ホロコースト映画や小説の長短
長短とは、メリットとデメリットのことだ。
これは作り手と受け手双方の側に、それぞれ発生する。
さて、秋乃は今、ホロコーストを題材にした小説を書いている。
そのことに際し、私自身がどう感じているか。長短をどのように捉えているか。
それらを書いておかないと、多くの人々に失礼だなと思ったので、記すことにした。
そもそも大前提として《ホロコースト》という呼び名が、当事者の人々に忌避されている。
弔意を持ってその出来事を口にする場合は、《ショアー》の方が良い。
それでもホロコーストという言葉が使われているのは、こちらが広く知られている単語だからだ。
「ショアーならピンと来なくても、ホロコーストならピンと来る」
そういう人に向けて、あえてその言葉を使う人たちがいる、ということを最初に知っておいてほしい。
以下、秋乃の考える長短を連ねる。
主観100%なので、それをご承知願いたい。
【受け手】
長)
ホロコースト映画や小説を通して、歴史背景に興味を持つことができる。
その史実は今の世界情勢と地続きであり、中東やヨーロッパのニュースに対して、一段深い考察をすることが可能になる。
短)
史実をホラーやサスペンスの類いと一緒くたにして、実際に経験した人や犠牲者への慎みが軽くなる。
人の苦しみを自分の好奇心のために消費している、という事実を受け止めなければならない。
【作り手】
長)
制作にあたり多くの資料を見聞きすることで、受け手のままでは分からなかったであろう、もう一段階深い考察が可能になる。
また、史実からどの部分を取捨選択し、どう再構築して読者に見せるか、という視点から、自分の経験や知識、トラウマを見つめ直す機会になる。
短)
犠牲者一人ひとりの傷を暴き、塩を塗り、軽はずみにナチスを弾劾し、それらの悪行ひっくるめて自分の承認欲求を満たす種にする。
まぁ控えめに言って極悪非道。
以上。
そういう四種類の長短を、たった一時間半で表現した映画に出会ったので、ここに紹介しておきたい。
関心領域
ググったら直ぐに出てくる。
予告PVを観るだけでも恐ろしい。
解説動画も上がっているので、そちらを見てもいい。
ただこの作品は、ある程度ホロコーストに関する知識がないと、美しい情景の本当の恐ろしさに気づくことはできない。
のどかな生活の描写が続くばかりで、退屈になるかもしれない。
そういう訳で、エンタメ度や知識度も鑑み、初級・中級として薦められる映画も一緒に挙げておく。
【初級】
シンドラーのリスト
縞模様のパジャマの少年
ライフ・イズ・ビューティフル
【中級】
否定と肯定
顔のないヒトラーたち
上記の他にも多くの作品があるし、小説やドキュメンタリーも多岐に渡る。
重ねて言うが、ここに記したことはすべて秋乃の主観であり、文責も私にある。
その上で、表題に戻る。
私は敬意を捧げたい。
ホロコースト映画や小説、類する創作物、その受け手と作り手すべての人々に。
表現することの功罪に向き合い、それを受け取り、何千年と変わらない人間の本質、その浅ましさと尊さに気づいた人々の勇気を讃えたい。
このエッセイは、いち創作者としての敬意の表明だ。