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「!?ど、どうして!?」
会長の突然の提案……いや決定事項に有翔は当然食ってかかる。俺なんかは突然のことで話にすらついていけない。
「それは彼の個人的な事情だから。他人の神凪くんには勿論、家族である有翔にも話すことは出来ない」
有翔は言葉に詰まる。確かに家族だからこそ話せないようなことはあるとは思うが、あの源氏が?あの全身で姉が大好きだとアプローチしている源氏が?有翔にも話せないことがあるって?
「じ、じゃあせめて!ひかちゃんには会えないの!?」
有翔はそれでも食い下がる。当然だ。無事を自分の目で確かめたいだろう。
しかし、会長は首を横に振った。
「それも出来れば避けたい。今彼の心は本当に不安定なんだ。だけど有翔、君は決して悪くない。だからこそ私を信じて彼のことを任せて欲しい」
「………………」
有翔は辛うじて頷くことは出来たが、声も出せないくらいショックを受けたのだろう。
「ごめんね。でも絶対に悪いようにはしない」
「……うん。ハルくんのことは、信じてるよ」
そう言った有翔の声は、喉から絞り出したかのような小さな声だった。
「……こんな雨の中、呼び出して悪かったね。でも電話で済ませたい話では無かったから」
「なあ、会長。これだけ聞かせてくれ」
「……?何だい?」
本来部外者の俺が口を挟むべき問題では無いかもしれない。
でも、今の有翔の様子を見ていると、どうしてもこれだけは聞いておきたかった。そして、少しでも有翔を安心させたかったのだ。
「源氏には何か悩みがあるけど、それでも有翔のことは変わらず好きなんだよな?」
「うん。それは間違いない。彼はずっと有翔のことは大好きだよ」
「……ハルくん、ほんと?」
「ああ、本当さ」
それを聞いて、先程まで暗かった有翔の表情が少しだけ明るくなった。まあ、好きだからこそ言えない悩みなんてのもあるかもしれないしな。
これで全て解決した訳では無いが、少しでも有翔の心を軽くさせられたのなら良しとしよう。
「……さて。話はこれでおしまいさ。帰りも送っていくよ」
頼りっぱなしになるのは申し訳無いが外は酷い天気だ。お言葉に甘えることにする。
「でもアンタの家広くて迷うんですよね」
「何かちょっと分かるかも。外に出たいだけなのに玄関も見つけられないもん」
「あはは。それなら外まで私がついていってあげよう」
会長の後に続き、俺と有翔は玄関へと向かう。
───────その時だった。
「!?!?」
何者かに腕を引っ張られ、世界がぐるんと回る。
これは、アレだ。例えるなら忍者屋敷のくるっと回る壁。それに巻き込まれて俺は壁の向こう側に連れて行かれた。
突然のことで抵抗することも声を出すことも出来ず、俺はされるがままになってしまった。
一番後ろを歩いていた為、会長も有翔も俺が居なくなったことに気づかなかったのだろう。
まあすぐに気づくかもしれないが、俺が壁の向こう側に連れて行かれたのは一瞬の出来事で、2人に止める術は無かった。
「……おや、神凪くんは何処に消えたのかな」
「ほ、ほんとだ!サキが消えちゃった……!」
振り返った2人が俺の消失に気づいたのは、俺が攫われてからほんの数秒後の出来事だったらしい……。




