな熱血野郎を同じくくりにしないでくれよ、サクラ」


 心底嫌そうな顔で、同じく “五天” と呼ばれるこの国の第三王子ことジークフリートが横に並んできた。


「アンタいつの間に戻ってきてたのよ。急にどっかいなくなったから驚いたわ」

「あれ、心配してくれたのかな? だとしたら嬉しいね」

「そんなわけないでしょ。それより、あのエルフの人って強いのかしら?」

「そりゃあ、腐っても僕と同格と言われるだけのことはあるよ。……君、まさか」


 なにかに勘づいたジークフリートに止められそうになるのをかわして、一歩前に。


「あぁ?」

「誰かと戦いたいのよね? よければ、アタシと手合わせしてもらえないかしら」

「……ハハっ。てめェ、冗談が上手ぇな。もちろんオレが誰かわかってんだよな?」


 予想通り。見た目の派手さの通り、挑発には乗ってくれる単純なタイプらしい。


「ま、待ってくださいラヴァナ様。皆さま “五天” が力を振るわれると、その、被害が甚大になる可能性があるので……」

「うるせぇなあ。このオレは誰にも止めらんねえ!おい、そこの女。オレに挑むなら相応の代償を払う覚悟はあるんだろうなァ!」

「なにがお望みなわけ?」


 こちらの質問に、ラヴァナは意地の悪いニヤケ顔を浮かべる。


「そうだなァ。オレの愛人にでもなってもらおうか?」

「はあ……。なんかそういうこと言いそうな見た目してるだけあって、意外性のないこと言うのね。良いわよ、かかってきなさい」

「「サクラ!?!?」」


 息ぴったりに声を荒げるルルミラとジークフリート。悪いわね二人とも。このチャンス、逃す手はないわ。


「威勢のいい女だぜオイ! そういやァ、あの黒サソリをぶっ殺したのはてめェだったよな。こりゃあ楽しめそうだ!」


 と、いうわけで。


 早速やる気満々のラヴァナは他の受験生を差し置いて、勝手に戦いの場に上がってしまう。アタシも続けて、彼の対面に立つ。


 武器は……直剣かしら。適当に片手でぶら下げてるだけなのに、彼から放たれる威圧感は確かになかなかのものだ。さっき戦ったサソリよりも間違いなく強い。


「か、勝手なことばかり……。でも止めればラヴァナ様の機嫌を損ねて国際問題になりかねないし……!? ええい、ままよっ!」


 なにやら踏ん切りを付けたらしい審判役の教諭が右手を掲げると、途端に壇上を覆う薄い膜のような物が張られた。


「くそ、間に合わなかった。サクラ、これは “闘技結界コロッセオ” という魔法だ。一度展開されると、勝負の決着がつかない限り解けることはない。だから、なんとしても勝て!」

「心配してくれているの? 大丈夫よ、ジークフリート。アタシは勝つわ」

「君の剣は確かに強いが、彼は “五天” の中でも魔法のスペシャリストなんだ。とにかく気をつけてくれ」

「はいはい」


 さて、と。


 呼吸を整え、柄に手を掛ける。刀はまだ構えない。初撃への対応をまずは必ず行う。


「準備できたかよ? ならよォ……始めっかァ!!」

「っ!」


 開始を宣言する雄たけびと同時。鞘から抜刀したアタシの刀と、気づけば目の前にいたラヴァナの攻撃が触れ合い、激しい火花を散らして、アタシが吹っ飛ばされた。


「なんてスピードと馬鹿力……! 魔法を使うんじゃなかったの!?」

「アホが。これも魔法だァ。“身体強化”、戦闘魔法系なら当然の技だぜェ!」


 名前からして、自分の動きを強化する魔法か。そんなのがあるなんてズルい。でも、こちらにも似たような技ならある。


 すぅ―――と息を吐き切る。


「次はこっちの番、よッ!」


 着地。そして踏み込み、一気に前へ。左右の脚で地面を蹴ること三度ごとに加速。腕をしならせて、刀を鞭のように叩きつけた。


 刀と剣が交差し、鍔迫り合う。


「あぁ? 大道芸かそりゃァ! 確かに速い、威力もそこそこ。けど、そんなもんで」

「我流剣技・攻術アタック参の型(サードフォーム)二段切にだんぎり”!」


 刃から伝わってくる。ラヴァナの油断、嘲り、慢心が。


 だからこそ、この技は刺さる。


 鍔迫り合ったところからそのまま、もう一度しならせた身体の捻りで二の太刀を繰り出す。ゼロ距離からの剣戟が放つ衝撃で、ラヴァナの長身が揺らいで後ろへ下がった。


 刀を中段あたりに構えて、次の動きに備える。これで最初の力比べは終わりだろう。次に来るのは、おそらく彼の本気の一端。


「ほーん。まあ合格点って感じだなァ。さァ、肩慣らしは終わりだぜ。見せてやる、オレがなんで “五天” と呼ばれているかをなァ!!」


 来る―――!


オレの腕に宿りて、炎はここに走る。“フレイムダーツ”!」


 ラヴァナが左腕を眼前に持ち上げる。その手首に巻きつけられたペンデュラムが、赤いオーラを纏って浮かび上がる。次の瞬間、予備動作なしでペンデュラムの先端から炎の矢が数発一気に発射された。


「!」


 距離を開けておいて正解だった。速いが打ち落とせないほどではない。冷静に全ての矢を切り払い、そのまま一気に距離を詰め直す。遠距離魔法を使ってくるというのなら、こちらの得意な間合いに持っていく!


「甘ェよ。引っ掛かりやがったな!」

「!?」


 あと数歩で届くというタイミングで、足元が灼熱に赤く染まる。察知した危険に全身が泡立ち、咄嗟にその場から飛びのいた。


 直後、視界全てを埋め尽くすほどの炎の柱が立ち昇り、その余波である熱を浴びただけで吹き飛ばされた。呼吸すらままならないほどの熱気に咳き込みつつも、なんとか立ち上がる。


「ちッ、ギリギリでかわしやがった。やるじゃねえかオンナ」

「今のは、一体……」

「設置魔術ってヤツだ。あらかじめ術を施した場所を踏むと発動するトラップなんだが……。どうして気付いたァ?」


 どうしてと言われても困るけど、そういえば炎が爆発する直前に、足元が赤く染まった気がした。アレは魔法の前兆的な物だったのかしら。


「なんとなく、危なそうだと思ったのよ。アンタ、結構策士なのね」

「クソめんどくせェ。獣人種でもねえ、タダの人間のクセによお!」

「ほらほら、ドンドンきなさいよ!!」


 煽り合いも束の間、アタシとラヴァナは同時に駆け出す。相手は全ての距離で戦える万能型のようだが、あいにくこちらは近距離しかない。長引けば不利。


「だったら!」


 連続して飛んでくる火の矢を避けながら、姿勢を下げて刀を下段に。体を低く折り曲げてジグザグに全力疾走して狙いをつけさせにくくする。


「我流剣技・攻術(アタック)漆の型(セブンスフォーム)、 “昇舞のぼりまい”ッ!!」


 振り下ろされた直剣をギリギリまで引きつけてかわして、最後の踏み込みでラヴァナの懐へ潜りこむ。下段から腰だめに一気に刀をすくい上げるように振り抜く。


 だが、直剣によるガードに阻まれる。火花を散らして弾かれる刀。ラヴァナがざまぁと言いたげなニヤケ顔を晒す。計算通りだ()()()()()


「はぁああああああ!!」

「なッ」


 弾かれた刃をすっぽ抜けそうな勢いで、動きを止めずに腕を風車のように回し続ける。一周して返ってきた刀を遠心力に任せて再び渾身の一撃として叩き込んだ。これぞ相手の防御を無効化する必殺の連舞れんぶ


 高速で放った逆袈裟の切り上げは、ラヴァナの胴を完全に捉えたはずだった。


 ギッィィィィィィィィイン!!!


「――――――え?」

「ハッ、よくやったよてめェ。けどコレで逝っとけ。“フレイムブラスト”!!」


 アタシの一撃は不可視の壁のようななにかに弾かれて。


 次の瞬間、全身が灼熱の奔流に吞み込まれた。

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