12-9
「……大河!」
一瞬遅れて、犬飼は鮫島を追いかけようとする。……が、カラオケ代を払っていないことに気づき、財布を開いてモタついた。
「これ!大河の分も合わせて!お釣りは良いから!」
犬飼は財布から5000円札を取り出し、テーブルに置く。そして大慌てで鮫島を追いかけた。……多分、間に合わないと思うが。
「……多過ぎるんだけど」
直樹がまたもや呟く。
「まあ、これで色々あの人に吐き出させることは出来たし。収穫はあったかな」
……そうだ。鮫島は何かを片付けると言っていた。近いうちに何かが起こるかもしれない。
「僕は鮫島先輩が何をしようとしているのか、調べてみるよ。神凪先輩も何か分かったら教えてね。……それじゃ、仕事に戻るから」
俺の返事を待たず、直樹は部屋から出て行く。
……一人になった部屋で、俺はあることを思い出していた。
恐らく有翔を狙っている犯人は、部員であること。そいつはきっと《ノート》を狙っているということ。
そして、《ノート》を使って人間関係の修復をしたいと思っているということだ。
だったらその《ノート》を使わなくてもいいように、俺が部員の悩みを解決してしまえばいい。
そうすれば犯人だって有翔を殺さずに済むだろうから。
……と、考えたところで俺は《あること》に気づく。
「……マジか」
自分でも予想外過ぎて、思わず声に出してしまった。直樹が出て行った後で助かった。
「絆されてるのか、俺は。アイツらに」
どうやらそういうことらしい。
俺は犯人をとっ捕まえて会長のところに突き出す方法よりも、犯人に有翔殺しを止めさせる方法を考えた。
まあつまり、俺は部員を仲間だと思っており、なるべく誰も傷つかない方法を無意識のうちに考えていたらしいと。
「……はあ」
口に出して、その意味を理解し、溜息をつく。
ひょっとしたら、俺は記憶を失う前は仲間想いな性格だったのかもしれないなんて思いながら。
第十三話に続く……




