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お嬢に信じ難い話を聞かされた後、俺はまた壁をぐるりと回されて元の通路に戻って来た。
だが、そこには有翔と会長は居なかった。恐らく俺が居なくなったことに気づき、2人して俺を探してくれているのだろう。
「わたしと会ったことは誰にも言わないで。わたしの存在は、隠しておかなければならないの。絶対、誰にも話しちゃだめ」
……お嬢と別れる前にそう告げられたが、ここは会長の家な訳で。会長はお嬢の存在を知っているのだろうか。
誰にも言うなということは、会長にすらも言うなということだろうが。
「……だったとしたら、何なんだあの女は」
ご丁寧に忍者屋敷のような隠し扉まで作って。
そこまで存在を隠したい子なのだろうか。
「まさか会長の隠し子?」
いや、無いな。自分で言って笑いが込み上げて来る。
だいたい隠し子だとしたら年齢差がおかしいじゃないか。せいぜいあるとすれば、会長の父親の隠し子とかだろうか。
「あーっ!見つけた!」
急に背後から声をかけられ、驚いて飛び上がりそうになる。
声の主は有翔だった。
「良かった。探したよ」
続いて会長も現れる。2人は汗をかいていて、どうやら相当俺のことを探してくれていたことが分かった。
「もーっ!どこ行ってたの!?」
……やっぱり聞かれるよな。しかし、お嬢からは自分のことは言うなと言われた。
さて、どうやって誤魔化すべきかと思ったが、ここで長考すれば余計に怪しまれそうな気もする。
「御手洗でも探していたのかな?」
「あ……まあ」
「ふーん、そうだったんだあ。でもトイレに行くならちゃんと一言言ってよね!心配しちゃうでしょ?」
「う。わ、悪い……」
会長に助け舟を出され、思わずそれに乗っかってしまったが……この人やっぱり俺が何処に行って何してたか、気づいてるんじゃないか。
しかし意外にも会長はこのことについて全くと言っていい程触れなかった。
何事も無かったかのように玄関に案内され、逆に罪悪感を覚える。……別に俺が悪いことをした訳でもないのに。
「わ……!雨、止んじゃってる……!」
「おや、本当だねえ」
外に出ると、先程まで嵐のような天気だったのが嘘のように、晴れていた。
「あ、晴れたんなら俺は歩いて帰ります。有翔の方を送ってやってください」
「え、でも……!」
「大丈夫だ。ちょっと歩きたい気分なんだよ」
「……そうかい?まあ晴れているから、もう大丈夫そうだね」
それに、考えたいこともある。車の中よりも一人で歩いた方が考えが纏まりそうだった。
俺は会長に礼をし、その場を後にした。




