10-9
「振舞ってる……?それは、有翔が馴染みやすいようにわざとやってるとか……」
俺の答えに直樹はバンッと壁を叩く。どうやら相当頭に血が上っているらしい。これは黙って話を聞いた方が良さそうだ。
「そんなんじゃない!あれはわざととかじゃなく、本気で皆そう思ってる!楪先輩はここで生まれ、ここで育ったんだって!もう転校生だってこと覚えてる人なんていない!元々零士先輩のクラスに転校してきたらしくて、零士先輩からあの人の話を聞いてたんだけど……今はもう零士先輩ですら忘れちゃってる!」
それを聞くと、確かに異常だと思う。
だけどそんなノートがあるなんて、やはり信じられな──────
「……待て」
「な、何?どうしちゃったの?」
自分でも驚く程低く、冷静な声が出た。
それは直樹すらも驚かせてしまったようだ。
「なあ、この都市伝説……他には知ってる奴はいるのか?」
「え……?分かんないけど……知ってる人は知ってるんじゃない?事実、僕は零士先輩から聞いた訳だし……」
……解ったかもしれない。
有翔の命が、狙われる動機。
まさかこんな夢物語みたいな話で……とは思いたくないけれど。
ノートの存在が嘘であれ本当であれ、その都市伝説を本気で信じる奴がいたとしたら。
そのノートにすら縋りたい程の願いがある奴がいたとしたら。
「……大河の為なら、俺は何でもするつもりだけど」
「ただ憧れているだけで、本気で目指している訳じゃ……」
「そのノートがあれば、零士先輩と鮫島先輩の仲も元に戻せるのかな……って」
「れーちゃんが……何か巻き込まれてるんじゃねえかって……」
「我はどうやら過去の記憶が一部、抜け落ちているらしいのだよ」
部員の言葉が、今になって俺の頭をよぎる。
確かにコイツらには、全員人間関係の願い事があるじゃないか。
コイツらの誰かが都市伝説を本気で信じていて、自分の願いを叶える為に、ノートを奪う為に有翔を殺していたとしたら……?




