表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/109

海の子ゼールは、ぷよひょろについて行くぞ!

 

・ ・ ・ ・ ・



「……と、言うことでね。ガーティンロー市職員として、僕はここで仕事をすることにします」



 三人とも石積み小屋の外に出た上で、ベッカはブランとゼールにそう宣言した。



「ベッカさん。ここは東部なんだから、別にそういうのしなくっても……」


「在外公館業務だよ、ブラン君。異郷で災難にあっている邦人を、市職員がほっとくわけには行かないでしょう」


「そういうもんなんですかー?」


「そういうものなのッ。それでゼール君、何だかややこしいことになってきたし、君はもうオーランにお帰り。僕らが帰る時は、ギーオさんに送ってもらうから」



 さとすように言ったベッカに向かい、ゼールは口をとがらせて反論する。



「えー、別に平気だよ! 番頭さんたちが親に行き先言ってるはずだし。俺、ギーオさんとこに何度も泊ってるもん」


「親御さんが心配するよ。帰りなさいって」


「それ言うなら、ブランは何なのさ。俺とひとつしか、歳も変わんないのに」


「ブラン君は、ちゃんと保護者の了解を得て、僕の護衛役やっているからいいの。でも君は普通のお宅の子なわけだしね、危険な目にでも遭わせちゃったら、僕はもう本当に責任がとれないんだよ」



 怒った風でもないが、少年はがしりとした肩をすくめて、ゆずらない姿勢である。



「けど、うちのお母さんよく言うよ。騎士の子たるもの、弱者が困ってるなら素通りしちゃいけませんって」


「……は?」


「俺、生まれはテルポシエ貴族なんだ」



 ベッカとブランは、ぷよ・ひょろろんと双眸をまるく開ける。



「包囲が始まった時に、お母さんとオーランに疎開したんだ。ほんとのお父さんは騎士だったから、陥落戦の時に戦死しちゃった。その後にお母さんが今のお父さん、ひもの屋のツルメーさんと再婚したんだよ」


「そ……そうだったのかい!」



 日にけた肌に金髪、聡明そうな蒼い瞳。ゼールの“海の子”風貌はテルポシエ旧貴族の典型像とはかけ離れているから、そうと言われなければ絶対にわからない。



「それにうちのお母さん、なんでか東部のものが大好きなんだ。ギーオさんの織り布窓口やってるのも、東部の人たちと繋がってたいって思うから。俺が東部で人助けしたって言ったら喜ぶよ、しないで帰ったらむしろがっかりするよ」


「そういうものなの……?」


「そういうものなの。大丈夫、だいじょうぶ」



 貴族的素養におたなもの的な回転のよさ。口のたつ子である。



「耳もいいし、ついでに精霊もみえる・・・方だから、絶対連れて行ったほうがお得だよ」


「!!」



 ふふっと笑いを含みながら、最後の一押しをしてくる。ベッカはぷよんと全身を弾ませ、口を四角く開けた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ