10-7
「してないけど!恋とか!」
いや今更そんな風に否定されても。あの顔はどう見たって恋してる顔だっただろ。
「第一男同士だし!気持ち悪いとか思わないワケ!?」
「いや、その辺の偏見は無い」
自分だって有翔に……いや、俺がアイツに抱いている感情は恋とかそんなんじゃない……筈だ。
「……まあとにかく俺はそういうのに偏見は無いから。洗いざらい吐いてしまえ」
「何それ。僕取り調べでも受けてる訳?」
確かに雰囲気はそれっぽいな。思わず吹き出しそうになってしまう。
「うう……好きだよ。悪い?……だからこそムカつくじゃん。僕だったら零士先輩を突き放したりしないのに。ずっと側にいてあげるのに」
「でも犬飼が求めてるのはお前じゃなく鮫島なんだよな」
「うっ……言ってくれるね」
それが事実だ。だからこそ余計に直樹は歯痒いのであろうことが容易に想像出来る。
「……分かってるよ。僕じゃどうにもしてあげられない。でも……」
そこで直樹は不自然に言葉を切った。
「でも、何だよ?」
俺は敢えて追撃してみる。直樹がこういう区切り方をする時は、聞いて欲しい時だ。先程学んだじゃないか。
「今から、信じられないかもしれない話をするけど。話半分に聞いてくれる?」
「……?おう」
何だその意味深な誘い文句は。
信じられない話?……聞いてやろうじゃないか。
俺の反応を確認した後、直樹は話し始めた。
「……人を操れるノートがあったら、信じる?」
「人を操れるノート?」
神妙そうな表情の直樹の口から飛び出したのは、その表情に似つかわしくない夢物語のような話だった。
「あるかどうかは別として、人の行動を操れるなんて興味はあるな」
「なんか……そういうノートがあるらしいよ」
「……はあ?」
人の死を操れるノート……みたいな話は漫画で読んだことがあるが、それと似たような感じだろうか。
それが現実に存在する?そんな馬鹿な話があってたまるか。
「……都市伝説なんだけどね。そのノートにはこの世界の全ての人間の名前と情報が載ってて、そのノートの情報を改竄すると、その人のことを操れるらしいよ」
つまりそのノートでこの世界の人間は管理されていて、その情報を書き換えられると書き換えられた人物の設定まで変わってしまう……ということか?
そんな恐ろしくて禁忌みたいなノートが現実に存在するのか?……有り得ないだろう?
「……そんなノートがあったとして、お前はどうするつもりなんだよ」
「………………」
直樹は答えない。
まさかコイツ、犬飼の情報を書き換える……なんて言うつもりじゃないよな……?




