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明日死ぬために今日できること

作者: 百合香

人の悩みは大小さまざまである、

ある人はそんなことで悩んでるの?とか

ある人はそんな凄い事があったの?とか

美味しい物を食べれば悩みなんて吹っ飛ぶよ!とか


勝手な事をいう、人の悩みは人の数だけ存在してそれは誰かが大変だね、ささいな事だねと決めつけられる問題ではない


人は自分の物差しでしか物事を判断をしない

この主人公もおそらく悩み!ある選択にいきつく

この物語を最後まで読んで頂けると幸いです。



 雨が降っている雨粒が顔に当たる感覚は心地がいいと初めて知る、さっきまでの全身の痛みが嘘のようだ何やら周りがガヤガヤと遠くで音がする、そのガヤガヤの音に混じって聞き慣れた音がする、


カシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、


 そうだ一昨日まで付き合ってた彼女の美雪がランチの前に決まって写真を撮る音だ、眠くなってきた、薄めでアスファルトから流れる赤い色を確認した、        計画どおりには行かなかったけど、これできっと良かったんだ、そろそろ眠くなってきた眠ろう


○前日


 年期の入った古いお仏壇には母親と父親の写真が飾ってある。毎日かかさず水をやり!2日に1回はお供物をするのは毎回の習慣になっている、


 父は僕が5歳の時に病死、以来、母が僕の面倒を見てきてくれた、父親がいなくても何不自由のない暮らしだった、母が亡くなったのは僕が20歳を迎えた月だった!成人式の日に僕が着た袴に母は何かの大河ドラマの脇役みたいだねぇとおどけて笑ってたが目の端には綺麗な水が溜まっていた、


 僕はお仏壇の前に座っていた!目を瞑るとあの頃の優しい母が蘇る、成人式のあと母は脳梗塞で倒れすぐに帰らぬ人に、あっという間すぎて涙は出なかった!


チーーーーーーーン


鐘を鳴らし手を合わせる

いつもお仏壇の前だけはあの頃の20歳の自分に帰れるような気がする、気がつくと35歳になっていた


僕は今日やらなければいけないことがあるのだ


 まずはこの僕しかいないお家を掃除しよう、兄弟はいない、一人では住むにはあまりにも広いと思って引っ越しを考えたが、思い出があり手放すのをやめた、そしてその思い出の中で僕は明日死ぬ


 念入りに掃除機をかけた、仕事が忙しくほとんど寝に帰ってた家は!ホコリというお化粧から剥がされその素顔を取り戻していった、仕事はブラック企業でほとんど残業の毎日だった、しかし残業という貴重な時間の見返りのお金は無かった。


 その職場を昨日辞表を出して部長の顔を何度か殴った、部長は体を丸くして何かつぶやいていたが、僕には聞こえなかった、騒ぎにならなかったのは部長も自分でやってきた事を反省したからだろーか?それとも通報してもめんどくさい事になるだろーか?


もう今はそんなのはどうでもいいことだ。


掃除を終えてすっかりスッピンになった家は居心地がいい、机に1枚の便箋をおく、僕はそこにこう記す

「遺書」


 いざ何か書こうと思うと何も浮かばない、誰に対して書くのか、なんのために書くのか、それすら分からないのだ、35年間人生、何も書くことがないということは僕はずいぶんと薄っぺらい人生だったようだ、彼女の事を書こうにも、友達の事を書こうにも、本当に付き合ってたのか?本当の友達だったのかそれすらも分からないのだ、さんざん考えた挙句書いたのは1行だった


「人生の儚さを体現する我の体はいずこへ行くのか」


かっこつけすぎた、


ケシケシ、、、


「これからの人生を考えると苦しくなりました」


そして遺書と書かれた封筒に入れる。


そしていよいよ今日のメインに移動する

スマホを出し。。佐藤美雪と書かれた電話帳から電話を発信する!


プルルルルルルル!プルルルルルルル!


「もしもし!健ちゃん?どしたの?今!仕事中だよ」


殺伐とした声の美雪が出た、それもそのはず今は彼女は仕事中だ今は水曜日の午後13時だ僕はこの時間を狙ってかけた!長い電話にならないためだ


「美雪ごめん、仕事中にあのさ僕と別れてくれる?」

「え?ちょっ、、どういうことよ何で?」

「あの、、、、おれ、、好きな人が出来たんだ!だからあの時そのイケなくてお前じゃ満足できなかったから、ずっと、ずっと、」


嘘をつくのが下手な僕は必死になって喋っていた


「何言ってんの?さっぱり分からないんだけど!しかも仕事中にする話?仕事終わったらかけなおす!」


 殺伐とした言葉が胸に突き刺さり!本当に終わりを告げられた安堵と悲しみが交わって僕の中で溶けた、

 

 そして!佐藤美雪の電話番号をブロックした。

これで彼女は諦めてくれるかどうか分からないが!1つの区切りとなるだろう、3日前の事を思い出す!


 僕はその日美雪とホテルに来てた、お互い仕事をしてるので会うのは1ヶ月に1回か2回だろーか、交際して3年は経過したもののお互い体の関係はなく、この日が初めてだった、


 僕はセックスが苦手だったので何となく今まで避けていた、今日は彼女からの誘いだった、事の最中だ、心の中で僕は叫んでいた、

「お願いだ!勃ってくれ!もう1回勃ってくれ」

僕の願いとは裏腹に下半身についてる僕の分身は、美雪の中で萎えいた、


 やっぱりだ、、、僕は世間でいうところのEDらしいこれが初めてじゃない最初に出来た彼女からこうなのだ、それ以来僕は女の子とセックスを避けるように生きてきた、でもいつか治るんじゃないかと思っていた自分もいた、セックスには相性があって、相性の良い人の中で僕は精子を出すことができるのだ思っていた、


 美雪は今まで付き合ってきた彼女達よりも一緒にいて安心できる存在だったし、もしかしたら僕はこの人の中でならと思ってきた、その幻想は打ち砕かれ、僕はベットの上で息を吐いて呆然としていた、


 美雪はベットの上で座り、タバコに火をつけた、

彼女の口からメンソールの煙が吐き出された、その煙に僕は呆然としていた自分に気がつき現実にもどった、美雪の背中が小さく丸く見えた


「ごめんね、私、魅力的じゃなくて、ごめんね」


 僕は言い知れぬ深い悲しみに溺れた、ここで僕はEDなんだ!ずっとそうだったんだ!と言いたかったが余計に彼女を苦しめる事になりそうだったから言うことをやめた、そのかわりに出た言葉が


「今日たぶん疲れてたんだと思う僕の方こそごめん」

ありふれた言葉を吐き出した、その日は逃げるように帰り、家につくといつものお仏壇の前で僕は泣いていた


35歳の僕は声を出して泣くのは恥ずかしいでもお仏壇の前での僕は20歳だった20歳の若い青年が声を出して泣いているのだ、


 涙を流したのは美雪を悲しませた事とこれからの未来、もう男としての機能が完全に停止してしまったこれからの未来の深い悲しみだった、


 これからの未来の事を考えると、吐き気がしてきた美雪との今後の話し合い、結婚について、今のブラック企業の現状、たとえ辞めたあとの転職について暗い未来しか見えず、僕はこの決断にいたった


 家の掃除が終わり遺書も残した美雪とも別れを告げた、あとは身の回りの物の処分だ、僕は小さいときに遊んでた大事なオモチャ達を見た、頭が取れた怪獣、腕がない超合金のロボット、しょぼい音しか出ない銃、グニャリと曲がった剣、色あせた野球選手のカード、僕は無感情を装い次々とビニール袋にいれる、


 そこで目についた物にハッとさせられるお金が厳しい中、母が買ってくれたビー玉が飛び出すロボットのおもちゃが出てきた、当時クラスメイトのほとんどが持ってて僕は母にねだって、しぶしぶ買ってもらった物だ僕はそれをビニール袋に入れずテーブルの上にソッとおいた、


 あらかた物が片付いて後は夜にゴミを出しに行くだけだ、人生最後の夜だ!僕はビー玉が出るオモチャで遊んでみた、ビー玉はロボットのお腹から勢いよく飛び出した!それを夢中で繰り返す、今までこんな夜があっても良かったと思ったが僕の決心は硬かった、ロボットはひさびさに遊んでもらえてどこか満足気にお腹から次々とビー玉を吐き出していった、、、、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 当日、外は雨だ昨夜は眠れずに今に至る

僕は首をくくるロープを買い忘れていた事に気づいた


 何ていう失態だ雨の中、僕はホームセンターに買いに走った外の雨はバケツをひっくり返したみたいに強く降っていて視界も悪いロープ!ロープ!ロープ!僕は心の中で呪文のように唱え続けている、


 横断歩道にきた信号が赤なのがもどかしい、僕は早くこの世界から抜け出せねばならない!もう最悪な未来も、最低な生活もうんざりなんだぁ。。目の前の車が通りすぎた横断歩道の向かい側!


誰かいる、、え?目を疑った、母さん??僕の世界が一瞬スローモーションになる、僕は母のもとに行こうと1歩前に出た、次の瞬間だった、僕の耳に凄まじい音がした!気がつくと僕は宙に浮いていた、全身に痛みが走った


雨が降っている雨粒が顔に当たる感覚は心地がいいと初めて知る、さっきまでの全身の痛みが嘘のようだ何やら周りがガヤガヤと遠くで音がする、そのガヤガヤの音に混じって聞き慣れた音がする、


カシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、


そうだ一昨日まで付き合ってた彼女の美雪がランチの前に決まって写真を撮る音だ、眠くなってきた、薄めでアスファルトから流れる赤い色を確認した、計画どおりには行かなかったけど、これできっと良かったんだ、そろそろ眠くなってきた眠ろう


うん?サイレンの音、、、その音を聞くと僕は深い眠りに落ちた、隣に母さんの気配がした、ああ優しい気分だ、


ピ、ピ、ピ、ピ、


 音が聞こえる目を覚ます、どうやら病院みたいだ、何日眠ってたのかは想像ができないがどうやら生きてるみたいだった、

あれ?人の影が見える美雪??

「あ!!健ちゃん!生きてる??健ちゃん!!」

「先生ーー!!健二君が!目を覚ましたぁー」


なぜ?美雪がここにいるのかは分からなかったが後日きいた話だ、その日!美雪は雨の中仕事に向かう途中知らない女性に手招きをされて僕が轢かれた現場までいったらしい、そして血まみれの僕を見つけて救急車を呼んでくれた、


あれからーーーーーーーーーーーー


「どうぞ!狭いところですが」

「めっちゃ広い家じゃん!てか!なんで何にも無いわけ?あ!」

「どしたの?お仏壇が気になる?僕のお母さんとお父さんだよ」

「この女の人、、、、、うんそっか」

「何にもないけど!コイツならあるよ?」

「?何それ?お腹に穴あいてる?ロボット?」

「最近は毎晩これで遊んでるよ」

「なに、、子供みたい、、じゃっ私達の今後話し合おうか?」


僕はこれからまた明日死ぬために準備をする

でもそれはいつかは分からない遺書はお仏壇の中に静かに閉まった。

自死のニュースをよく目にする、誰かに相談しなかったの?

とか勝手な憶測が飛び交うが、死にたいときほど誰かに相談はしない、そして死ぬという選択の前には必ず前だんかいがある


その人なりにそれなりのSOSを出している

もしくは溜め込んでいるか、いずれにせよ!いろんな選択肢があって最終的に死ぬという選択肢しかなかったのだ


この物語を読んだ方々にも悩みがあり、自死を考えた人はいると思う!どうか死ぬという選択肢の前に何らかのSOSを出してほしい、でもこの僕のこの願いも自分の物差しのものだ、


最後まで読んでくださり!ありがとうございました!!



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