12-8
「は?」
「ふえ!?」
「ハァァ!?」
突然のことに状況が飲み込めない俺達3人はそれぞれ声を上げる。
直樹は得意げに笑って言った。
「零士先輩。もう僕にしといたら?僕の家、その人と違って裕福だし苦労はさせないよ?」
「えっえっ将吾ちゃん!?」
「というか、僕なら零士先輩に毎日好きだって愛を囁いてあげるけど?」
まさか直樹がここで想いを告げるとは。
このまま犬飼のことを奪ってしまうつもりだろうか。チラリと鮫島を横目で見ると急に立ち上がり……
「……っ!!」
勢いに任せて犬飼を自分の方へと抱き寄せた。
「あれ?どうしたの鮫島先輩?アンタは零士先輩のこと嫌いなんだから別に僕が零士先輩と付き合おうが関係無いよね?」
「………………」
どうやらこの先どうするかは考えていなかったらしい。チョロいというか単細胞というか。
「た、大河……?」
犬飼の声でようやく正気に戻ったらしく、顔を真っ赤に染める鮫島。だけどそれでも抱き寄せた腕は離そうとしなかった。……俺は一体何を見せられているんだ。
「……なあ、零士」
「ふぁいっ!?」
そして唐突に名前を呼ばれ、思わず変な声を上げる犬飼。
「な、何だよ……」
「悪い。今は何も言えねえ。もう少しだけ待っててくんねえか」
「待つ……?」
「もうすぐ全て片付く。……いや、片付ける。そしたら、前みたいに戻れるから」
「……!ほんとか!?」
「……ああ」
そして鮫島は犬飼から離れる。コイツは犬飼だけに伝えたつもりだったようだが、近くにいた俺にはバッチリ聞こえていた。恐らく、直樹にも。
「……ねえ、アンタ。片付けるって何を……」
「うるせえ。テメェには渡さねえからな」
最後に直樹を思いっきり威嚇し、テーブルに1000円札を叩きつけて鮫島は出て行った。
「……カラオケ代のつもり?足りないんだけど……」
叩きつけられた1000円札を見つめ、直樹はボソリと呟くのであった。




