表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小雨のウエディングマーチ

作者: 企画開発部

 私の好きな人は、少し変わっている。いつも、窓の外を眺めてボーッとしている事が多くて覇気がない。どこか虚ろげで、やる気のない彼に私から告白したことによって付き合い始めた。彼は絶対に恋愛は面倒とか、つまんないからと言って断ると思っていたのに、あっさりとOKを出されたのにはビックリしてしまった。

 付き合ってみると、表情はあまり変わらないわりに大切にされているほうだと思う。決して邪険に扱われているわけではないが、本当に愛されているのか、ときどき不安になる事がある。


 ある日、好きな人とショッピングモールに買い物に出かけた。専門店を歩いているとピアノがおいてあるコーナーにやってきた。

「わー懐かしい!小学生の時ぶりかも」

 電子ピアノにはしゃぐ私の隣で彼はいきなり曲を奏で始めた。その曲は、おそらく誰もが知っている曲だとは思う。

ジャジャジャジャーン♪

「なんで?」

 だけれど、何故その曲を弾いたのだろうか。

「僕はコレしか弾けないんだよね」

「うん。それにしてもなんで、これ?」

 それは、結婚式の入場曲だった。

「僕、小さい頃にピアノ教室に通ってたんだけど、全然上手くならなくて、それで唯一覚えたやつがコレなんだよね」

「ピアノ教室に通ってたんだ。通りで指が長いわけだ」

 彼の細くて真っ白い指が曲を奏でると、ショッピングモールに来た人達が、こちらを見ながら通り過ぎていく。

「僕の幼馴染が結婚した時に弾いたきり、それ以降で使うところ一回もないんだよね」

「そりゃそう」

 だって本人が結婚する時には使えないし、あまり男子が男子に贈るのでもないと思う。

 けれど、幼馴染の結婚式の話をした彼が、いままでに見たこともないような笑顔を見せるから、私は彼がいままで1番誰を好きだったのかを理解してしまった。

 これから彼と一緒にいる事で、彼の記憶の中に私という存在もその大切な思い出の隣にくらいに位置づけてくれたらいいなと願った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ