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よく見れば割れた植木鉢も、血溜まりも無い。
……嘘だろ。あんなにリアルだったんだ。あれが夢な訳が無い。
「……どしたの?喧嘩?」
楪は足を止め、キョトンとした顔でこちらを見つめてきた。
すると────
ガシャン!!
─────楪の目の前に植木鉢が落ちて来た。
「わ、わわっ!なにこれ!」
楪は驚いて尻もちをつき、手に持っていた缶ジュースが転がっていってしまう。
「あー!ジュースが!待ってー!」
「楪!!」
缶ジュースを追いかけようとする楪の肩を掴んで制止する。そんなことより聞きたいことが山程あった。
「お、お前……何で生きてるんだよ!?」
「ふえ!?ど、どうしたのサキ?怖いよ!?」
楪は怯えていたがそんなことは今どうでもいい。こいつはさっき植木鉢が直撃して死んだ。なのに生き返っている。
それどころか先程の植木鉢はもう一度降ってきて、今度は当たらなかった。死んだ時とは違い、足を止めたからだろうか。
……こんなのまるで、楪が死ぬ前に時が戻って、やり直しをしたみたいじゃないか。
「まあまあ!落ち着こうじゃないか、神凪くん」
「落ち着ける訳ないだろ!だってこいつは死んだんだぞ!?」
「きっと嫌な夢でも見たんだろうね。だって目の前にいる有翔は、ちゃんと生きてるじゃないか」
……夢?あんなリアルな夢があってたまるか。
楪が死ぬ前に時間を巻き戻した……?いや、それこそ現実的じゃない……!
「お前、いったい何をしたんだよ……!」
「い、痛いよ、サキ……!」
「………ぁ、」
俺は知らない間に物凄い力で彼女の肩を掴んでしまっていたらしい。
「わ、悪い……そんなつもりじゃ」
……その瞬間、俺の背中に衝撃が走った。