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サムライ令嬢、抜刀!  作者: 藤平クレハル


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第十六話 課外演習、ある晴れた日のこと

 吸血族の少女ルキフェリアとディアナレナとの出会い、そして狂信者の襲撃と、そこからの座学の期末試験を経て、アタシの学園生活は新たな局面を迎えていた。


 ルキ先輩が落としていった本については、ディアナレナからはアレはただ家に置いてあった本としか説明されなかったが、何かありそうではある。今は聞き出せそうにないので、これは一旦保留。


 では、新たな局面とは何か。


 そう。それは学園で行われる実技の方の期末試験、課外演習である。


「ってまた試験なの!?」

「あはは、仕方ないよサクラさん。ここは学園、学び舎なんだからねん」


 そうは言われても、もっと修行と情報収集だけやっていたいのだけれど。魔王の狂信者なんていう怪しい連中にも目を付けられているとなれば、うかうかはしていられないというのに。


「それに、昇格や卒業には授業で得られる単位が必要なんやから仕方ないやろ? ウチらはしがない学生やからなあ」

「そういうものなのかしらね―――っと、そろそろ説明が始まる感じかしら」


 アタシたちが今集められているのは、王都から少し離れたところにある広大な原っぱだった。青々と茂った草葉の緑が目に痛い。


「えー、皆さんお疲れさまです。今日は課外演習を兼ねた実技試験を行います。具体的な内容としては、ダンジョンアタックの授業と同様にチームを組んでの対抗戦となります。正式な騎士職を拝命すれば集団戦闘の機会も多々ありますので、今回はその予行演習となると思ってください」


 ふうん、集団戦か。確かに最近そういう機会も増えてきたし、ここは一つ真面目に受けるとしましょうか。


 なんて考えていると、当然といった顔つきで背後に忍び寄るルルミラとメイリンに気付く。


「サ~ク~ラ~さ~ん?」

「言わんでもわかっとるよな~?」

「はいはい。皆まで言わなくていいわ、二人とも。今回も一緒に組みましょう、この前は結局最後までは居れなかったものね」


 ため息交じりに承諾すると、二人はやったー!とぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んだ。正直、もっと二人とは一緒に戦ってみたかったから少しだけ嬉しかった。


 ともあれ、三人パーティとなって改めて並び直しの輪に向かっていると、急に五、六人の集団に囲まれた。構成は盾騎士が一、槍騎士が二に弓騎士が一……そして大剣を背負った剣騎士が二人。座学で習った通りの、なかなかバランスの取れたパーティのようだ。


「なにか、用かしら?」

「お前がサクラ=ミヤモトだな、最近噂の……」

「また噂になっているとはね。困ったものだけど、今度はなにかしら」


 ぶっきらぼうに返事すると、先頭に立つしかめっ面の男子がこちらを睨んでくる。アタシなにかしたっけ?


「偉大な “五天” の方々への、これまでの不敬な態度の数々。騎士を目指す者として許してはおけない。この実技試験で俺たちに負けたら、この学園から出ていってもらおうか!」

「はっ。肩書なんかに振り回されて正義の味方気取りとはね。随分と安っぽい騎士道精神じゃない」

「黙りなさい! ジークフリート殿下には貴女なんかに構っている暇はないのよ。それなのに……!」

「ラヴァナ殿下にもあの挑発的な態度だ。あまつさえ刃を浴びせるなど!」


 あー。そういうことか。この子たちは “五天” の連中にお熱な、言うなれば狂信者ファンの一つの形というわけか。本当にそういうのって厄介ね。もう間に合ってるんだけど。


「アンタたちには関係ないでしょ。それに、アタシよりも弱い人間に咎められる筋合いもないわ」

「何だと……!? だったら、言った通りこの試験で俺たちに負けたら大人しく去るというんだな?」

「別に構わないわ。アンタたちと違って偉ぶった騎士さまになりたいわけじゃないもの」

「お前……!」

「待ちなよ」


 煽られて激昂する男子学生を制するように、投げかけられた声は聞き覚えのあるものだった。またぞろ変なタイミングで出てくるものだ。


「なによ、ジーク。アンタには関係のない話でしょう」

「じ、ジークフリート殿下! 本日もご機嫌うるわしく……!」

「はあ。面倒ごとに巻き込まれるのが好きだねサクラは。少し聞こえた感じだと、君たちは彼女が "五天" に勝ったのが気に入らないのだよね?」


 うーむ。"五天" 本人にそう尋ねられると流石に相手も困るだろう。相変わらず意地の悪い王子さまだ。


「い、いえ、いや、そうなのですが……殿下のお手をわずらわせる程のことでは……」

「それを決めるのは君ではない。力を示した者を虐げるような騎士は我が国には要らないんだ。よって、退学を賭けさせるならば、君たちが負けた場合も同様に扱う。構わないな?」

「なっ………。え、ええ! もちろんです! そこの女のような礼儀知らずに負ける鍛え方はしておりませんから」

「面白い。ならば―――」


 あ、ジークったらこれ、とても悪いことを企んでいる顔だわ。短い付き合いだけど見たらわかる。口角がえげつないほどに釣り上がってるもの。


「僕はサクラたちの側に付くとしようかな!」

「「えっ!?」」

「だったらよ、俺も混ぜてもらおうかァ!」

「「「ええっ!?」」」


 急に肩を組んできたジークに驚愕しているアタシたちの前に、どこからか現れた赤髪エルフの王子さまが剣を突きつけてきた。


 もうなにがなんだかわからないまま、波乱の学期末試験が始まろうとしていた。

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