表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/109

亡き女性の謎のメッセージ

 

「蛇が、島へ、もどった……」



 ベッカのつぶやき声が、沈黙の中に妙な存在感を持って浮かび漂う。



「……何を言いたいんだろう?」


「さっぱりわからないね。うちの妹のなぞなぞ言葉遊びっぽいけど……、おち・・がないよ」


「そもそもわし、字は読めんの」



 周囲の若いのも、しわしわなのも、みな首を傾げた。



「僕にも、全然わかりません。こりゃあガーティンローに持ち帰って、キヤルカさん達にもう一度確認したほうがいいかな……。おじいさん、この玉のほうは? これも東部特有のお細工か何かでしょうか?」


「あ、それは、よくあるとんぼ玉よ」



 後ろでなりゆきを見ていたおばさんが、口を出してきた。



「昔の東部では、どこでも手に入った飾りものね。それはじるしが入っているから、お守りだったんでしょう。悪い精霊や悪運から守ってもらえるようにって、女の子はよく身に着けていたものよ」



 ふうん、とブランはうなづいた。確かに、卵の黄身みたいな玉の表面、ぽちんと小さく黒い二重丸が入って、目だまのように見えている。



「てがらもとんぼ玉も、レグリさんが小さかった頃から、大事に持ってたものなんだろうな」



――そんな大切な思い出の品を、正イリー語でよごしてまで、誰かに伝え残したかったことなのだろうか? “蛇が島へ戻った”というのは……。



 布地図を開き、その“ネメズの集落”の所在地を老人に示してもらった。このさき東へ行った沿岸地域、小島の群が囲む対岸である。ルーハに言われてつけたしるしが、もうついていた。


 元職人のじいさんは、さすがに器用にくるくるくるりとてがらを巻き直す。それでは、と老人が磯織り各種を見せる気満々で、棚に向かった時である。



「あっ。ギーオさんたちが、帰って来た!」



 ひょいとゼールが言った。



「何だか、ばたばたした様子でこっちに来るみたいだよ……変だなあ?」



 そのまま家の外に出てしまった。あとに続いて出てみると、ほんとだ、ずいぶん向こうの方から小走りにこちらにやって来る、おじさんたちの姿がある。



「……よくわかったね? 叫び声でも聞こえたのかい。僕には、まるでわからなかったけど」


「あ、俺、耳がけっこう良いんだ」



 問いかけたベッカに、ゼールは何でもないように言った。



「だから、風の声も聞こえるし」


「……は??」



 風の? 風のおとじゃないのかい、とベッカは思いかけるが、ぐんぐん近づいて来るおじさんたちの顔が何やら緊急事態のきびしさを帯びているのを見てとって、そちらに注意を向けた。


 そう、今はこの二つを比べている時じゃあないのだ。声と音、声音こわねを。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ